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文献詳細

雑誌文献

理学療法ジャーナル47巻5号

2013年05月発行

文献概要

ひろば

理学療法士発達論に基づいた教育方法の開発に向けて

著者: 池田耕二1

所属機関: 1宝持会池田病院総合リハビリテーションセンター

ページ範囲:P.423 - P.423

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 近年の理学療法士教育は,養成校における学内教育や学外で行われる臨床実習教育,新人教育,専門分野別における専門教育などに多くの問題を抱えてきた.そのため,学内教育ではさまざまな工夫が実践され,臨床実習教育ではクリニカル・クラーク・シップなどが導入されてきた.また新人教育や生涯教育については,新人教育プログラムや認定・専門理学療法士制度が日本理学療法士協会によって開始されている.このように,理学療法士教育は少しずつ発展をみせているが,ここで改めて理学療法士の成長や発達を考えてみると,それは医学などの知識の獲得や治療技術の向上だけでは説明できないことがわかる.なぜなら,実践の中で育まれる「考え方」や「価値観」,「理学療法哲学」など,内面の変化も理学療法士としての重要な成長や発達の一部だからである.成長と発達は厳密には区別できないが,おおむね,成長は時間に比例した変化として,発達は時間に比例しない変化として筆者はとらえている.そこで筆者は,内面の変化を理学療法士の発達と位置付けることにしたい.では,内面はどのようにして育まれるのだろうか? おそらくそれは,患者との深いかかわりや熟練医療スタッフなどからの指導,施設や地域文化との触れ合いなどによって育まれるものと推察される.そして,育まれた内面はやがて理学療法士の視野を広げ,洞察力を高め,理学療法に対する新しい気づきや価値観を創出させることになる.さらには理学療法士の行動をも変化させ,新しい技術などを生み出すことになると考えられる.このように,理学療法の発展には,理学療法士の発達が必要不可欠と言える.

 しかし,近年急速に変化する医療現場では,入院期間の短縮などによって患者と深くかかわる機会は少なくなっている.さらには熟練理学療法士の不足や業務の多忙さなども重なって,実際のところ理学療法士には内面を育む時間が少なくなっている.そのため,例えば「今後,理学療法はどう発展すべきか?」などといった議論に対しては,「今後,理学療法はどうなるだろう?」と受け身でとらえることが多くなり,自らが積極的に「このようにすべきだ」と主張することが少なくなっている.こうした状況を放置しておくと,理学療法士は新たな気づきや価値観を創出しなくなり,理学療法の発展は停滞してしまう.したがって,現場には内面を育む教育が必要と考えられる.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1359

印刷版ISSN:0915-0552

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