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雑誌目次

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理学療法ジャーナル45巻3号

2011年03月発行

雑誌目次

特集 脳卒中片麻痺患者の装具と運動療法

EOI(essences of the issue)

ページ範囲:P.191 - P.191

 近年,装具の世界に変化が起きている.新しい素材や構造,あるいは油圧ダンパーによる制動システムなどの開発がみられ,それらを積極的に運動療法に活かすことによって,これまでとは違った効果がみられるようになっている.その歴史的背景はわが国の理学療法士の装具への理解と取り組みに相当の影響を与えてきたが,今,変革の時代を迎えている.本特集では最近の装具のシステムを紹介し,それらを運動療法や日常生活動作にどのように活かすのか,具体的にまとめた.

脳卒中片麻痺に用いる装具の特徴と運動療法実施上の注意点―義肢装具士から見たポイント

著者: 山本康一郎

ページ範囲:P.193 - P.199

はじめに

 脳卒中片麻痺に用いられる装具は他の装具に比べ,その選定や調整が難しい.それは片麻痺における装具の性能は,治療する理学療法士にしか引き出せないものであり,装着しただけで固定や免荷,矯正の機能を発揮する他の装具と大きく異なるからである.それだけに,処方する理学療法士の治療方針と義肢装具士の設計が一致しなければ,外観は適合していても機能的には不適合となりうる.そのため,治療方針と装具設計をすり合わせる作業が非常に重要となる.義肢装具士は理学療法士の治療方針を汲み取り,それに合わせた材料や工法,継手などの提示を行わなければならない.装具に対する機能の要求事項の明確な提示が,より良い装具設計には必要である.

 脳卒中片麻痺における治療用装具に必要な機能は,床反力を装具でアライメントを調えた状態で身体に入力させ,抗重力や歩行を効率的に再学習させることができることである.

 短下肢装具の継手だけでも種類が15種類以上存在し,使用材料やプラスチックのトリミングライン等の違いを含めると50種類を超える1,2).本稿では装具や継手の種類や機能の解説ではなく,運動療法に必要な装具の機能の解説に焦点を絞った.

脳卒中片麻痺の積極的装具療法の進め方

著者: 髙木治雄

ページ範囲:P.201 - P.208

はじめに

 長下肢装具は麻痺側下肢で身体を支持することができない時に処方され,立位や歩行を補助するものとして重要である.一方,正常な歩行パターンを獲得できない,重い,膝ロックが難しい,着脱の困難さから実用的でないという理由や身体機能の回復を阻害するという判断で処方されないことや,リハビリテーション後に残存した機能障害の代償・補助を目的とした最終手段として用いられることも多かった1~2)

 近年,早期に集中したリハビリテーションが患者の回復に重要であることは周知されており,重度の脳卒中片麻痺者に長下肢装具を使用し,早期から立位,歩行練習を行うことは脳卒中ガイドライン2009でも推奨されている3).しかしその適応,使用方法など,統一・体系化された装具療法は存在しておらず,麻痺肢を含めた機能改善を目的とした報告はあまり見られない.

 近年は装具の進歩により,機能の改善を目的とした本来の治療用装具としての装具の活用が可能となってきている.油圧制動足継手付き底屈制動(Gait Solution:以下,GS)長下肢装具を使用した歩行練習の実施が,健常歩行相に近似する下肢の筋活動を誘発することも報告されている4).このように,麻痺側機能の改善を目的とし,歩行補助具としての視点だけでなく運動療法の道具としての視点も重要である.

 今回は,脳卒中リハビリテーションの現状における問題点と当院で実施している装具を用いた重度脳卒中片麻痺者に対する理学療法アプローチについて報告する.

長下肢装具による脳卒中片麻痺の運動療法の取り組み

著者: 河津弘二 ,   槌田義美 ,   田中智香 ,   山鹿眞紀夫 ,   古閑博明

ページ範囲:P.209 - P.216

はじめに

 脳卒中片麻痺の理学療法において,長下肢装具(以下,KAFO)を活用した装具療法は,臨床場面でどのような「役割」ができるのだろうか?

 「脳卒中ガイドライン2009」の歩行障害に対するリハビリテーション(以下,リハ)では,下肢練習量を多くすることや,装具を用いることが歩行改善のために推奨されているが1),早期からの具体的な使用方法が示されているわけではない.特にKAFOは,何の目的で,どのように活用していくのかは状況に応じた検討が必要である.

 重症片麻痺患者に対し早期からの理学療法でKAFOを活用することは,適切な身体のアライメント調整を行い,安定性を補償したうえで下肢練習量を増やすことや重力位への介入が行いやすくなることを臨床的に経験する.病棟の生活動作においてKAFOを活用することは難しく実用的でないが,裸足での移乗や移動動作では不安定な場合もあり,短下肢装具の使用が実用的である.理学療法士(以下,PT)は歩行改善と同時に,病棟での移乗や移動動作の改善を視野に入れた装具の工夫を考える必要がある.

 筆者らの回復期リハ病棟では,重症片麻痺患者に対し,簡単にKAFOと両側金属支柱付短下肢装具(以下,支柱付AFO)とに切り替えることが可能である大腿部脱着式KAFO(以下,脱着式KAFO)を作製し,運動や生活・活動場面に応じて使い分けを行う早期からの装具療法を導入している.歩行獲得をゴールにできない患者でも,脱着式KAFOを目的に応じて使い分けることで,介助量の軽減や日常生活動作(ADL)の向上が図れると考えている.

 今回,脱着式KAFOによる脳卒中片麻痺の運動療法の取り組みを,これまでの活用経験と当院のデータを交えて紹介する.

Gait Solution付短下肢装具による脳卒中片麻痺の運動療法とその効果

著者: 大畑光司

ページ範囲:P.217 - P.224

はじめに

 脳損傷後片麻痺患者における歩行機能の改善は,リハビリテーションの重要な目標のひとつである.しかし,歩行機能をどの側面から捉えるかにより,改善すべき内容は異なってくる.例えば,脳卒中後の片麻痺患者の歩行は,歩行速度低下を始めとして,歩行の耐久性の低下,安定性の欠如などの様々な問題があり,その背景には非対称な歩行様式1,2)やそれに伴う歩行のエネルギーコストの増加が存在する3,4).また,これらの歩行の諸問題には,筋力低下5),筋の硬さ(stiffness)の増加6)および過剰な同時収縮7)など,多くの問題が関連するとされる.したがって,どの運動障害の構成要素に重点を置くかによって,トレーニングの内容は大きく変化することになる.本稿では,まず,歩行の力学的なパラダイムである「倒立振子モデル」について再考し,脳損傷後片麻痺患者の歩行の問題点とこの「倒立振子」の関係について議論する.次にGait Solutionを使うことによって得られる利点についてのわれわれの研究を紹介し,Gait SolutionがしていることとGait Solutionを効果的に用いるためのトレーニングの考え方についての考察を行う.また,これに加えて,脳卒中片麻痺患者で認められる「遊脚振子」の問題とその原因についての仮説を提示する.

TAPSによる脳卒中片麻痺の装具療法とその効果

著者: 横田元実 ,   金田嘉清 ,   才藤栄一

ページ範囲:P.225 - P.231

はじめに

 脳卒中片麻痺をはじめとする麻痺性疾患における下肢装具の目的は,下肢装具を用いて運動の自由度を残存機能でコントロール可能な程度に調整し,運動を単純化することにある1)

 ヒトの下肢は一側7自由度(股関節3+膝関節1+足部3)あり,この大きな自由度を優れた神経系が制御することによって随意性の高い,効率のよい運動が可能となっている.しかし,随意性が低くなった麻痺肢では,高い自由度のコントロールが困難となり,動作不安定や運動困難という問題を呈する.そこで,装具を用いて麻痺肢の自由度を制約し運動を単純化することで,効率やレパートリーの多様性をある程度犠牲にしても安全で再現性の高い運動を可能にする必要がある2)

とびら

楠木正成と福澤諭吉

著者: 大工谷新一

ページ範囲:P.189 - P.189

 「別の先生にみてもらいたい」

 臨床に出て間もないころ,19歳ぐらいのスポーツ外傷の患者さんに言われた.

あんてな

認定理学療法士とは

著者: 長澤弘

ページ範囲:P.233 - P.235

新制度としての専門理学療法士制度

 社団法人日本理学療法士協会(以下,協会)の会員数は,2010年8月7日の段階で65,343名と報告されている.また,2010年度理学療法士国家試験合格者は9,112名であり,92.6%の合格率であった.このように,ここ数年は年間およそ1万人程度の会員数増加が見込まれている.この現状の中で,理学療法を必要とする国民に対して良質な理学療法の提供を担保するために,臨床能力を高めていくことはもちろん,理学療法の学問的発展に寄与する研究能力をも拡充していくことが重要課題になっている.協会では,より高度な理学療法の専門性を志向し,「ピュアサイエンス(純粋科学)としての理学療法学の確立と職能に資する実践理学療法学の推進」という学術局の基本理念のもとに,2007年までの旧制度を見直し,新しい専門理学療法士制度を完成するべく積極的な取り組みを展開している.

1ページ講座 理学療法関連用語~正しい意味がわかりますか?

制約療法

著者: 斎藤和夫

ページ範囲:P.237 - P.237

 制約療法とは,constraint-induced movement therapyであり,本邦ではCI療法,抑制療法と訳される場合が多い.制約療法は,非麻痺側の上肢をミトンや三角巾を被せる,お尻の下に手を敷くなどの方法で抑制することで麻痺側上肢を強制的に使用し,上肢機能の改善を得ようとする治療法である.その際重要なことは,難易度を調整した段階的な課題(練習課題)を短期集中的に実施することである.脳卒中片麻痺の麻痺側上肢への制約療法は,20年以上前から数多くのrandomized controlled trial(RCT)により,特に慢性期の片麻痺上肢に対する効果が実証され,脳卒中治療ガイドライン(2009年)においても高いエビデンス(Ⅰb)として推奨されている1).制約療法には,麻痺した手で今まで通りの動作を行おうとしても上手く行えず,それが続くことでその手を使わなくなってしまう学習性不使用(learned non use)の悪循環を断ち切る目的がある.さらに非麻痺側を抑制することは非麻痺側から健側脳への入力を減少させ,損傷脳の可塑性を促進すると考えられる.これは単に麻痺手の使用を促すだけではなく,脳卒中により傷害された脳のネットワークが再構築される「使用依存性脳機能再構築」によると考えられ,治療前後での大脳皮質マップの変化が証明されてきている2).制約療法の適応基準は,一般的に手関節の随意的伸展が20°以上可能であること,手指の3指のMP関節およびPIP関節が10°以上伸展可能なこととされ,脳卒中片麻痺患者の1/4程度が適応となると言われている.実施時間としては,1日あたり6時間の麻痺側上肢のリハビリテーションプログラムを2週間行う方法が標準的であるが,1日あたり2時間の実施や外来リハビリテーションでの効果も報告され,症例に応じた量を設定することが必要である3)

 制約療法では,様々な難易度を調整した動作を行い,関節運動にこだわりすぎず,課題自体の達成感を重視した課題指向的トレーニング(task oriented training)を行うことが最も重要である.課題の例として,佐野ら2)が両手動作を加えた60項目をシェイピング項目として紹介している.シェイピングとは,少しずつ目標を上げながら最終目標=標的動作を達成することをいい,課題としては獲得するべき具体的な標的動作を設定し,その動作を達成するために難易度に応じた数段階のステップを設定していくことが必要である.さらに標的動作の設定は,学習者である患者の機能障害に応じて設定する必要がある.

義肢装具

TSB下腿義足

著者: 原和彦

ページ範囲:P.258 - P.258

 膝蓋腱荷重(PTB)式といった圧の差別化に代わって圧の均等化を提唱した全表面荷重式(total surface bearing:TSB)下腿義足は,1990年以降にわが国に導入されて近年普及化が進んでいる.またTSBは元来,ソケットがシリコン素材などに限定されるものではなく,断端表面に密着して断端全体で体重を受けるといった適合概念を持つものである.TSBの膝蓋腱レベルの水平断面形状は,PTBのように膝窩部後方からのカウンターフォースを意識しない形状を持つ(図).このため,後壁がPTBに比べて1~2cm低く製作されていて,100°程度までの膝屈曲が可能となり,ADL上の装着性が向上している.

 1986年にKristinsson(オズール社)の提唱したIceross(Icelandic roll-on silicone socket)はシリコン素材を採用した内ソケットを有し,シリコン素材が骨張った断端組織に対して形状を変えて荷重圧の均等化を行うTSBの適合概念を満たしていた.①ライナー内面との剪断力を吸収して断端の皮膚のトラブルを防ぐ,②内ソケットのシリコンライナーと,熱硬化性樹脂製の外ソケットを接合するシャトル・ロックやキャッチピンを有することで高い義足懸垂性を有するなどの高い利点を持つ適合法として紹介されたことから,現在のTSBソケットには通常シリコン素材のライナーが好んで用いられている.

理学療法臨床のコツ・15

住宅改修アドバイスのコツ―居室と寝室

著者: 田村茂

ページ範囲:P.238 - P.239

はじめに

 筆者はこれまで対象者の家庭復帰に向け,運動療法と同じくリハビリテーションの手段のひとつとして住宅改修に関わってきた.介護保険制度がスタートした頃からその機会はより増えたが,関わる相手によってアドバイスの緻密さや内容を大なり小なり変える必要がある.例えばケアマネジャーに,建築士に,住宅改修施工業者,大工そして家族にと,アドバイスする相手が障害のある人の住宅改修に十分な知識をもっているか否かによってその内容は大きく違う.

 私たち理学療法士は何より障害のこと,それによる日常生活動作(ADL)像をよく知っていることが強みである.その立場から住環境に提言することが最も重要であり,基本であると考える.

ひろば

終末期における理学療法の位置づけを再考する

著者: 池田耕二 ,   山本秀美 ,   中田加奈子

ページ範囲:P.240 - P.240

・終末期における理学療法の位置づけを再考する

 理学療法は生活の質(QOL)の向上を目的としながらも,病期によってその位置づけに違いがみられる.例えば,急性期には医学モデルのもとで病状の回復を目指し,回復期には身体回復モデルのもとで社会復帰を目指す.また維持期には社会モデルのもとで社会適応,つまりいかに快適に暮らすかを模索するという位置づけがある.それでは,終末期はどうか.終末期もQOLの向上を目指すことに異論はないが,それが実感しにくい点が他のモデルと異なるため,明確な位置づけも提起できていないように思われる.

 筆者が終末期理学療法実践の現場で日頃感じているのは,患者は人生を振り返りながら「これで良かった」「それでも幸せだった」と一つ一つのことに意味や価値付けを行い,自分自身や家族を納得させているということである.QOLが個人(価値観など)と環境(状況や文化など)の関係性から構築されるものであることを踏まえれば,価値観や状況が変われば当然QOLも再構築されるものと考えられる.したがって,その中で如何に患者が納得できるQOLを再構築できるかが焦点となり,患者らは自らを問い直しながらQOLの再構築を行い,納得性を引き出していると推察できる.

講座 福祉ロボット工学・3

上肢機能支援ロボットの開発と展開

著者: 小澤拓也 ,   古荘純次

ページ範囲:P.241 - P.247

わが国の上肢機能支援ロボットについて

1.開発現況と今後への期待

 2007年の厚生労働省の統計によれば,脳卒中はその死亡率が悪性新生物,心疾患に次いで第3位であるにもかかわらず,入院期間は悪性新生物や心疾患の3倍以上の期間を要している.さらに「平成19年国民生活基礎調査」によれば,要介護状態になる原因の第1位は脳卒中であり,脳卒中による後遺障害が国民の日常生活に大きな影響を及ぼすことから,近年,これらに対するロボット技術の開発に注目が集まっている.

 日本のロボット技術は国際的にもトップレベルにあり,産業以外の病院,福祉施設,家庭などで活用される,人間との接触を前提とした次世代ロボットを実用化することが期待されている.2005~07年には独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)によって「人間支援型ロボット実用化基盤技術開発」プロジェクトが実施され,リハビリ支援ロボット(人間の状態,動作に基づき,多自由度に関節・筋のリハビリ動作を支援),自立動作支援ロボット(要介護者の立ち上がりや歩行,把持などの動作を支援),介護動作支援ロボット(主に排泄の際の介護者の抱上げ作業などに係る力支援)の技術開発と実証実験が行われた.また2009年からは生活支援ロボット実用化プロジェクトが開始され,対人安全技術の確立と技術化開発が現在も推進されている.

入門講座 訪問理学療法の基本・3

安全管理とリスク管理

著者: 大森豊 ,   平野康之 ,   齋藤崇志

ページ範囲:P.249 - P.257

はじめに

 昨今の医療情勢の変化により,医療機関での在院日数は減少の傾向にある.厚生労働省の調査では,理学療法の対象が多く含まれると考えられる一般病床における平均在院日数は,1985年で39.4日,2000年で30.4日,2005年で19.8日,2009年で18.8日と激減している1).単純に考えても,訪問での理学療法の対象となる患者は慢性期だけではなく回復期と考えられる人も増えているのが現実であろう.当然,そのような対象者のなかには以前よりもリスクの高い方も少なくないと考えられる.

 訪問で理学療法を行うためには様々なリスクが想定されるが,それらは,医学的なリスク,環境リスク,対人関係リスク,経営・管理リスクの4つに分類されよう(表1).リスクとは,ある事柄により発生する事故や事柄についての概念であるが,リスク管理とは,リスクを組織的に管理し,事故や損失などを回避もしくは,それらの低減を図るプロセスを言う.

 本稿では,リスク管理という観点から,医学的リスク,経営・管理上のリスク管理の一部(事故,訴訟への対応,感染症予防)について,職員教育という観点も交えて述べたい.

臨床実習サブノート 臨床実習に不可欠な基本的技能・12

ケースレポートのまとめ方

著者: 田中正則

ページ範囲:P.259 - P.264

はじめに

 「臨床実習教育の方法論は再考の時期を迎えている」と書くと,現在の臨床実習が何か大きな問題を抱えているように誤解を招くかもしれませんが,本来臨床実習には,学内の教育とは異なり,学習者が患者という具体的な対象者を通して日々知的好奇心を刺激され,自己学習の意欲をかきたてられ,学習した結果に喜びを見出すことのできる場1)という明確な規定があったはずです.その中でケースレポートの果たす役割は,臨床の場における問題解決型思考を導くためのアイテムであり,また,多忙な実習指導者にとっては,学生の能力を理解し指導を行ううえでのコミュニケーションツールのひとつであり,認知領域の学習方略でした.しかし,近年その機会を排除しようとする養成校も増えつつあり,臨床実習教育方法論の再考を,教員と実習指導者の双方が求めていると言っても過言ではないのかもしれません.

 筆者は教員時代,学内教育で問題解決型学習を経験した学生に対して,臨床実習に赴く直前に1997年の本誌「入門講座」の進藤論文を解説して実習地に送り出していました.その経験を踏まえ,「学習者の興味・関心のある課題を取り上げ,それを学習者自身が主体的に考え,判断して理解することによって,新しい場面に適応できる能力を育てる」というDeweyが提唱した問題解決型学習2)が,なぜ臨床実習における学習方略としてなじみやすいのかを解説したいと思います.

報告

新鮮アキレス腱断裂縫合術後に外固定なしで行う早期運動療法と運動機能回復

著者: 加藤勇輝 ,   林美菜子 ,   四本忠彦 ,   江草典政

ページ範囲:P.265 - P.269

要旨:当院では,新鮮アキレス腱断裂に対し,現在考えられる中でも最も強固な初期固定力を得ることができるアキレス腱縫合術(以下,術後外固定不要な縫合術)を用いることで,術直後より外固定なしでの早期運動療法が可能となった.これに伴い,当院にて新たな術後のプロトコルを作成した.本研究の目的は,術後外固定不要な縫合術後に,外固定なしで行う早期運動療法の有用性を明らかにすることである.対象は,当院の術後プロトコルに沿って術後運動療法を行ったアキレス腱断裂患者17名(男性13名,女性4名)とした.検討項目は,足関節の背屈関節可動域測定と,術後4・8・12週の自然歩行時の足底圧分析とした.結果,患側足関節の背屈角度は平均20日にて健側と同値となった.足底圧は術後8週で,前足部において健側と患側に有意差を認めなかった.過去の報告では,足関節の背屈関節可動域は6~7週で健側と同値に改善,前足部足底圧は6か月で健側と患側の有意差を認めなかったとしているのに対し,本法ではより早期に改善していた.以上より,新鮮アキレス腱断裂に対し,術後外固定不要な縫合術を用い外固定なしで早期運動療法を行うことが,従来法の固定により併発する足関節機能低下を防ぎ,早期に正常歩行を獲得することに有用であると考えられた.

学会印象記

―第11回アジア理学療法士連盟学会―アジアの文化と歴史にふれた4日間

著者: 浦辺幸夫

ページ範囲:P.271 - P.272

 2010年10月10~13日の4日間,第11回アジア理学療法士連盟学会(11th International Congress of the Asian Confederation for Physical Therapy:ACPT)がインドネシアのバリ島で開催された.ACPTが開催する学会は,1984年からほぼ2年ごとに開催されている.日本でも1988年と2008年の2回行われているが,前回の第10回学会が2008年に千葉県の幕張メッセで関東ブロックの理学療法士学会と共催されたことは記憶に新しい.

 グローバル化した世界のなかで,ACPT学会は私たちにとってアジアの理学療法士(以下,PT)の活動の実際をつぶさに知り,PTの学術的交流はもちろんのこと,各国のPTのおかれている状況の違いを肌で感じることができ,そして多くの仲間と交流できる場面としてもっとも身近にある国際学会であろう.今回は,筆者の目から見た学会の印象をまとめるが,次回の学会や世界連盟(WCPT)の学会に向け,皆さんの興味が喚起できれば幸いである.

―第11回アジア理学療法士連盟学会―11th ACPT in Baliに参加して―はじめての国際学会,発表

著者: 秋山綾子

ページ範囲:P.273 - P.274

 2010年10月11~13日に開催された11th International Congress of Asian Confederation for Physical Therapy(以下,ACPT)に参加いたしました(図1).口述発表を通しての経験を中心に,学会の印象を述べさせていただきます.

お知らせ

第16回3学会合同呼吸療法認定士認定講習会・認定試験/宗形テクニック―ベーシックAコース/動物に対する理学療法入門編in関西/第8回滋慶リハビリテーション学術研修会/第25回日本靴医学会学術集会/日本関節運動学的アプローチ医学会理学・作業療法士会第12回学術集会/第17回日本摂食・嚥下リハビリテーション学会学術大会/臨床理学療法研究会設立15周年記念講演会

ページ範囲:P.216 - P.275

第16回3学会合同呼吸療法認定士認定講習会・認定試験

◆認定講習会について

対 象:申請書類提出日現在において免許登録日以降,経験2年以上(理学療法士の場合)

日 程:A班 8月27日(土)~8月28日(日)

    B班 8月29日(月)~8月30日(火)

    C班 8月31日(水)~9月1日(木)

    D班 9月2日(金)~9月3日(土)

定 員:4,200名

会 場:品川プリンスホテルアネックスタワー 5F プリンスホール(〒108-8611 東京都港区高輪4-10-30)

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次号予告

ページ範囲:P.199 - P.199

「作業療法ジャーナル」のお知らせ

ページ範囲:P.269 - P.269

文献抄録

ページ範囲:P.276 - P.277

編集後記

著者: 吉尾雅春

ページ範囲:P.280 - P.280

 春弥生,spring.Springのもつ意味は春,泉,バネ,跳躍,原動力,復元力,源,始まり,大潮などなどで,そしてそれぞれに相当する動詞があります.春には芽がふき出し,hot springは温泉が噴き出します.大潮は干潮と満潮の差がもっとも大きくなる潮で,新月と満月時から1~2日後の太陽,地球,月が一直線になったときに起きると言われています.なるほど,太陽と地球と月が一直線になってスタートラインに着き,いよいよ飛び出すぞというわけですか.ヨーロッパではその昔,新年は4月から始まっていたそうですから,春がspringというのも納得です.いずれにしてもいよいよ動きが始まる,噴き出す,あるいは躍動感があるのがspringです.ことばのもつ意味を改めて調べてみるとなかなかおもしろいですね.

 さて,直立二足動物であるヒトの立位,歩行を考えるとき,股関節や膝関節の支持性のもつ意義はかなり大きいわけですが,脳卒中になると,足関節を含めた下肢の動きを伴った支持性を得て歩行につなげていくことは至難の業です.関節軟骨は濡れた氷よりも滑りますからなおのことです.そこで下肢装具を用いることがありますが,その用い方は医師や理学療法士の考え方によってまちまちです.治療用装具として積極的に用いるグループ,装具は動きを止めるとして原則的に用いないグループ,ハンドリングが大切であるとして入院リハビリテーション過程の後半まで用いないグループ,ある特定のプラスチック装具を好むグループ,長下肢装具を積極的に取り入れているグループなどなど様々であり,理学療法士全体としての共有知識として存在していない現状があります.

読者の声募集

ページ範囲:P. - P.

基本情報

理学療法ジャーナル

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1359

印刷版ISSN 0915-0552

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