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文献詳細

雑誌文献

理学療法ジャーナル46巻3号

2012年03月発行

文献概要

入門講座 理学療法と吸引―実施にあたり確認しよう・3

実践編①:病院における理学療法士の吸引実施

著者: 前田秀博1

所属機関: 1社会医療法人近森会近森病院理学療法科

ページ範囲:P.245 - P.249

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はじめに

 気管吸引は,気道内分泌物などによる気道閉塞を予防・改善するため,陰圧をかけたカテーテルを患者の気管へ挿入し気道開放を行う侵襲的な手技であり,医行為のひとつとされることから,かつて家族を除く限定された職種にのみ認められてきた1).2003年より筋委縮性側索硬化症(ALS)などの療養者に対して,一定条件下においてヘルパーや養護教育関係者による気管吸引が認められたが2),その条件には,緊急時の支援体制確保を前提とし同意書を交わしたうえ,療養環境の管理,実施者の教育,吸引範囲の限定(口鼻腔内および気管カニューレ内部まで)があった.理学療法士による吸引行為については,日本理学療法士協会により10年以上にわたって交渉が進められてきたが3),規制の見直しはこれまで慎重に扱われてきた経緯がある.

 こうした中,厚生労働省は,日本の実情に即した医療スタッフの協働・連携によるチーム医療の推進について検討を重ね,2010年4月に「リハビリテーション関係職種の喀痰等の吸引に関して,理学療法・作業療法・言語訓練その他の訓練に含まれるものと解し,実施することができる行為として取り扱う」と発令した4).これは,多くの専門職種が目的と情報を共有し,業務を分担・連携・補完し合って,患者の状況に的確に対応する「チーム医療」の実践推進を意図したものとされる.

 つまり,こうした医行為を実施する職種を拡大することで,人的資源を有効に活用して効率的でタイムリーな医療提供体制を実現し,より大きな効果を引き出そうとしたものと解釈できる.

参考文献

1)鵜澤吉宏:理学療法と気管吸引.理学療法 28:315-320,2011
2)厚生労働省医政局長:ALS(筋委縮性側索硬化症)患者の在宅医療の支援について.医政発第0717001号,平成15年7月17日
3)千住秀明:呼吸器理学療法―臨床におけるこれからのチャレンジ.理学療法学 37:557-561,2010
4)厚生労働省医政局長:医療スタッフの協働・連携によるチーム医療の推進について.医政発0430第1号,平成22年4月30日
5)道又元裕:吸引の危険性とその対策.Nursing Today 25:31-42,2010
6)日本呼吸療法医学会気管吸引ガイドライン作成ワーキンググループ:成人で人工気道を有する患者のための気管吸引のガイドライン.人工呼吸 25:48-59,2008
7)(社)日本理学療法士協会内部障害理学療法研究部会呼吸班:吸引プロトコール,第2版,(社)日本理学療法士協会,2010
8)鵜澤吉宏:米国呼吸療法士からみた呼吸療法と理学療法の隣接領域と今後の課題.理学療法学 30:264-267,2003
9)道又元裕:患者に安全な気管吸引手技.Nursing Today 25:10-15,2010
10)高橋仁美,玉木 彰:喀痰吸引の実際.理学療法学 38:471-476,2011

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1359

印刷版ISSN:0915-0552

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