icon fsr

文献詳細

雑誌文献

理学療法ジャーナル47巻5号

2013年05月発行

文献概要

症例報告

浅指屈筋腱弓における正中神経障害が疑われた手指の運動時痛を呈した症例の理学療法経験

著者: 猪田茂生1 林典雄2 佐藤昌良3

所属機関: 1伊賀市立上野総合市民病院リハビリテーション課 2中部学院大学リハビリテーション学部理学療法学科 3伊賀市立上野総合市民病院整形外科

ページ範囲:P.457 - P.461

文献購入ページに移動
要旨:浅指屈筋腱弓における正中神経障害の発生頻度は低いとされており,運動療法の効果を示した報告は見当たらない.今回,上腕骨近位端骨折に対する三角巾固定除去後に,安静時の手指のしびれと把持動作によって出現する耐え難い手指の運動時痛を強く訴えた症例を経験した.理学所見を主体とした評価の結果,浅指屈筋腱弓における正中神経障害が強く疑われ,その原因として,持続的な筋攣縮,外傷後の浮腫の存在,関節運動の欠如に伴う一過性の拘縮が考えられた.周辺組織を弛緩させ,解剖学に沿った神経の伸張と弛緩の反復によって癒着を剝離することにより,症状の軽減が得られると考えた.浅指屈筋のリラクゼーションとストレッチング,正中神経の滑走運動を実施した結果,症状の改善が得られた.解剖学的構造上,筋の攣縮が神経絞扼に関与することが予想される場合,理学所見を中心とした的確な機能評価とともに,適切な運動療法の実施が症状改善に有効と考えられた.

参考文献

1)宮島良博,他:非外傷性前骨間神経麻痺の病態と治療.関節外科21:35-43,2002
2)佐藤達夫,他:リハビリテーション解剖アトラス,pp166-167,医歯薬出版,2006
3)長野 昭:絞扼性神経障害―肘部でのentrapment neuropathy-回内筋症候群,前骨間神経麻痺,後骨間神経麻痺.関節外科11:1565-1570,1992
4)田尻康人,他:回内筋症候群.整・災外51:513-518,2008
5)玉井和夫,他:上肢の神経支配と末梢神経損傷.平澤泰介(編):新 外来の整形外科学,pp27-42,南山堂,1999
6)堀内行雄:整形外科医のための筋・神経疾患診療マニュアル―末梢神経疾患.MB Orthop 9:63-72,1996
7)長野 昭:絞扼性神経障害 総論.骨・関節・靱帯7:851-857,1994

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1359

印刷版ISSN:0915-0552

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?