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文献詳細

雑誌文献

理学療法ジャーナル46巻12号

2012年12月発行

文献概要

特集 高齢下肢切断の理学療法

高齢下腿切断の理学療法の現状と課題

著者: 島津尚子1 上杉上1 水落和也1 畠中泰司2

所属機関: 1横浜市立大学附属病院リハビリテーション科 2徳島文理大学保健福祉学部理学療法学科

ページ範囲:P.1073 - P.1079

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はじめに

 高齢化や生活様式の変化に伴い高齢の下肢切断者が増加し,その中でも血行再建術や切断術の技術の進歩,膝関節機能の温存への意識の高まりにより,下腿切断の割合が増加している.下腿切断者は膝関節機能が温存されるため,高齢下肢切断者の中でも比較的歩行を再獲得できる場合が多い1).そこで本稿では,高齢下腿切断者における理学療法を施行するうえでの問題点や留意点,義足処方や装着の工夫,退院時の指導,フォローなどについて報告する.

 下肢切断の原因として近年割合が増加しているのが末梢循環障害による切断で,外傷性,腫瘍と続く.血管原性切断では全身の動脈硬化に基づく筋力低下や体力低下を伴っていること,また悪性腫瘍による切断の場合には切断術と並行し化学療法や放射線療法などを施行することも多く,これらの副作用による血球減少などの全身状態の低下を併発することがあるため,全身状態に配慮したリハビリテーションの実施が不可欠である.

 さらに,高齢者では原疾患や合併症による機能低下2)のベースに,加齢による機能低下が伴っていることを忘れてはいけない.加齢現象とは緩やかに進行する器官の機能低下とホメオスタシス機能の低下であり,最大努力・最大ストレス時にみられる器官の予備力の低下,環境変化への適応力の低下,ストレスに対する反応性の低下と言われており,その結果として疾病や外傷を受けやすくなる3).切断術後の機能としては,術前の生活レベル以上の能力を獲得することは難しいため,切断術前の運動機能,生活レベルを把握することは,ゴールを設定するうえでも重要である.

参考文献

1)陳 隆明:高齢下肢切断者のリハビリテーションゴールの設定と義足処方.MB Med Rehabil 16:31-38,2002
2)丸野紀子,他:高齢下肢切断者のリハビリテーション―リスク管理.MB Med Rehabil 16:24-30,2002
3)水落和也:高齢者の下肢切断原因となる疾患.MB Med Rehabil 16:8-16,2002
4)水落和也:切断―血管原性切断者のリハビリテーション.総合リハ40:720-725,2012
5)陳 隆明:切断患者.臨床リハ19:344-349,2010
6)牧 里美,他:Modified TSB式下腿義足ソケットの製作.義装会誌21:210-211,2005
7)熊木由美子,他:両手指,両下腿切断者にシリコーンライナーTSB式下腿義足を処方し良好な結果を得た2症例.義装会誌22:23-25,2006
8)木村浩彰,他:血行障害による下腿切断の新しい試み―手術から断端管理,義足装着.義装会誌22:136-137,2006
9)根岸和諭,他:下腿義足.日本整形外科学会,日本リハビリテーション医学会(監):義肢装具のチェックポイント,第7版,pp161-174,医学書院,2007
10)及川由布子:下腿切断者のゴール設定.第27回日本義肢装具学会研修セミナー資料「下肢切断者への実践的アプローチ―断端管理から在宅・社会復帰まで」,pp46-57,2011

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1359

印刷版ISSN:0915-0552

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