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特集 高齢下肢切断の理学療法
高齢下肢切断の現状と課題
著者: 畠中泰司1 島津尚子2
所属機関: 1徳島文理大学保健福祉学部理学療法学科 2公立大学法人横浜市立大学附属病院リハビリテーション科
ページ範囲:P.1059 - P.1064
文献購入ページに移動65歳以上の老齢人口は1995年の1,825万人から2025年の3,300万人まで急速に増加を続け,2015年には25%台に達し,その後も低出生率の影響を受け,2050年には32%に達すると推測されている.
老齢人口が全体の7%に達すると高齢化社会と呼ばれ,そしてその2倍の14%に達すると高齢社会と呼ばれる.1994年に高齢化率が14%を越し1997年には老齢人口が年少人口を上回り高齢化が一段と進展し,すでに超高齢社会になっている.
このような人口の高齢化とともに疾病構造も変化し,リハビリテーション(以下,リハ)サービスを必要とする高齢障害者へは青壮年者とは異なる高齢者の特性を踏まえた対応が求められる.高齢の下肢切断者は,青壮年期に下肢切断が行われ高齢になった場合と,高齢になってから下肢切断を余儀なくされた場合とがある.高齢になってからの下肢切断では,加齢に伴う知的・精神的機能,身体的機能に多くの問題を抱え,複数の慢性疾患を併発していることが多く,義足歩行の獲得に難渋することが多い.
下肢切断者のリハビリテーションの目標は通常義足歩行の獲得とされるが,高齢になって下肢切断が行われた場合には,切断高位にもよるが必ずしも義足歩行を獲得できるわけではなく,義足非装着での活動を促進することが目標となることがある.
一方,最近では義足の開発や材料の進歩が著しく,下肢切断者に処方される義足は,種々の機能を備えた義足部品や材料が開発されている.高齢下肢切断者においてもそれらの機能や新しい材料による製品を最大限に利用して,これまで義足歩行を断念していた切断者が義足歩行を獲得できるようになり得るのではないかと考える.
本稿では,わが国における切断者に対する調査報告をふまえ,高齢者の下肢切断の現状や理学療法における課題として,義足歩行獲得およびその指導の考慮点について記述する.
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