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雑誌目次

雑誌文献

理学療法ジャーナル47巻7号

2013年07月発行

雑誌目次

特集 頸肩腕障害と理学療法

EOI(essences of the issue)

ページ範囲:P.569 - P.569

 今月は,理学療法の対象として重要な頸肩腕部の障害にスポットを当てた.その障害は多彩である.痛みやしびれなどの異常感覚は多岐にわたり,原因が定かではないことも多い.頸肩腕症候群はその代表的疾患である.近年,多くみかけるようになった頸椎症性脊髄症や身近に存在する五十肩も実は難解な対象疾患である.それらの解決の糸口を探してみた.また,頸肩腕部だけにとどまらない複合性局所疼痛症候群(CRPS type 1)については,その全般的基礎から治療に至るまで解説に紙面を割いた.

頸肩腕症候群の病態と治療

著者: 舟木一夫

ページ範囲:P.571 - P.580

はじめに

 頸肩腕症候群とは,頭頸部から肩甲帯,上肢にかけての痛み,しびれ,脱力感,冷感などの症状を起こす疾患群につけられた総括的名称である.1955年に飯野らにより提唱され,同年の日本医師会雑誌に報告されている1).本稿では,広義の頸肩腕症候群全般の発症メカニズムと基本的な治療方針について総論的に紹介する.また,狭義の頸肩腕症候群に加え,外傷性頸部症候群,胸郭出口症候群について説明する.

(狭義の)頸肩腕症候群の理学療法

著者: 赤羽根良和 ,   林典雄

ページ範囲:P.581 - P.588

はじめに

 頸肩腕障害とは,頸部,肩,上肢,肩甲帯部にかけての疼痛や異常感覚を呈する症侯群であり1),整形外科を受診する患者の中で頸肩腕障害が占める割合は,初診時の21%と報告されている2).病因は,頸部や肩甲帯周囲における軟部組織の解剖学的・機能学的弱点を背景に,生活環境,外傷性,退行性変化などの要因が起因して発生するとされている3)

 また,広義の頸肩腕障害の中から,画像所見や理学所見により原因が特定できる疾患(頸椎椎間板ヘルニア,頸椎症,胸郭出口症候群,肩関節周囲炎)を除外したものが狭義の頸肩腕障害と定義されている3).デスクワークを中心とする職業や荷物作業従事者などで発症頻度が高く,最近では外傷性頸部損傷後4,5)や機能性リウマチ疾患である線維筋痛症6)が注目されている.

 症状の発症が,神経・脊髄損傷,頸椎疾患,リウマチ性疾患,内科的疾患を基盤としているケースでは,理学療法士が介入しても治療効果を期待することは難しい.しかし,筋肉への過負荷や疲労により肩甲帯や脊柱の機能障害を引き起こしているケースでは,関節機能や姿勢の改善を目的とした運動療法の実施により,症状の回復が期待できる可能性は高く,理学療法士の能力を発揮できる領域と考えられる.

 本稿では,狭義の頸肩腕障害に限局し,その発症機序を ① 腕神経叢の牽引性,② 姿勢保持筋性,③ 混合性の面からとらえ,解説する.

 なお,外傷性頸部損傷では頸椎の前彎位を支持している頸半棘筋,多裂筋7,8)などの損傷が生じ,また,線維筋痛症では原因は解明されていないものの全身に疼痛や疲労感などが生じ,両疾患ともに結果的に不良姿勢を呈することが多いため,このようなケースも運動療法の適応とする.

頸椎症と理学療法

著者: 大野博司 ,   金京範 ,   佐浦隆一

ページ範囲:P.589 - P.595

はじめに

 理学療法対象患者には,頸椎の何らかの障害に伴いしびれや疼痛,運動麻痺などの症状を呈する患者も少なくない.しかし,その原因や症状,経過により治療方針が異なるため,幅広い視野に立って理学療法を行う必要がある.

 本稿では,頸椎症の原因や症状,経過などを踏まえた評価と治療を紹介するとともに,理学療法の有用性と可能性について解説する.

五十肩と理学療法

著者: 村木孝行

ページ範囲:P.596 - P.601

はじめに

 一般的に五十肩とは,50歳前後の中高年が一定の期間だけ肩の疼痛により腕を動かせなくなる病態を示す.五十肩は,肩関節周囲組織に炎症が起きる病態の総称として用いられている「肩関節周囲炎」との違いが明確でなく混乱することが多かったが,画像診断の進歩により,鑑別が肩関節周囲炎とほぼ同義語として用いられている.また,五十肩は臨床症状の点から海外でfrozen shoulderやadhesive capsulitisと呼ばれる疾患と一致し,同様のものとして考えられている.本稿ではこれらすべてを含めて五十肩とする.

 五十肩の罹患期間には個人差があるが,多くは時間が経てば症状が改善する疾患であるため放置していたり,市販薬やサポーターなどのみで対応していたりすることも少なくない.一方,五十肩患者が医療機関等を受診するときは症状が重度になったときや,疼痛がなかなか改善しないときであることが多い.したがって,医療機関で理学療法を行う主な対象は,放置していても治癒する軽症例よりも,介入しなければ改善しない重症例となる.腱板断裂のような治癒が期待できない他の肩疾患との比較として「治ってこその五十肩」と言われるが,必ずしも元のように戻るとは限らず手術適応となることもある.それ故に,漠然と理学療法を行うのではなく,病期に合わせて適切に介入できるよう努めなければならない.本稿では五十肩の病態を解説し,必要な評価とどのように治療を決定すべきかについて述べる.

複合性局所疼痛症候群(CRPS Type 1)と理学療法

著者: 植田一幸

ページ範囲:P.602 - P.608

はじめに

 複合性局所疼痛症候群(complex regional pain syndrome:CRPS)とは,かつて反射性交感神経性ジストロフィー(reflex sympathetic dystrophy:RSD),あるいはカウザルギーと呼ばれてきた疼痛症候群で,骨折や神経損傷などの外傷,手術,または脳血管疾患後に引き続いて発症し,原因に見合わない激しい痛みや痛覚過敏などの感覚異常や,皮膚温や発汗の異常などの自律神経系障害,浮腫,関節拘縮,筋力低下や骨萎縮などの運動機能障害を伴う難治性の疾患である.CRPSの治療には早期診断と早期治療が特に重要であるが,臨床で治療にあたる理学療法士として難渋するケースが多い.

 本稿ではCRPS全般について,評価および総合的な治療と理学療法の具体的な進め方について,症例を提示しながら解説する.

とびら

人とのつながり,そして成長

著者: 森田伸

ページ範囲:P.567 - P.567

 私は2013年3月末に大学院博士課程を修了しました.病院業務を行いながら研究に取り組み論文を作り上げましたが,そこには研究者の基本姿勢を指摘していただいた指導教員である医師の存在がありました.最初は思うような研究ができていませんでしたが,「研究はシンプルに」との掛け声で,厳しさとやさしさをもった医師の指導によって研究の視点が大きく変化しました.また,「数年先を見据えてキーワードをもち研究を行いなさい」とアドバイスをいただくこともあり,その一言一句が私の心に突き刺さり,大学院の過程で成長することができました.

 当然のことですが,人間は一人では何もできません.自分なりの考え方,行動などは,さまざまな人とのかかわりから生み出されていきます.これまでの人生の中で,誰もが感化された人の存在があったと思います.オリンピック金メダリストである競泳男子の北島康介選手がかつて師事したコーチのもとで現役を続けるというニュースがあり,「水泳人生の締めくくりはそのコーチの指導で終えたい.一年一年を最後と思ってやる」と語っておられました.そのコーチとは中学生のころに出会い,水泳人生において成長と結果を生み出す偉大な存在になっていたと思います.

入門講座 歩行のバイオメカニクス・3

装具歩行のバイオメカニクス

著者: 大畑光司

ページ範囲:P.611 - P.620

はじめに

 歩行障害に対して装具療法を行う場合,装具による利得を明確にすることが求められる.そのためには装具の役割とその基本的な運動学的影響についての知識が必須である.本稿では,歩行に必要なバイオメカニクスについて再考し,そのうえでさまざまな種類の装具の中から適切なものを選択するために,「歩行装具に求められる機能」という視点でまとめてみたい.

学会印象記

―第90回日本生理学会―リハビリテーション医学における生理学の必要性

著者: 本田祐一郎

ページ範囲:P.621 - P.621

 2013年3月27~29日の3日間,第90回日本生理学会大会が東京のタワーホール船堀で開催され,会期中にはリハビリテーション医学を主題に置いた2つのシンポジウムが企画されました.

 初日には日本理学療法士協会連携シンポジウムとして「理学療法と痛みの治療―その生理的メカニズム」というテーマのもと,世界規模で研究が進められている「痛み」について活発な議論が交わされました.その中でも,沖田実先生(長崎大学大学院)や松原貴子先生(日本福祉大学)のご講演では,慢性痛に対するリハビリテーションの有効性を裏付けるような多くのデータが提示されていました.

甃のうへ・第4回

オン・オフの切り替えで,健康維持を

著者: 小山理惠子

ページ範囲:P.622 - P.622

皆さんはどんなきっかけで今の仕事に就きましたか?

 私は高校生のときにリハビリテーション分野の仕事に就くことを決めましたが,振り返れば子どものころの経験が潜在的にあったように思います.まだ5~6歳のころ,共働きの両親に代わって諸々の面倒をみてくれていた母方の祖母が横断歩道で交通事故に遭いました.数日間の危篤状態を経て,意識が戻り幸い一命は取り留めましたが,全身に多発骨折を認め,手術をしたものの全介助の入院生活となり,主治医から歩行の再獲得は難しいと告げられました.

1ページ講座 理学療法関連用語~正しい意味がわかりますか?

簡易上肢機能検査―simple test for evaluating hand function:STEF

著者: 生野公貴

ページ範囲:P.623 - P.623

 STEFとはsimple test for evaluating hand function(簡易上肢機能検査)の略であり,金子ら1)により開発された客観的かつ簡単に上肢の機能的な動作能力を把握するための評価法である.STEFは10種類のサブテストから構成されており,検査台上でさまざまな形の物品へのリーチ,把持,ピンチ,操作が含まれた課題を遂行する.各サブテストに要した時間を10段階の得点プロフィール欄に従って採点し,左右別に合計点を算出する.最高得点は100点である.この検査の長所は,上肢機能,特に動きの速さが数値化されることで客観的に評価が可能な点である.また,標準化された検査キット(簡易上肢機能検査ステフ,SOT-3000,酒井医療株式会社)により,簡便に短時間(約20分)で検査が可能である.

医療器具を知る

脳室・脳槽ドレーン

著者: 小幡賢吾 ,   畑賢俊 ,   井並美智子

ページ範囲:P.627 - P.627

 脳室・脳槽ドレーンは,脳脊髄液や血液の排出と頭蓋内圧管理を目的に使用される.脳室ドレーンはくも膜下出血,脳室内出血を伴う脳出血,脳腫瘍に伴う水頭症などが対象となり,脳槽ドレーンはくも膜下出血時に生じる血性の脳脊髄液を排出する際に用いられる.

理学療法臨床のコツ・38

学生のやる気を引き出すコツ―行動分析学を用いたアプローチ

著者: 山崎裕司 ,   稲岡忠勝

ページ範囲:P.624 - P.626

はじめに

 教育現場でうまくいかない状況が増えているのは間違いない.なかでもやる気のない学生や社会性のない学生に苦慮している教員は多いのではないだろうか.本稿では,筆者らが試みている行動分析学的な対処方法について紹介する.

プログレス

ブレイン・マシン・インターフェース―Brain-Machine Interface

著者: 平田雅之 ,   吉峰俊樹

ページ範囲:P.629 - P.634

はじめに

 Brain-Machine Interface(BMI)とは,脳とコンピュータの間で信号をやりとりして外部機器を操作したり,感覚情報を得たりする技術であり,種々の疾患による身体機能障害に対する機能代行技術として期待されている.本稿では,BMIについて,その萌芽期から最新の研究成果まで概説する.

講座 理学療法診療ガイドライン・4

心大血管疾患の理学療法診療ガイドライン

著者: 内山覚

ページ範囲:P.635 - P.641

診療ガイドライン作成の背景

 1990年ごろからevidence based medicine(EBM)の重要性が強調され,根拠に基づいた治療を展開することが期待されている.エビデンスとは,疫学的手法により集められた質の高い一般論であり,治療方針を決定する際に参考にされるべきものである.理学療法の分野では,論理的に正論と思われる治療の組み立てや,実施後に結果を評価することで治療介入の有効性を示す方法が伝統的に用いられており,今なお広く普及している.そのこと自体は間違いではないが,中には有効性が明確でないままに続けられている治療介入も存在し,漫然と続けられることは厳に慎まなければならない.

 2011年に公益社団法人日本理学療法士協会主導により作成された診療ガイドラインは16の領域を含んでおり,共通のエビデンスレベルと推奨グレードを基本として作成されている.内容には,理学療法介入のほかに評価指標,用語解説が含まれており,これらは初学者向けに解説の意味を含めて記載されている.現行のリハビリテーションにおける診療体系は,疾患別リハビリテーションである.脳血管疾患,運動器疾患,呼吸器疾患に並び心大血管疾患が項目の1つとして挙げられており,この領域における理学療法の重要性はますます高まってきている.

臨床実習サブノート 理学療法をもっと深めよう・4

運動器疾患の背部痛を理解する

著者: 福井勉

ページ範囲:P.643 - P.648

背部痛を有する疾患は幅広く存在する

 日本理学療法士協会理学療法診療ガイドラインによると,背部痛(back pain)とは,上背部ならびに腰背部の疼痛を主訴とするもののうち,原因が明らかでなく,神経学的な変化がみられず,さらに画像所見において明らかな器質的変化を認めないものの総称1)であるとされている.いわゆる力学的因子以外に,非身体的因子(精神・社会経済的問題)の評価が必要であることは特筆すべきである.

 ただ多種類の評価が存在し,非特異的なものが理学療法の対象になることも多く,その意味からも国内での有益なevidenceに欠けているのが現状である.またいわゆる背部の疼痛を有する疾患は幅広く,違和感を訴える場合も多い.頸部疾患や呼吸器,循環器,消化器などからも背部痛を訴えることがある.その全体を扱うのは困難であるため,本論では運動時の動作分析とそのポイントから,運動器疾患のなかでも腰痛の代表である腰椎屈曲時の疼痛と腰椎伸展時の疼痛について述べる.両者とも運動に特徴があり,運動範囲が過剰になっている部位と逆に不足している部位が連結したような特徴を有する.また主訴は腰部あるいは下肢にあるが,腰部はいずれも過剰運動を呈していることが多い.安定性が欠落した腰部においては深層筋活動が低下し,逆に浅層筋活動が過剰になっていることが多い.また過剰活動の原因には股関節可動性低下が深く関与している.

症例報告

小脳性認知情動症候群を呈する慢性期重度右片麻痺患者が歩行を獲得した1例―長下肢装具を用いたアプローチ

著者: 廣谷和香 ,   吉尾雅春 ,   橋本康子

ページ範囲:P.649 - P.654

要旨:今回,小脳性認知情動症候群および重度右片麻痺を呈し自宅復帰困難であった慢性期のくも膜下出血患者に対し,長下肢装具を用いた装具療法を実施した.結果,入院時は歩行不可であったのに対し,麻痺側下肢の支持性向上と内反尖足が抑制され,5か月後には短下肢装具での歩行を獲得した.また,全失語や遂行機能障害・情動抑制障害によるADLでの動作手順の未定着に対し,下肢装具の使用にて患者の内的環境を整え,前頭連合野の働きを整理し,手順の定着化を図った.それに伴って,トイレ動作などADLでの介助量軽減につながり,入院9か月後に患者および家族の希望であった自宅退院へ至った.

短報

温熱負荷による廃用性筋萎縮進行抑制効果―ラットヒラメ筋の長軸方向部位間での比較

著者: 宮地諒 ,   山崎俊明 ,   稲岡プレイアデス千春

ページ範囲:P.655 - P.658

要旨:本研究は,温熱負荷による廃用性筋萎縮進行抑制効果の筋長軸方向部位差と筋血流量との関連を検証することを目的とした.加えて,臨床応用可能な温熱負荷方法を検討した.対象は8週齢のWistar系雄ラットとし,これらを対照群(CON,n=9),1週間の後肢懸垂を行う群(HS,n=10),後肢懸垂とともに毎日1回の温熱を与える群(HSH,n=10)に振り分けた.温熱は市販カイロにより60分間,下腿深部温を38℃で負荷した.右側ヒラメ筋を筋線維横断面積(CSA),左側ヒラメ筋を筋血流量の測定に用いた.結果,CSAがCON,HSH,HSの順に高値を示し,市販カイロでの温熱負荷が筋萎縮に対して抑制効果を認めた.部位別比較ではHSH,HSは近位部優位の萎縮が生じたが,温熱による萎縮抑制効果は近位部ほど大きかった.しかし,筋血流量はHSHのみ遠位部が近位部と比べて高値であり,温熱負荷による筋血流量の変化と萎縮抑制効果との関連は少なく,他の因子の関与が示唆された.

お知らせ

「姿勢保持の評価とその技術」理学療法士講習会(応用編)/東京臨床理学療法研究会第14回研究会/第40回理学療法士・作業療法士・言語聴覚士養成施設等教員講習会/第1回新潟医療福祉大学・夏期骨学セミナー/第5回重症心身障害理学療法研究会セミナー

ページ範囲:P.580 - P.658

「姿勢保持の評価とその技術」理学療法士講習会(応用編)

日 時:2013年9月21日~22日

会 場:秋田大学大学院医学系研究科保健学専攻(秋田県秋田市本道1-1-1)

書評

―奈良 勲(シリーズ監修),鶴見隆正・隆島研吾(編)―「《標準理学療法学 専門分野》日常生活活動学・生活環境学 第4版」

著者: 上岡裕美子

ページ範囲:P.628 - P.628

 理学療法実践は,身体運動機能・動作の改善のみではなく,対象者の日々の生活における活動・行為のレベルで向上もしくは変化がみられて初めて,対象者やその家族にとって意味をもつのではないだろうか.2001年にWHOから国際生活機能分類(International Classification of Functioning, Disability and Health:ICF)が発表され,心身機能・身体構造,活動,参加の各構成要素と環境因子などとの相互作用性が示され,その概念は広く認識されてきた.

 近年,わが国では超高齢社会を迎え,高齢者・障害者の在宅生活を支えるために,自立と生活の質を追求し,医療・保健福祉のさまざまなサービスが一体的に提供されることが求められている.このようななかで,理学療法士にとっても「生活」の視点がより重要となってきた.身体運動機能・動作だけでなく,日々の生活における活動・行為に対してどのように関与できるか,理学療法のあり方が問われている.そのような時期だからこそ,『日常生活活動学・生活環境学 第4版』が発行されたことに,大いに意義があると思う.

―山口美和(著)―「PT・OTのためのこれで安心 コミュニケーション実践ガイド」

著者: 中山孝

ページ範囲:P.659 - P.659

 「見事なコミュニケーション・テキストを書いてくれて,本当にありがとう」と,著者の山口美和氏に素直に伝えたい.私は著者と同じ専門学校に勤務していた時代,共に学生教育に悪戦苦闘した同僚教員として,著者がこの素晴らしい本を世に送り出したことへの称賛を惜しまない.

 本書は「コミュニケーション臨床応用学」と呼べるほど,首尾一貫した理念と体系に基づいて記述されている.理学療法・作業療法領域では,往々にして用語の定義があいまいな書籍が多いが,本書は登場する用語をまず明確に定義し,次に論点を展開して解説しているため,読者にとって非常に理解しやすく,著者のメッセージがダイレクトに伝わってくる.普段の何気ない会話の背景に存在する確固たる「コミュニケーション理論」が根底にあることを読者に気づかせてくれる.このような観点から眺めると,本書は科学的理論に裏打ちされた実践書と言える.

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次号予告

ページ範囲:P.595 - P.595

「作業療法ジャーナル」のお知らせ

ページ範囲:P.626 - P.626

文献抄録

ページ範囲:P.660 - P.661

編集後記

著者: 吉尾雅春

ページ範囲:P.664 - P.664

 今年2013年は大雪に始まり,西日本の歴史的に早い桜の開花と北日本の歴史的に遅い桜の開花があり,北海道では史上最も遅い降雪があり,そしてさらに平年よりも2週間ほど早い梅雨入り宣言があった途端に晴天続きで,各地で水不足が懸念されています.この地球はどうなっていくのでしょうか?

 梅雨は北海道を除く地域でみられるものですが,西日本の梅雨と東日本の梅雨とは発生のメカニズムが違います.簡単に言うと,長江気団と熱帯モンスーン気団との衝突で西日本の前線が,オホーツク海気団と小笠原気団との衝突で東日本の前線ができ,それがつながって数千kmの梅雨前線になるのだそうです.梅雨前線の発生には南北に分かれる気団の一因になっているヒマラヤ山脈の存在が大きいのです.地球の営みは凄いですね.まさに生き物だと思います.その地球が今,息絶え絶えになっているのかもしれません.

読者の声募集

ページ範囲:P. - P.

基本情報

理学療法ジャーナル

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1359

印刷版ISSN 0915-0552

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