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文献詳細

雑誌文献

理学療法ジャーナル47巻8号

2013年08月発行

文献概要

臨床実習サブノート 理学療法をもっと深めよう・5

脳血管疾患患者の疼痛を理解する

著者: 木村圭佑1 太田喜久夫2

所属機関: 1医療法人松徳会花の丘病院リハビリテーション科 2藤田保健衛生大学医療科学部リハビリテーション学科

ページ範囲:P.743 - P.748

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はじめに

 筆者には,理学療法士の免許取得後10年以上経過した今でも,非常に記憶に残っている症例がいる.それは1年目に勤務していた通所リハビリテーションにて,回復期リハビリテーション病棟退院直後の脳血管疾患患者を担当したときのことである.麻痺側上肢に触れるだけで激しい痛みを訴える患者に対し,どのように対処すればよいのかわからず,ただ困惑し理学療法どころではなかった.その後,患者はある日を境にまったく痛みを訴えなくなった.当時はその原因がまったくわからず,自然治癒以外に説明ができなかった.今振り返れば,視床痛などの中枢性疼痛や複合性局所疼痛症候群(complex regional pain syndrome:CRPS)type Ⅰが疑われ,その疼痛メカニズムもある程度説明することができる.少なくとも「困惑するのみ」であった未熟な理学療法士の対応よりは,症例の状態に適した理学療法を選択できたはずであると大変悔やまれる.

 あらかじめ断っておくが,筆者は決して「脳血管疾患の疼痛」を専門としている理学療法士ではないし,大学病院に勤務している理学療法士でもない.言い換えると,一般の理学療法士は臨床において前述のような「脳血管疾患の疼痛」に直面する可能性が高く,その対処方法も適切に選択する必要がある.しかし,いざ臨床で直面すると困惑する理学療法士も多く,それは臨床実習の場合でも同様である.

 そこで本稿では,脳血管疾患患者にみられるさまざまな疼痛,神経由来の異常感覚,拘縮,廃用によって起こる関節痛等について,その疼痛の病態のみならず,さまざまな視点から評価方法,対処方法について解説する.また,近年増加傾向にある血管由来の疼痛についても言及する.

参考文献

1)日本循環器学会:閉塞性動脈病変の分類・症状・徴候,末梢閉塞性動脈疾患の治療ガイドライン,pp1510-1512,循環器の診断と治療に関するガイドライン(2005-2008年度合同研究班報告),2009
2)松原貴子,他:疼痛を理解する.PTジャーナル47:359-363,2013
3)森岡 周:痛みに関する脳機能.松原貴子,他(編著):ペインリハビリテーション,pp97-101,三輪書店,2011
4)松原貴子:中枢性疼痛,視床痛,脳卒中後疼痛.前掲書3),pp224-225
5)松原貴子:複合性局所疼痛症候群.前掲書3),pp219-224
6)田邉 豊,他:肩手症候群.小川節郎(編著):痛みの概念が変わった,p108,新興交易,2008
7)加藤 実,他:CRPSの経過と予後.眞下 節,他(編):複合性局所疼痛症候群,pp232-236,新興交易,2009
8)松原貴子:痛みの分類.前掲書3),pp40-45
9)脳卒中合同ガイドライン委員会:中枢性疼痛に対する対応,脳卒中治療ガイドライン2009,pp316-317,一般社団法人日本脳卒中学会,2009
10)脳卒中合同ガイドライン委員会:片麻痺側の肩に対するリハビリテーション,前掲書9),pp313-315
11)理学療法診療ガイドライン部会:脳卒中理学療法診療ガイドライン,理学療法診療ガイドライン第1版,pp380-464,公益社団法人日本理学療法士協会,2011
12)井上真輔,他:神経障害性疼痛の治療.Brain Medical 24:19-26,2012
13)Ramachadran VS, et al:Synaesthesia in phantom limbs induced with mirrors. Proc Biol Sci 263:377-386, 1996

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1359

印刷版ISSN:0915-0552

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