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特集 脳卒中理学療法のシームレス化にむけて
シームレスな脳卒中理学療法のための視点―病院と地域,その共通点と相違点
著者: 津田陽一郎1
所属機関: 1社会医療法人全仁会倉敷平成病院リハビリテーション部
ページ範囲:P.479 - P.486
文献購入ページに移動はじめに
リハビリテーション医療は急性期-回復期-生活期と機能分化され,脳卒中においても発症直後から一貫した流れでリハビリテーションを行うことが進められている.しかしながら,時期の区分については科学的な根拠がないとされ1),むしろ機能分化の流れは本邦の社会情勢の変化のなかで,財政と医療福祉の折り合いをどのようにつけていくのかという財源コントロール的な意味合いも強い.
筆者が所属している法人は,急性期病棟から回復期リハビリテーション病棟,介護老人保健施設や通所,訪問リハビリテーション等,介護保険サービスを含むケアミックスの組織となっており,各病棟,施設それぞれに専属の理学療法士を配置している.このように,時代の流れに即し,組織が成長拡大するとともに業務の効率化,円滑化を推進していくなかで,運営や経営上の観点から組織内においても機能を分化し,各セクションに臨床上の成果と実績が求められている.
病期が移るたびに次の段階に向け情報を伝達するが,その際,当院では同じ組織内で顔見知りの各期のスタッフ同士が現場で直接申し送りやカンファレンスを行えるため,口頭にて議論を交えながら,具体的な情報交換,共有が可能となっている.しかし,考え方に隔たりがあるのも事実である.さらに,病院・施設が異なる組織間においては,地域連携クリティカルパスなどを活用した,文面上の情報交換が主とならざるを得ない.シームレスな理学療法が難しい点は,組織,理学療法士が異なると,それぞれの経験や価値観によって患者の診かたが変わることに加え,病期によっても評価や治療戦略の視点に違いが生じることにある.その違いを補塡するためには,互いの視点を共有し,個々の理学療法士がどのような考えで患者と接しているのかを理解することが重要である.
本邦の理学療法の歩みを遡ってみると,1990年代までは現在のように明確に機能分化しておらず,当時は発症直後から退院後の外来,訪問に至るまで臨床現場(以下,臨床)のなかで経験することができた.しかしながら,機能分化が明確になりだした2000年以降,個々の理学療法士が一部の病期のみを集中的に経験することになり,以前のようにさまざまな病期の脳卒中者を経験する機会が少なくなってきている.
理学療法が必要となる脳卒中を含めた中枢神経系疾患患者は,多くの場合障害が残存する.そのため,他の運動器疾患と異なり,患者のみならずその家族を含め,人生の方向性を大きく変えざるを得ない状況の者が多い.障害をもっても主体的に自己実現に向けた人生を再構築していくことを支援するわれわれ理学療法士は目先の状況にとらわれず,病期全体を通した視点と患者の生活に思いを馳せる感性が必要である.
リハビリテーションの機能分化に基づき,シームレス化,地域連携が各病院,施設間において意識されつつある.そのなかで,理学療法(士)はどのような位置付けにあり,連携していくべきかが論じられている.シームレス化が求められるなか,地域連携クリティカルパスなどのシステムに沿って,各病期の理学療法士が各々の役割を担いながらもその先を見据えた理学療法を展開していくことが求められている.こうした要請に対し,臨床の理学療法士はどのような視点をもたなければならないのだろうか? 本稿では,現状の診療報酬を勘案しつつも,脳卒中急性期から回復期,そして生活期におけるシームレスな理学療法のあり方について述べる.
リハビリテーション医療は急性期-回復期-生活期と機能分化され,脳卒中においても発症直後から一貫した流れでリハビリテーションを行うことが進められている.しかしながら,時期の区分については科学的な根拠がないとされ1),むしろ機能分化の流れは本邦の社会情勢の変化のなかで,財政と医療福祉の折り合いをどのようにつけていくのかという財源コントロール的な意味合いも強い.
筆者が所属している法人は,急性期病棟から回復期リハビリテーション病棟,介護老人保健施設や通所,訪問リハビリテーション等,介護保険サービスを含むケアミックスの組織となっており,各病棟,施設それぞれに専属の理学療法士を配置している.このように,時代の流れに即し,組織が成長拡大するとともに業務の効率化,円滑化を推進していくなかで,運営や経営上の観点から組織内においても機能を分化し,各セクションに臨床上の成果と実績が求められている.
病期が移るたびに次の段階に向け情報を伝達するが,その際,当院では同じ組織内で顔見知りの各期のスタッフ同士が現場で直接申し送りやカンファレンスを行えるため,口頭にて議論を交えながら,具体的な情報交換,共有が可能となっている.しかし,考え方に隔たりがあるのも事実である.さらに,病院・施設が異なる組織間においては,地域連携クリティカルパスなどを活用した,文面上の情報交換が主とならざるを得ない.シームレスな理学療法が難しい点は,組織,理学療法士が異なると,それぞれの経験や価値観によって患者の診かたが変わることに加え,病期によっても評価や治療戦略の視点に違いが生じることにある.その違いを補塡するためには,互いの視点を共有し,個々の理学療法士がどのような考えで患者と接しているのかを理解することが重要である.
本邦の理学療法の歩みを遡ってみると,1990年代までは現在のように明確に機能分化しておらず,当時は発症直後から退院後の外来,訪問に至るまで臨床現場(以下,臨床)のなかで経験することができた.しかしながら,機能分化が明確になりだした2000年以降,個々の理学療法士が一部の病期のみを集中的に経験することになり,以前のようにさまざまな病期の脳卒中者を経験する機会が少なくなってきている.
理学療法が必要となる脳卒中を含めた中枢神経系疾患患者は,多くの場合障害が残存する.そのため,他の運動器疾患と異なり,患者のみならずその家族を含め,人生の方向性を大きく変えざるを得ない状況の者が多い.障害をもっても主体的に自己実現に向けた人生を再構築していくことを支援するわれわれ理学療法士は目先の状況にとらわれず,病期全体を通した視点と患者の生活に思いを馳せる感性が必要である.
リハビリテーションの機能分化に基づき,シームレス化,地域連携が各病院,施設間において意識されつつある.そのなかで,理学療法(士)はどのような位置付けにあり,連携していくべきかが論じられている.シームレス化が求められるなか,地域連携クリティカルパスなどのシステムに沿って,各病期の理学療法士が各々の役割を担いながらもその先を見据えた理学療法を展開していくことが求められている.こうした要請に対し,臨床の理学療法士はどのような視点をもたなければならないのだろうか? 本稿では,現状の診療報酬を勘案しつつも,脳卒中急性期から回復期,そして生活期におけるシームレスな理学療法のあり方について述べる.
参考文献
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