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雑誌目次

雑誌文献

理学療法ジャーナル46巻7号

2012年07月発行

雑誌目次

特集 スポーツと理学療法

EOI(essences of the issue)

ページ範囲:P.575 - P.575

 スポーツと理学療法の関係は,スポーツによって傷害・障害を有した対象者への支援と,スポーツを健康増進や機能・能力の向上および社会参加の手段として活用する視点に大別できる.

 このうち,スポーツ傷害に対する理学療法では,主として運動器の機能不全を速やかに回復して,日常生活活動とともにスポーツへの復帰を目指した系統的な取り組みがなされている.さらに,傷害・再発の予防,青少年への保健活動の一環として理学療法の技術や知識を幅広く活用することが期待されている.

スポーツと理学療法のかかわり

著者: 小林寛和

ページ範囲:P.579 - P.584

はじめに

 近年,わが国の競技スポーツのレベルは著しく向上している.オリンピック競技大会では日本選手団が2004年のアテネ大会で史上最多(1964年東京大会と同数)の金メダルを獲得し,また各競技における国際大会での活躍もめざましいものがある.男子サッカー代表チームのワールドカップ大会(2002年,2006年,2010年)での活躍,ワールドベースボールクラシック(2006年,2009年)での日本代表チームの優勝,なでしこジャパン(女子サッカー代表)の2011年ワールドカップ大会優勝などは記憶に新しい.

 また,スポーツ活動の多様化も著しく進んでおり,様々な目的をもってスポーツに取り組む人々が増えている.身近なスポーツであるランニングに取り組む人々の増加はその代表例であり,東京マラソンのようなランニングに関する大規模スポーツイベントが,各地で行われるようになってきた.

 このようなスポーツ活性化の気運が高まりをみせるなか,勝つことだけでなく,楽しむこと,健康の維持・増進といった目的でもスポーツ活動を実施している人が増えてきている.スポーツ活動の内容は,高度に,多様になってきており,それに伴って,様々な場面でわれわれ理学療法士がスポーツにかかわる機会も増加しているように思う.

スポーツ傷害に対する整形外科的診断・治療と理学療法への期待

著者: 大谷俊郎

ページ範囲:P.585 - P.592

はじめに

 本稿では,臨床で遭遇する頻度の高い代表的なスポーツ外傷・障害の中から,筆者の専門である膝関節を中心に,それぞれの疾患の病態,診断と整形外科的治療について解説し,理学療法への期待を述べる.

スポーツ復帰に向けた系統的な理学療法の取り組み

著者: 尾﨑勝博

ページ範囲:P.593 - P.599

はじめに

 近年,日本におけるスポーツ医療への理学療法士(以下,PT)の関わりは,医療機関内でのアスレティックリハビリテーション(以下,アスリハ)の展開にとどまらず,地域のスポーツ現場,さらには国民体育大会(以下,国体)をはじめとする国内の各種競技大会における対応など,地域社会に根差した活動へと広がりつつある.

 一方で,年々輩出されるPTにこうしたスポーツ分野への関心が広がるなか,2009年には日本理学療法士協会(以下,協会)のスポーツ医療分野として「スポーツ理学療法研究部門(Japanese Sports Physical Therapy Section:JSPS)」が設置され,これを後押しする体制も築かれようとしている.

 しかし,地域的な活動の格差をはじめ,そのシステムの構築には様々な課題があるのが現状である.今回は,図1に示すような「スポーツ理学療法」の視点に立ち,われわれが実践している当院でのアスリハからスポーツ現場,さらには宮崎県(以下,本県)の行政をも巻き込んだ地域社会活動への系統的な取り組みについて述べていきたい.

スポーツ傷害の予防と理学療法―高校野球への取り組みの紹介

著者: 岡部敏幸 ,   甲賀英敏

ページ範囲:P.600 - P.604

はじめに

 野球はわが国において大変人気のある国民的スポーツであり,特に高校野球への注目度は高い.しかし,勝利至上主義が幅を利かせ,選手の健康管理や傷害予防対策が立ち遅れしている感は拭いきれない.理想形は監督・コーチといった技術指導スタッフと,理学療法士をはじめとしたメディカルスタッフの仕事を明確化し,互いの役割を尊重し部門相互の連携を密にすることが傷害予防,さらにはチーム力向上に繋がると考えている(図1).

 われわれは,静岡県大会におけるメディカルサポート(MS)を通し,傷害予防の重要性を選手,監督,大会役員にアピールしてきた.しかし大会期間中だけでなく,日ごろの練習からMSを実施して障害予防の啓蒙を図る必要性を感じたため,2011年度よりMS活動を展開するMS訪問事業を開始した.本稿では,MS訪問事業を開始するまでの経緯と現状を報告する.

高齢者・身体障害者のスポーツ参加と理学療法

1.高齢者のスポーツ参加と理学療法

著者: 島田隆明 ,   佐久間雅久 ,   直江祐樹 ,   柴山靖 ,   田中庸介 ,   泉健太郎 ,   深間内誠

ページ範囲:P.605 - P.608

はじめに

 「スポーツ」という言葉には2つの意味がある.オリンピックや国民体育大会など競技にルールを設けて勝敗を分けるチャンピオンスポーツと,遊びや娯楽,余暇を楽しみながら行うレクリエーションスポーツである.若年層では比較的チャンピオンスポーツの意味合いが強く,シニア世代に関しては,レクリエーションスポーツの意味合いが強い傾向になると考える.

 しかし,最近の「健康」という意識の高まりから,シニア世代にもチャンピオンスポーツの意味合いを強く持つ取り組みが多くなってきた.本稿では,中高年者の2つの側面に対する行政の取り組みの紹介と,筆者が経験したシニア世代のスポーツの祭典「日本マスターズスポーツ2010三重大会」(開催期間:2010年9月13~21日)におけるトレーナーブース設置とトレーナー活動について報告する.

2.身体障害を有する対象者のスポーツ参加と理学療法士サポート

著者: 門田正久

ページ範囲:P.609 - P.613

はじめに

 近年,国民の間ではスポーツが盛んになってきており,ヨガや水泳などの屋内型スポーツやジョギング,ウォーキングといった手軽な屋外型スポーツの参加者が増加の一途をたどっている.

 それに伴い,日々の理学療法士が携わる業務の中では,スポーツ愛好家からアスリートまで,またジュニアスポーツなど健常者を中心とした業務も多くなってきていることと思われる.その対象者は,障害の有無に関わらず,また年齢にも性別にも関係なくスポーツを楽しむことができる人たちで,スポーツ活動の目的も,健康づくりから本格的な競技まで様々である.

 本稿で紹介する身体障害を有する対象者のスポーツ参加は,まさしく理学療法士が一番接点をもてる領域の1つである.理学療法士として担当した身体障害をもつ方と何かしらスポーツについて話したり,あるいは本格的にサポートしたりしている理学療法士は大勢いるはずである.筆者自身は現在,主として障害者の競技スポーツを中心に関わっているが,本稿を通して障害者スポーツとの関わりの経験がない理学療法士の方々に興味をもっていただければ幸いである.

3.切断者のスポーツ参加と理学療法―陸上競技の支援

著者: 駒場佳世子 ,   臼井二美男

ページ範囲:P.614 - P.616

はじめに

 障害者スポーツには身体機能の向上や心理的向上,社会参加の促進などの利点がある.筆者は切断者の陸上サークル“ヘルスエンジェルス”1)に参加し,切断者の走行をサポートしてきた.その経験を踏まえ,切断者の陸上競技の現状と理学療法による支援について述べる.

とびら

たゆまぬ自己研鑽を忘れずに!

著者: 佐藤秀紀

ページ範囲:P.573 - P.573

 現在,大学教員として20年を経ようとしている.最近の大学生の変化と,学生が授業に「求めるもの」の変化に気がつく.もともと勉強になじまず,一番上まで上り詰めるのではなく,あえて下流を志向する「下流志向」の若者たちの存在である1).また,大学の授業に対し,授業料に見合うだけの価値があるのかを問う「消費者タイプ」の学生の出現.「聞いてやるから,何か面白いことを話してみろよ」という若者たちである2)

 このような学生の変化に応じた講義を行うためには,講義内容のわかりやすさ,学生の知識・関心・意欲の深まりを考え,最新の医学知見を踏まえた授業を構築することが必要となる.しかし,一般に年齢を重ねるほど,新しいことを覚えることは難しくなる.ご多聞に漏れず,私も難しい専門書を読むのが億劫になっている.老眼になってからは小さな活字を読むことすら苦痛になってきた.それでも「学習方法の工夫」によって,年齢的な記憶力の低下をカバーすることができることを実感している.

講座 廃用症候群・1【新連載】

廃用症候群の定義と病態

著者: 美津島隆

ページ範囲:P.620 - P.625

はじめに

 リハビリテーション診療において,慢性疾患,手術後あるいは治療の合併症などで長期臥床を余儀なくされている患者の日常生活動作(activities of daily living:ADL)を自立させることは大変重要なテーマである.そのためには早期に身体の運動および生理学的機能を回復させることが不可欠で,リハビリテーションの目的の一つといっても過言ではない.

 さて「動物」は文字通り「動く物」であり,ヒトは動くことにより全身の生体システムを調整し,その内部環境の恒常性を維持している.したがって,身体各器官が動かせない,または動かない状態が長期にわたると,当然のことながら様々な弊害が現れてくる.こうした身体不活動状態に起因した二次的に発生する障害を総称して「廃用症候群」と定義している.

 ところで,この「廃用症候群」という語はHirschbergのdisuse syndromeの和訳であるが,日本では「廃用症候群」という語は特に医療の分野においては導入以来長く,一般的な概念である.しかし欧米ではこのような状態に対して不動化(immobilization),ディコンディショニング(deconditioning),不活動(inactivity)という単語を用いており,disuse syndromeという単語を当てることはほとんどない.

 本稿ではこうした現状から,わが国で使用されている「廃用症候群」について,その概念と歴史的経緯,主な病態,臨床的な解釈についてまとめる.

1ページ講座 福祉機器―在宅生活のための選択・調整・指導のワンポイント

手すり

著者: 加藤浩子

ページ範囲:P.628 - P.628

●はじめに

 手すりは在宅生活を安全に継続するために重要となる福祉機器である.設置には2つの方法があり,住宅改修(工事を必要とする場合)と福祉用具のレンタルサービス(工事を必要としない場合)がある.

理学療法関連用語~正しい意味がわかりますか?

翼状肩甲

著者: 工藤弘之

ページ範囲:P.629 - P.629

●翼状肩甲とは

 翼状肩甲(winged scapula:winging of scapula)とは,肩甲骨の内側縁あるいは下角が胸郭から後方へ浮き上がった状態のことである.天使の翼や鳥の翼のように見えるためこのように呼ばれる.この状態は,前鋸筋など肩甲骨の運動に作用する筋群の筋力低下と関連していることが多い.前鋸筋あるいは長胸神経の障害では,120°以上の肩関節屈曲が困難となる1)

理学療法臨床のコツ・29

脳血管障害に対する理学療法のコツ・2―筋緊張抑制のコツ

著者: 佐藤房郎

ページ範囲:P.630 - P.632

筋緊張のとらえ方

 筋緊張には,筋組織のもつ粘性と神経系による張力の制御状態が反映されている.筋線維の結合組織であるコラーゲンは,弾力性のない線維の集まりで内部抵抗に関与しているが,運動や熱でゲル状に変化し伸張しやすくなる特徴がある.神経系による制御機構は,脊髄反射をベースに高位中枢で統合・処理され,重力環境に適応するために体位や運動課題に合わせて調節されている.筋緊張は随意運動と自律的な姿勢制御に関与しているが,生得的な運動パターン(シナジー)が素地を成し,発達過程で運動の自由度の凍結と解放を繰り返しながら経済性と巧緻性が獲得される1)

 脳血管障害による筋緊張の異常には,異常亢進(痙縮と強剛),異常低緊張,動揺があり,症候学的にはこれらが混在している.随意運動と自律的な姿勢制御が制限された状況では,非麻痺側優位で努力性の活動に陥りやすい.また,先行随伴性姿勢調節の欠如は代償的な運動パターンが強化される背景と考えられる.岸本らが「異常筋緊張の評価は,筋を個別に評価するのではなく,緊張性反射活動を背景にした異常な運動パターンや,正常な姿勢調節機構の過剰代償適応の結果としてとらえる必要があろう」2)と述べているとおり,脳血管障害の筋緊張の問題は,不適切な脳の可塑性の結果と解釈できる.

入門講座 栄養と理学療法・1【新連載】

栄養に関する基本的な考え方

著者: 上西一弘

ページ範囲:P.633 - P.643

はじめに

 私たちが健康を維持・増進するために何をどれだけ食べればよいかを示したものが食事摂取基準である.本稿では,栄養に関する基本的な考え方,基本的な栄養学の知識として栄養素とその代謝,各栄養素の必要量などについて,主にこの食事摂取基準に基づいて解説する.

臨床実習サブノート 基本動作の評価からプログラムを立案する・4

股関節手術後患者の基本動作の評価からプログラムを立案する

著者: 榎勇人

ページ範囲:P.644 - P.653

はじめに

 筆者が臨床で患者の基本動作を評価する際,特に歩行のような場合は,「体幹の動揺が大きいな」「速度が一定せずに歩行のリズムが悪いな」など,まず漠然と全体を見て,そこから細部を評価することが多い.一方,学生に患者の歩行を初めて評価してもらうと,「足関節の背屈が……」などと細部から答える学生が多いことを経験する.最後に答えに行き着きさえすればどちらから見てもよいと思うが,細部から見た場合,少なからず「木を見て森を見ず」になってしまうことがある.

 つまりその細部の異常が,基本動作に悪影響を及ぼしている原因の一因子なのか,それとも逆に異常動作から影響を受けている結果なのか,全体におけるその細部の問題の位置付けを検討しなければ,治療介入すべき問題なのか判断もつかず,行き当たりばったりの治療となってしまう.

 よって本稿では,股関節手術後患者の基本動作として,当院の股関節手術で最も多い人工股関節全置換術(total hip arthroplasty:THA)を行った症例の立位と歩行を中心に,生体力学(biomechanics)の視点などを取り入れ,「木」と「森」の関係を述べながらプログラムにつなげていきたいと思う.

原著

内外側大腿骨後顆の厚さが人工膝関節全置換術後屈曲可動域に与える影響

著者: 諸澄孝宜 ,   石井義則 ,   野口英雄 ,   武田光宏 ,   佐藤潤香 ,   桜井徹也 ,   鳥谷部真一

ページ範囲:P.654 - P.658

要旨:人工膝関節全置換術(Total Knee Arthroplasty:TKA)後における膝関節可動域(Range of Motion:ROM)について,人工関節の運動を規定する因子としてインプラントの形状が挙げられる.本研究では,TKA前後における内外側大腿骨後顆変化が術後膝関節屈曲ROMに及ぼす影響を検討した.

 TKA施行患者96名(106関節)を対象とし,術前と術後12か月に屈曲ROMと大腿骨後顆の厚さ(Posterior Condylar Offset:PCO)を評価した.術後理学療法では,翌日より全荷重を許可し,術後早期から軟部組織に対してアプローチした.結果は各PCO変化と術後屈曲角度,PCO変化パターンと屈曲可動域の変化率,変化量について有意差は認められなかった.

報告

座位リーチ距離の見積もりに対する加齢の影響

著者: 平井達也 ,   千鳥司浩 ,   渡邊紀子 ,   白木春菜 ,   下野俊哉

ページ範囲:P.659 - P.663

要旨:本研究の目的は,座位における上肢最大到達(以下,リーチ)距離の見積もりに対する加齢の影響を明らかにすることである.健常若年成人30名(若年群:23.2±3.8歳)と健常高齢者27名(高齢群:69.0±7.7歳)を対象に,座位でリハビリテーション用ベッドに対するリーチ距離の見積もり(見積もり値)と実際のリーチ距離の測定(実測値)を行い,見積もり値から実測値を減じた誤差(誤差)と誤差の絶対値(絶対誤差)を年齢により比較した.結果,誤差は群間に有意差はなく,絶対誤差には有意差があった(p<0.05).実測値より見積もり値が大きかった者が若年群で80%,高齢群で78%であったことから見積もり値のほうが小さかった者を除外し検討したところ,誤差,絶対誤差とも高齢群のほうが有意に高値であった(p<0.05).本研究結果から高齢者の座位によるリーチ距離の見積もりは若年者より不正確となることが示された.

お知らせ

第39回理学療法士・作業療法士養成施設等教員講習会/Neurorehabilitation in Okayama, 2013/第9回日本理学療法協会神経理学療法学術集会/東京臨床理学療法研究会第13回研究会

ページ範囲:P.599 - P.627

第39回理学療法士・作業療法士養成施設等教員講習会

日時および会場:

 ①東京地区:2013年1月7日(月)~2月1日(金),国立オリンピック記念青少年総合センター(東京都渋谷区)または日本理学療法士協会関連施設(東京都港区)のいずれか,土曜日のみ専門学校社会医学技術学院(東京都小金井市)

 ②大阪地区:2012年11月5日(月)~11月30日(金),大阪行岡医療大学(大阪府茨木市)

書評

―浅野大喜―「リハビリテーションのための発達科学入門―身体をもった心の発達」

著者: 森岡周

ページ範囲:P.619 - P.619

 親の誰もがわが子の発達を信じている.生まれてきた子どもが成長していくということは,自然が与えてくれた力であるから.しかしながら,何らかのきっかけで発達がうまく進まない子どもも存在する.この子どもたちには目に見える形で運動障害や知的障害が現れる.療法士は目に見える運動や知能を何とか向上させようと,それに着眼した評価・介入を行う.その手段は,いわゆる正常と呼ばれる運動等と比較して,そこから逸脱した要素を列挙し分析するものである.けれども,生物学的なヒトを意識するあまり,この一連のプロセスには,それに関わる療法士自身の影響を含んでいない.

 本書は序章と終章を含め5章で構成されているが,その見出しは「他者との出会い」「自己身体の発見」「他者身体の認識」「他者行動の模倣・再生」「発達科学から発達リハビリテーションへ」である.著者の主張は一貫して,人間の発達は他者との出会いによって生まれ導かれるというものであり,それが膨大な発達科学の原著論文をレビューしながら説明されている.なかでも,身体性や模倣に関する知見に詳しい.子どもが親を模倣し学習するという事実だけでなく,大人が子どもの行動を模倣するといった逆模倣や相互模倣の重要性が説かれ,この関係性は行為の学習だけでなく,他者の意図の類推といった心の理論の獲得や,情動を共有することによる認知やコミュニケーションを促進させる作用を持つことが示されている.親が子に対して興味を示すといった当たり前の行動こそが発達の源である根拠が示されているのである.

―森田秋子(編著),運動・認知・行動研究会(著)―「PT・OT・STのための脳損傷の回復期リハビリテーション―運動・認知・行動からのアプローチ」

著者: 半田一登

ページ範囲:P.627 - P.627

 2012年2月の中医協の会議で,「急性期医療」の“急性期”の意味が医療界で定義づけられていないことが判明し,私は大いに驚いた.ならば,回復期の定義は何なのかという疑問を抱きながら本書を読み始めた.

 本書の中で強く感じられるコンセプトはチーム医療という視点である.3年前にチーム医療推進協議会という組織が誕生し,私は役職の一端を担っている.そこで感じられることは,われわれリハビリテーション(以下,リハビリ)関連職種はリハビリ医療という分野でチーム医療を看板にしているが,意外と閉鎖的な壁の中で終始しているように感じている.臨床現場にあって,理学療法士と言えども,作業療法や言語聴覚療法を十分に理解しているとは言い難いところがある.そのことがつまらぬ混乱を招き,チーム医療の阻害因子になっている.その視点から,理学療法士であっても本書の作業療法や言語聴覚療法の部分も熟読することによって,相互理解を高めるチャンスを本書は提供している.

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次号予告

ページ範囲:P.584 - P.584

「作業療法ジャーナル」のお知らせ

ページ範囲:P.625 - P.625

文献抄録

ページ範囲:P.664 - P.665

編集後記

著者: 内山靖

ページ範囲:P.668 - P.668

 わが国の理学療法士が10万人を超えたとは言え,一般の社会生活を送る上で理学療法に接する機会はそれほど多いとはいえません.そのような中で,高校生にとっては理学療法士や理学療法は身近な存在の一つとなりつつあります.その理由として,キャリア教育によって多くの職業を知る機会が増えたことに加え,自身や友人・家族が怪我や疾病を患った過程で理学療法士と触れ合う機会が増えていることが挙げられます.今や,高校生の100人に1人が理学療法士を志す時代です.

 一昔前は,スポーツ傷害を有する対象者のアスレティックリハビリテーションにかかわりたいとする志望動機をもった高校生が多かったように思います.一方,スポーツ理学療法を職業と考えた場合には脆弱な部分も多く,進路指導を担当する教員や進学塾等から現実の雇用状況に基づいた対応の必要性が指摘された時期もあります.

理学療法ポケットシート

ページ範囲:P. - P.

読者の声募集

ページ範囲:P. - P.

基本情報

理学療法ジャーナル

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1359

印刷版ISSN 0915-0552

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