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文献詳細

雑誌文献

理学療法ジャーナル47巻7号

2013年07月発行

文献概要

特集 頸肩腕障害と理学療法

(狭義の)頸肩腕症候群の理学療法

著者: 赤羽根良和1 林典雄2

所属機関: 1さとう整形外科 2中部学院大学リハビリテーション学部

ページ範囲:P.581 - P.588

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はじめに

 頸肩腕障害とは,頸部,肩,上肢,肩甲帯部にかけての疼痛や異常感覚を呈する症侯群であり1),整形外科を受診する患者の中で頸肩腕障害が占める割合は,初診時の21%と報告されている2).病因は,頸部や肩甲帯周囲における軟部組織の解剖学的・機能学的弱点を背景に,生活環境,外傷性,退行性変化などの要因が起因して発生するとされている3)

 また,広義の頸肩腕障害の中から,画像所見や理学所見により原因が特定できる疾患(頸椎椎間板ヘルニア,頸椎症,胸郭出口症候群,肩関節周囲炎)を除外したものが狭義の頸肩腕障害と定義されている3).デスクワークを中心とする職業や荷物作業従事者などで発症頻度が高く,最近では外傷性頸部損傷後4,5)や機能性リウマチ疾患である線維筋痛症6)が注目されている.

 症状の発症が,神経・脊髄損傷,頸椎疾患,リウマチ性疾患,内科的疾患を基盤としているケースでは,理学療法士が介入しても治療効果を期待することは難しい.しかし,筋肉への過負荷や疲労により肩甲帯や脊柱の機能障害を引き起こしているケースでは,関節機能や姿勢の改善を目的とした運動療法の実施により,症状の回復が期待できる可能性は高く,理学療法士の能力を発揮できる領域と考えられる.

 本稿では,狭義の頸肩腕障害に限局し,その発症機序を ① 腕神経叢の牽引性,② 姿勢保持筋性,③ 混合性の面からとらえ,解説する.

 なお,外傷性頸部損傷では頸椎の前彎位を支持している頸半棘筋,多裂筋7,8)などの損傷が生じ,また,線維筋痛症では原因は解明されていないものの全身に疼痛や疲労感などが生じ,両疾患ともに結果的に不良姿勢を呈することが多いため,このようなケースも運動療法の適応とする.

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1359

印刷版ISSN:0915-0552

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