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入門講座 筋力増強の指導法・1【新連載】
変形性関節症(骨関節疾患)に対する筋力増強の指導法
著者: 田仲勝一1
所属機関: 1香川大学医学部附属病院リハビリテーション部
ページ範囲:P.349 - P.355
文献購入ページに移動はじめに
下肢関節疾患の中でも変形性関節症は理学療法士が最も多く遭遇する疾患である.推定患者数は変形性膝関節症(以下,膝OA)で約2,400万人であり,そのうち痛みのあるものが820万人(男性210万人,女性610万人)1),変形性股関節症(以下,股OA)は膝OAよりは少ないものの,患者数は約120~420万人と推測されている2).
これらの推計結果からも,下肢変形性関節症は理学療法を行う主たる疾患となるのみでなく,中枢神経疾患や内部疾患などで理学療法の処方を受ける場合でも合併している可能性が高い.例えば,脳梗塞片麻痺で膝OAによる膝関節痛を伴っていれば,歩行練習の妨げになる.この場合,理学療法士として片麻痺の運動療法を行うと同時に,膝OAに対するアプローチも合わせて行うことが必要となる.
本稿のテーマである筋力増強は関節可動域運動や歩行練習とともに理学療法プログラムの中核となるもので,理学療法士はそのメカニズムを十分に熟知したうえで,対象者の状態にあった筋力増強方法を選択する必要がある.
股OAや膝OA症例が筋力低下を来していることは報告されており3~8),股OAや膝OAでも筋力増強は重要な理学療法プログラムとなる.
本稿では股OAと膝OAの筋力低下の原因と,その対処となる筋力増強の指導法について,解説する.
下肢関節疾患の中でも変形性関節症は理学療法士が最も多く遭遇する疾患である.推定患者数は変形性膝関節症(以下,膝OA)で約2,400万人であり,そのうち痛みのあるものが820万人(男性210万人,女性610万人)1),変形性股関節症(以下,股OA)は膝OAよりは少ないものの,患者数は約120~420万人と推測されている2).
これらの推計結果からも,下肢変形性関節症は理学療法を行う主たる疾患となるのみでなく,中枢神経疾患や内部疾患などで理学療法の処方を受ける場合でも合併している可能性が高い.例えば,脳梗塞片麻痺で膝OAによる膝関節痛を伴っていれば,歩行練習の妨げになる.この場合,理学療法士として片麻痺の運動療法を行うと同時に,膝OAに対するアプローチも合わせて行うことが必要となる.
本稿のテーマである筋力増強は関節可動域運動や歩行練習とともに理学療法プログラムの中核となるもので,理学療法士はそのメカニズムを十分に熟知したうえで,対象者の状態にあった筋力増強方法を選択する必要がある.
股OAや膝OA症例が筋力低下を来していることは報告されており3~8),股OAや膝OAでも筋力増強は重要な理学療法プログラムとなる.
本稿では股OAと膝OAの筋力低下の原因と,その対処となる筋力増強の指導法について,解説する.
参考文献
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