icon fsr

文献詳細

雑誌文献

理学療法ジャーナル45巻7号

2011年07月発行

文献概要

特集 神経生理学的アプローチの転換

脳性麻痺のNDTを考える

著者: 宮崎泰1

所属機関: 1つくば国際大学医療保健学部理学療法学科

ページ範囲:P.575 - P.581

文献購入ページに移動
はじめに

 近年は,医療全般に根拠のある医療(evidence based medicine:EBM)への関心が高まり,医療の効果についての質的検討が始まっている.その流れは小児リハビリテーション領域にも及んでいる.

 脳性麻痺に対する運動療法には様々な介入があるものの長期的成績についての十分な検討はなされておらず,介入効果についてのエビデンスは乏しい.神経発達学的治療(neurodevelopmental treatment:NDT)は,広く世界中で神経学的運動障害のある小児や成人の脳性麻痺や頭部外傷などに適用されている.このNDTの効果についての検討も少ない.その理由として,子ども側の要因としては中枢神経系の傷害の程度に起因する障害の重障度と合併症,加齢に伴う二次的傷害の多様性が挙げられる.セラピスト側の要因としては介入に関する質的・量的問題があり,環境的な要因としては家庭環境,教育環境,社会的環境などがあり,これらが絡み合って問題の所在を複雑にしている.また,これらの問題に対応できる研究体制の不備がある.加えて,脳性麻痺児の運動機能の変化を捉える客観的な評価尺度についての十分な検討がなされていなかったことも挙げられる.

 このような社会情勢の変化および脳性麻痺に特有の要因を考慮し,脳性麻痺の運動療法に一定の方向性を与えるガイドラインとして,「脳性麻痺リハビリテーションガイドライン(以下,ガイドライン)」が刊行された.このガイドラインでは,現段階でエビデンスに基づいた治療がどこまで可能なのかを明らかにしている1)

 本稿ではガイドラインを基に,NDTの推奨段階決定の根拠になった最終の採択論文について,その概要を紹介し,NDTに関するエビデンスについて若干の検討を加えることとする.

参考文献

1)社団法人日本リハビリテーション医学会(監),日本リハビリテーション医学会診療ガイドライン委員会,他(編):脳性麻痺リハビリテーションガイドライン,医学書院,2009
2)大槻利夫:ボバースアプローチのこれまで,そしてこれから,ボバースアプローチ誕生後50年の軌跡―神経学と臨床実践の結合.理学療法学 37:57-59,2010
3)宮崎 泰:小児リハビリテーションにおける理学療法の変遷と概要.小児看護臨増 29:975-979,2006
4)篠原幸人,他(編):脳卒中治療ガイドライン2004,協和企画,2004
5)Butler C, et al:Effects of neurodevelopmental treatment(NDT)for cerebral palsy:an AACPDM evidence report. Dev Med Child Neurol 43:778-790, 2001
6)Brown GT, et al:The efficacy of neurodevelopmental treatment in paediatrics:a systematic review. Br J Occup Ther 64:235-244, 2001
7)Steultjens EM, et al:Occupational therapy for children with cerebral palsy:a systematic review. Clin Rehabil 18:1-14, 2004
8)Boyd RN, et al:Management of upper limb dysfunction in children with cerebral palsy:a systematic review. Eur J Neural 5:150-166, 2001
9)Sackett DL:Rules of evidence and clinical recommendations on the use of antithrombotic agents. Chest 95(2 Suppl):2s-4s, 1989
10)Cook DJ, et al:Clinical recommendations using levels of evidence for antithrombotic agents. Chest 108(4 Suppl):227s-230s, 1995
11)Jadad R, et al:Assessing the quality of reports of randomized clinical trials:is Blinding necessary? Controlled Clin Trials 17:1-12, 1996
12)Verhagen AP, et al:The Delphi list:A criteria list for quality assessment of randomized clinical trials for conducing systematic reviews developed by Delphi consensus. J Clin Epidemiol 51:1235-1241, 1998
13)van Tulder MW, et al:Method guideline for systematic reviews in the Cochrane collaboration back review group for spinal disorders. Spine 22:2323-2330, 1997

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1359

印刷版ISSN:0915-0552

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?