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特集 ロコモティブシンドローム
ロコモティブシンドロームの概念と現状
著者: 石橋英明12
所属機関: 1医療法人一心会伊奈病院整形外科 2高齢者運動器疾患研究所
ページ範囲:P.285 - P.291
文献購入ページに移動ロコモティブシンドローム,略してロコモ.このロコモという言葉もかなり浸透してきた,というと言い過ぎであろうか.しかし,一般向けの講演会でロコモの話をする際に,冒頭に「ロコモという言葉を聞いたことがありますか」と問うと,6割から8割の参加者の手が挙がるようになってきている.この言葉の第一の目的である運動器の重要性を知らせたいという願いが徐々に実現に向かっているように感じる.
2007年に日本整形外科学会の中村耕三理事長により提唱された「ロコモティブシンドローム」1)は,「運動器の障害のために,要介護になっていたり,要介護になる危険の高い状態」と定義されている2).これはすなわち,加齢に伴う運動器の脆弱化を示す概念で,一般向けに平たく言うと「年を取って足腰が弱くなり,放っておくと寝たきりや要介護になってしまうよ」という状態である.
言葉の由来は「運動器」を意味する英語のlocomotive organである.日本語では運動器症候群と呼ぶことになっており,直接的には運動器の機能低下を意味するが,特に加齢などにより足腰が弱くなった状態を表している.
世界の長寿国日本では,今後も少子高齢化が進む.増え続ける要介護者に対する大きな解決策のひとつがロコモの概念の普及であろうと思われる.ロコモはわが国にとって,これからますます重要な役割を担っていくであろう.本稿では,ロコモが提唱された背景と経緯,ロコモの概念と特徴,ロコモに気づくための自己チェックであるロコモーションチェック,ロコモの予防や改善のための運動であるロコモーショントレーニング,そしてロコモに対する整形外科医・理学療法士の役割について述べる.
ロコモに対する理解を深め,ロコモに関してどういった働きかけをするかを考える一助になれば幸いである.
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