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文献詳細

雑誌文献

理学療法ジャーナル47巻2号

2013年02月発行

文献概要

特集 心理・精神領域の理学療法

身体精神合併症例の理学療法

著者: 仙波浩幸1

所属機関: 1豊橋創造大学保健医療学部理学療法学科

ページ範囲:P.109 - P.117

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精神科理学療法の現状

 精神科病院に勤務する理学療法士は,日本理学療法士協会会員調査で常勤66名22施設1),医療施設(動態)調査・病院報告で常勤換算156.7名となっている2).理学療法を実施している精神科病院は少なく,非常勤のスタッフに頼らざるを得ない少人数職場である.精神科病院は,一般科病院・病棟よりも施設基準や診療報酬は低い基準に据え置かれ,理学療法士以外のスタッフが運動療法を担う職場もあり,人手不足,物品不足で決して満足のいく職場環境ではない.患者の精神心理症状を深く理解し,丁寧な対応が求められる,きわめて人間性が問われる職場でもある.

 精神科病院における理学療法の臨床は,高所からの飛び降り,鉄道への飛び込みなどシビアな受傷機転により多発骨折,脊髄損傷,下肢切断を呈した若年患者や,精神科に長年入院し大腿骨頸部骨折や変形性関節症,脳血管障害を発症した高齢患者などを対象としている.統合失調症や気分障害の精神疾患を併存し,精神科,一般科を問わず多様な疾患の合併,重複障害を有している.精神科病院に勤務する理学療法士は,重篤な身体障害と精神障害の両方に配慮した難しい症例を多く担当している.患者の精神心理症状に振り回され,EBM(evidence based medicine)ないしEBPT(evidence based physical therapy)とはほど遠い業務と感じながらも,関連文献を通読し,職場内外の研修等に参加しながら自己研鑽を積み,臨床に取り組んでいる.

参考文献

1)日本理学療法士協会ホームページ http://www.japanpt.or.jp/03_jpta/about_jpta/05_index.html(2012年11月20日アクセス).なお組織率は2011年度78.4%であった.
2)厚生労働省ホームページ http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/iryosd/10/dl/byoin.pdf(2012年11月20日アクセス)
3)世界理学療法連盟ホームページ http://www.wcpt.org/ioptmh(2012年11月20日アクセス)
4)仙波浩幸,他:精神分裂病の精神病理と治療―身体障害を合併する精神分裂病患者の理学療法時にみられる精神症状.精神経誌102:1121-1122,2000
5)仙波浩幸:身体障害を有する精神分裂病患者の精神症状の尺度化.日本行動計量学会大会発表論文抄録集29:316-319,2001
6)仙波浩幸,他:理学療法時にみられる慢性精神分裂病患者の臨床症状.理学療法科学16:91-95,2001
7)仙波浩幸:身体障害を有する精神分裂病(統合失調症)患者に対する臨床症状評価表の作成―理学療法の視点から.理学療法学29:255-262,2002
8)荒木 毅,他:精神障害者の身体合併症に対する理学療法について.理作療法14:166-171,1980
9)牧野 正,他:精神疾患を合併した大腿骨頸部骨折人工骨頭置換術例.Hip Joint 17:164-168,1991
10)水島繁美:リハビリテーションと精神・心理―精神障害と運動機能不全.総合リハ20:207-211,1992
11)高橋文夫,他:精神障害と理学療法―精神障害を有する脳卒中患者の理学療法.PTジャーナル27:456-461,1993
12)沼尾茲夫:都立松沢病院における合併症治療の現状と問題点―整形外科サイドから.全国自治体病院協議会雑誌297:66-69,1993
13)松岡宏昭,他:精神障害者の飛び降り自殺行為による多発外傷例の検討.骨折16:83-88,1994
14)仙波浩幸:精神障害者へのリハビリテーションの問題点.岩淵正之,他(編著):精神障害者に対する身体合併症診療の実際,pp281-290,新興医学出版,1996.
15)安西信雄:精神障害者リハビリテーションの諸アプローチ.総合リハ24:613-621,1996
16)三木 晃:自殺企図のあった患者の理学療法―分裂病患者を中心.PTジャーナル34:389-394,2000
17)先崎 章:精神分裂病合併例への対応.総合リハ28:1015-1020,2000
18)仙波浩幸:精神分裂病患者の理学療法効果.理学療法学28:63,2001
19)仙波浩幸,他:身体障害を有する精神分裂病患者に対する効果的な理学療法の実施について,平成12年度東京都病産院臨床研究報告書,pp547-551,2001
20)Senba H, et al:Guidelines for physical therapy in physically disabled schizophrenic patients. J Phys Ther Sci 14:15-20, 2002
21)仙波浩幸,他:統合失調症患者の理学療法アウトカム.リハ医学40:S238,2003
22)仙波浩幸:精神疾患患者への理学療法の関わり.理学療法20:1115-1122,2003
23)仙波浩幸:精神障害者のとらえ方と理学療法アプローチの効果.PTジャーナル39:947-955,2005
24)仙波浩幸:精神疾患.丸山仁司(編):系統理学療法学―神経障害系理学療法学,pp173-189,医歯薬出版,2005
25)Precin P:Influence of Psychosocial Factors on Rehabilitation. O'Sullivan SB, et al:Physical Rehabilitation, 5th ed, pp 27-64, FA Davis, Philadelphia 2006
26)Danide ER:Psychocognical Aspects of Rehabilitation. WR Frontera, et al:DeLisa's Physical Medicine and Rehabilitation, 5th ed, pp387-415, Lippincott Williams & Wilkins, Philadelphia 2010
27)先崎 章:精神医学・心理学的対応リハビリテーション,医歯薬出版,2011
28)安西信雄,他(編):精神疾患の治療と看護,2003,南江堂

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1359

印刷版ISSN:0915-0552

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