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入門講座 栄養と理学療法・2
臨床栄養学・栄養不良と運動との関わり
著者: 大原寛之1 東口髙志1 伊藤彰博1
所属機関: 1藤田保健衛生大学七栗サナトリウム 外科・緩和医療学講座
ページ範囲:P.738 - P.745
文献購入ページに移動わが国において,現在高齢者対策は極めて重要な問題の一つである.高齢者ができる限り自立した幸福な生活を送るためには,「元気なお年寄り」である期間を少しでも長く保つことが大切である.その一つとして,高齢者が寝たきりになることを防ぎ,自宅で過ごすことが可能となるように筋力維持,廃用予防のための筋力増強運動が必要となってくる.そこには理学療法を中心にリハビリテーション医学が必要となってくることは言うまでもない.
それらを下支えするものとして,栄養管理は極めて重要である.たとえ筋力維持のために一生懸命理学療法を行っても,十分な栄養管理がなされなければ,患者は疲弊し,かえって害をなすことすらある.通院による理学療法,あるいはホームプログラムなどにおけるコストやマンパワーには限りがあるため,医療資源・介護資源をできる限り有効に利用し,「栄養管理」と「理学療法」が車の両輪のように共同して活用されなければならない.
しかしながら,実際の医療現場では,患者の栄養状態に合わせた理学療法の取り組みがまだまだ不十分なことも多い.その結果として,患者は理学療法の成果が得られないまま,徐々に寝たきり状態へと移行していくことになる.このことは,在宅に戻れない高齢者が,後方施設である療養型病床や老健施設などにあふれてしまうことにつながる.たとえ自宅に戻れたとしても,セルフマネジメントができないために,家族や介護職員の介護量が多くなり,疲弊にも繋がってしまう.これらの問題を解決するためには,最初の入り口すなわち入院当初からの適切な理学療法と,それを成功させるための栄養管理が必要不可欠なのである.
本稿では,高齢者の理学療法の成否に重要である代謝栄養状態について,正しい評価法にはどのようなものがあるかについて言及し,栄養不良の結果引き起こされる不具合にどのようなものがあるかについても述べる.
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