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文献詳細

雑誌文献

理学療法ジャーナル45巻3号

2011年03月発行

文献概要

特集 脳卒中片麻痺患者の装具と運動療法

長下肢装具による脳卒中片麻痺の運動療法の取り組み

著者: 河津弘二1 槌田義美1 田中智香2 山鹿眞紀夫2 古閑博明2

所属機関: 1熊本リハビリテーション病院リハビリテーション部理学療法科 2熊本リハビリテーション病院リハビリテーション科

ページ範囲:P.209 - P.216

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はじめに

 脳卒中片麻痺の理学療法において,長下肢装具(以下,KAFO)を活用した装具療法は,臨床場面でどのような「役割」ができるのだろうか?

 「脳卒中ガイドライン2009」の歩行障害に対するリハビリテーション(以下,リハ)では,下肢練習量を多くすることや,装具を用いることが歩行改善のために推奨されているが1),早期からの具体的な使用方法が示されているわけではない.特にKAFOは,何の目的で,どのように活用していくのかは状況に応じた検討が必要である.

 重症片麻痺患者に対し早期からの理学療法でKAFOを活用することは,適切な身体のアライメント調整を行い,安定性を補償したうえで下肢練習量を増やすことや重力位への介入が行いやすくなることを臨床的に経験する.病棟の生活動作においてKAFOを活用することは難しく実用的でないが,裸足での移乗や移動動作では不安定な場合もあり,短下肢装具の使用が実用的である.理学療法士(以下,PT)は歩行改善と同時に,病棟での移乗や移動動作の改善を視野に入れた装具の工夫を考える必要がある.

 筆者らの回復期リハ病棟では,重症片麻痺患者に対し,簡単にKAFOと両側金属支柱付短下肢装具(以下,支柱付AFO)とに切り替えることが可能である大腿部脱着式KAFO(以下,脱着式KAFO)を作製し,運動や生活・活動場面に応じて使い分けを行う早期からの装具療法を導入している.歩行獲得をゴールにできない患者でも,脱着式KAFOを目的に応じて使い分けることで,介助量の軽減や日常生活動作(ADL)の向上が図れると考えている.

 今回,脱着式KAFOによる脳卒中片麻痺の運動療法の取り組みを,これまでの活用経験と当院のデータを交えて紹介する.

参考文献

1)脳卒中治療ガイドライン2009.http://www.jsts.gr.jp/jss08.html
2)濵田直人,他:当院で試作した脳卒中下肢装具アルゴリズム表の紹介.日本義肢装具学会誌 24:220-221,2008
3)村上賢治,他:当院脳卒中患者に対する長下肢装具処方の動向.日本義肢装具学会誌 24:222-223,2008
4)高橋紳一,他:脳卒中の装具療法:私のスタンダード.リハ医学 39:681-718,2002
5)名倉武雄,他:生体力学モデルによる大腰筋の機能解析.バイオメカニズム学会誌 24:159-162,2000
6)玉利 誠,他:片麻痺の体幹の病態運動学.理学療法 25:945-956,2008
7)吉尾雅春:脳卒中患者に対する装具療法の取り組み.理学療法学 37(Suppl1):162,2010
8)Perry J:歩行分析-正常歩行と異常歩行,武田 功,他(監訳):ペリー歩行分析,pp65-76,医歯薬出版,2007
9)三好正堂:理学療法の有効性.理学療法学 15:77-89,1988
10)諸橋 勇:足底感覚と脳卒中片麻痺.理学療法 23:1254-1261,2008
11)野添優作,他:当院の大腿部脱着式長下肢装具の紹介.熊本県理学療法士学会抄録 13:35,2009
12)野添優作,他:脳卒中片麻痺患者に対する長下肢装具の工夫.全国リハ・ケア合同研究大会抄録 13:222,2009
13)江西一成:脳血管障害者における座位・起立の重要性.臨床リハ 16:476-480 2007
14)岡西哲夫:理学療法と重力との関わり―生体力学的視点から.理学療法 26:697-704,2009
15)内山 靖:症候障害学序説,pp1-10,文光堂,2006
16)大橋ゆかり:評価に基づいた理学療法:基礎「運動学習」.理学療法学 36:223-225,2010
17)辻 哲也,他:入院・退院時における脳血管障害患者のADL構造の分析-機能的自立度評価表(FIM)を用いて.リハ医学 33:301-309,1996
18)全国リハビリテーション病棟連絡協議会.http://www.rehabili.jp/index2.html

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1359

印刷版ISSN:0915-0552

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