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文献詳細

雑誌文献

理学療法ジャーナル47巻1号

2013年01月発行

文献概要

書評

―トーマス・W・マイヤース(著)/板場英行,石井慎一郎(訳)―「アナトミー・トレイン [DVD付]徒手運動療法のための筋筋膜経線(第2版)」

著者: 藤縄理1

所属機関: 1埼玉県立大学大学院保健医療福祉学研究科リハビリテーション学

ページ範囲:P.60 - P.60

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 『アナトミー・トレイン(原題Anatomy Train―Myofascial Meridians for Manual and Movement Therapists)』は筋筋膜の構造を臨床的および解剖的知見からまとめ上げた書である.筋膜(fascia)は運動の力や張力を伝達するすべての結合組織性の構造物を指し,筋筋膜(myofascia)は筋組織(筋)とそれに付随する結合組織網(筋膜)と結束して分離不可能な性質のものを示している(本文より).本書は筋筋膜の連続体を「アナトミー・トレイン」と名付けた12本の筋筋膜経線(myofascial meridian)の体系として述べている.著者のThomas W. Myersは米国の免許をもつマッサージセラピストで,マッサージとボディーワークセラピストの認定を受けている.彼は,Ida Rolf博士が体系付けた筋筋膜に対する徒手療法であるRolf法の認定療法士であり,長年にわたって臨床と教育に携わっている.

 従来の解剖学は,人体を細分化し,骨格系,筋系,神経系,消化器系,呼吸器系,循環器系,泌尿器系,感覚器系などに分けている.一般的な解剖学の教育は人体の構造を学習するのに,各系について部分から全体を学ぶように行われている.その過程で「全身の複合体」である筋膜系は教育されていない.本書は筋骨格系を骨格とそれを結び付けて支えるゴム紐のような張力材からなる,テンセグリティー(緊張tensionと統合integrityを合わせた造語)構造としてとらえている.骨格をはじめとするあらゆる臓器を張力材として結び付けているものが,全身に連続して分布している筋筋膜であり,12の筋筋膜経線(アナトミー・トレイン)からなる.各トレインは姿勢機能と運動機能に関連しており,本書ではそれらの異常を評価し治療する方法がトレインごとに具体的に述べられている.さらに,「運行中のアナトミー・トレイン」として姿勢や動作の分析方法を紹介し,「構造分析」として,全体的姿勢評価法について述べられている.付録のDVDには「アナトミー・トレイン」の概念,解剖により剖出した各トレインとその説明,姿勢機能と運動機能の評価法と治療手技についての動画と静止が収載されており,書籍のページにはDVD参照マークが示されている.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1359

印刷版ISSN:0915-0552

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