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雑誌目次

雑誌文献

理学療法ジャーナル48巻1号

2014年01月発行

雑誌目次

特集 バランスupdate―実用的な動作・活動の獲得のために

EOI(essences of the issue)

ページ範囲:P.3 - P.3

 理学療法士にとって「バランス」とは,筋力や体力,関節可動域などとともに障害の状態を考えるうえでとても大切な視点である.しかし「バランス」は大脳,小脳,前庭機能,筋骨格系などの障害の成因となる部位や,それらの障害により認められる症候で取りまとめられた複合的な概念で,ともすると曖昧にとらえられがちなものである.本特集では,理学療法の重要な目的の一つである実用的歩行,諸動作の獲得について,「バランス」という観点からみた効果的な理学療法のプログラム立案や実施上での留意点について解説していただいた.

脳卒中患者におけるバランス障害と理学療法

著者: 澤田明彦

ページ範囲:P.5 - P.14

はじめに

 脳卒中患者のバランス障害は,意識水準の変容・運動麻痺・筋力低下・感覚障害・認知障害・筋緊張調節異常・狭義の平衡障害・運動器の二次的変化・加齢に伴う運動の拙劣さなどが,程度の差はあれ複合的に組み合わされて構成される.この複雑さは,脳卒中患者のバランス障害の理解を妨げるとともに,対応の難しさを生む.

 運動学習の視点からではあるが,大橋1)は課題指向型アプローチの介入モデルとして,機能・構造―戦略―遂行能力の階層構造を想定した.また,各階層における評価内容として,機能・構造レベルでは“何が使えるか”,戦略レベルでは“どのように使うか”,遂行能力レベルでは“最終的な到達レベル”を挙げた.このような階層構造を想定した考え方は,バランスの面でも参考にできる.

 バランスに関する概念は多様であるが,本稿ではバランスを姿勢調節の結果ととらえ,姿勢調節の手段を姿勢戦略,姿勢調節のための機能を身体資源と仮定し論じる.

パーキンソン病患者におけるバランス障害と理学療法

著者: 八谷瑞紀 ,   村田伸 ,   大田尾浩 ,   浅見豊子

ページ範囲:P.15 - P.23

はじめに

 パーキンソン病は安静時振戦,筋固縮,無動,姿勢反射障害という4大症候を中心に,さまざまな自律神経症状,精神症状を特徴とする進行性の神経変性疾患である.日本の有病率は人口10万人あたり100~150人である1).高齢になるほど有病率は高くなる傾向があり,日本の高齢者人口の増加に伴い患者数も増加している2).病理としては,黒質のドーパミンニューロンの減少が主体となる.その結果,パーキンソン病由来による振戦,筋固縮,無動,姿勢反射障害などの一次的な機能障害が出現する.また,疾患の進行に伴う廃用症候群,老化,長期の薬物治療などの影響により出現する二次的機能障害がある.さらに,以上のような要因が複合的に重なることで,バランス障害,歩行障害,認知症などの機能障害を呈する.バランス障害は,不安定な立位および歩行を引き起こし,転倒や骨折の原因となり得る.このため,パーキンソン病患者に対してバランス能力を改善する理学療法を実施することは,安定した日常生活を送るためにも重要となる.

 本稿では,パーキンソン病患者のバランス障害の特徴を概説し,バランス能力の評価法と結果が示す意義,およびバランス能力の向上を目的とした理学療法の方法と効果について述べる.

下肢関節症患者におけるバランス障害と理学療法

著者: 大島富雄

ページ範囲:P.25 - P.32

はじめに

 変形性股関節症や膝関節症に代表される下肢関節症は,関節軟骨や関節の構成体の退行変性に起因する疾患で,疼痛や関節可動域制限,筋力低下を主症状としており,高齢者に多くみられる.したがって,理学療法士は下肢関節症の治療にあたり,関節の機能的側面だけに注目せず,加齢変化にも注目し治療を行う必要がある.

 最近,この加齢による運動機能低下が要介護の要因として注目されてきており,2007年に日本整形外科学会はロコモティブシンドローム(Locomotive Syndrome:運動器症候群,以下,ロコモ)という新しい概念を提唱した1).ロコモとは骨,関節,筋肉など運動器の機能が衰えてきている状態で,「運動器の障害のために,要介護になったり,要介護になる危険の高い状態」と定義されており,変形性膝関節症が要因の一つに挙げられている2,3).他の要因には筋力低下,バランス低下,腰部脊柱管狭窄症,骨粗鬆症がある.これらは独立した疾患ではなく関連しながら進行していくケースが多く,多面的な治療アプローチの必要性を示唆している.また2010年度国民生活基礎調査において,関節疾患が要介護の3大原因として10.9%を占めていることが報告されており4,5),特に下肢関節症の対策が重要な政策課題となっている.

 このように,加齢による全身的な運動機能の障害は,筋力の低下や“バランス障害”を来し,結果として転倒に至る危険性を有している.したがって高齢者に多い下肢関節症の理学療法では,ロコモの転倒予防の観点からもバランス機能面を含めた評価・治療が重要となる.

 本稿では,下肢関節症のバランス障害の特徴と評価方法およびその理学療法の実際について述べる.なお下肢関節症は,主に変形性股および膝関節症を指すものとする.

高齢者におけるバランス障害と理学療法

著者: 大羽明美 ,   百瀬公人 ,   齋門良紀 ,   伊橋光二

ページ範囲:P.33 - P.39

はじめに

 わが国では高齢化が進んでおり,当院リハビリテーション科に処方される症例についても同様である.2004年度から発行している当院の年報によると,2004年当時,リハビリテーション科の処方件数は70歳台が最多であったが,2011年度には80歳台が追い越している.また,転帰先は自宅が79%から70%へと減少傾向にあり,逆に死亡率が増加傾向にある.つまり理学療法の対象者は,加齢に伴い死亡のリスクが高まることを示している.

 高齢者の特徴は,バランスや下肢筋力を中心とした運動機能の低下,呼吸・循環・代謝など生理機能の低下1),認知機能の低下が挙げられ,これらの特徴が故に,高齢者は廃用も加速する.バランス障害による転倒後の骨折や疼痛は廃用症候群の一因になり,高齢者のADLの自立を大きく阻害する.したがって,骨折等の受傷後の高齢者に対しては,早期より積極的な理学療法を展開し,移乗や歩行などを自立させることで,廃用を防ぐことが不可欠である.しかし,高齢者においては十分な介入をしても受傷前のADL獲得が困難である場合も多く,より転倒予防に配慮した理学療法を実施しなければならない.

 そこで本稿では,転倒予防の視点から高齢者のバランス障害をとらえ,理学療法プログラム,リスク,歩行補助具についての現在の知見を,臨床上の若干の私見を加えて概説する.

前庭器官疾患におけるバランス障害と理学療法

著者: 杉原弘康

ページ範囲:P.41 - P.46

バランスと前庭器官障害

 バランスとは,Shumway-Cookら1)によると「重心を足底基底面のなかに維持し,姿勢を維持する身体能力」である.このとき3種類の感覚が,バランスへの入力情報として大きな役割を果たしている.すなわち,視覚,体性感覚と前庭感覚である.これら3つの感覚が脳内で統合され,空間内での身体の位置を把握して適切な身体反応を誘発する.Peterka2)は健常者の立位姿勢のバランス維持は,70%は視覚から,20%は体性感覚から,そして10%は前庭器官からの入力情報に依存していると報告した.そして,状況によって視覚や体性感覚からの入力情報が限られたときには入力情報の再偏重が起こり,前庭感覚からの入力がバランスの維持に最も重要な役割を果たす.本稿では,前庭器官の役割とその機能障害について述べる.

とびら

育児休暇

著者: 井澤和大

ページ範囲:P.1 - P.1

 うっすらと明るくなってきた早朝に,子どもの泣き声で目を覚ます.子を抱き,あやしながら,新聞に目を通すのが日課となった.

 理学療法士になり約20年,現職場で臨床,教育,研究を3本柱とし,ひたすら突っ走ってきた.ここまで突っ走れたのも,レールを敷き,私を導いてくださった恩師,諸先輩,同僚,支えてくれた後輩たち,家族,そして多くの患者さんのおかげである.

入門講座 拘縮・1【新連載】

肩の拘縮

著者: 青山多佳子 ,   丹保信人 ,   小野健太 ,   坂内康典

ページ範囲:P.49 - P.55

はじめに

 「肩の拘縮」に対して,「何を診てどこから介入すればよいか」など“入りにくさ”を感じてはいないだろうか.その理由の一つに,肩の構造や機能が複雑で,解剖学,運動学的特徴を踏まえた介入が必要な点が挙げられる.

 本稿では,肩関節の解剖,肩関節拘縮の機序と基本的対応をまとめ,腱板断裂や脳血管障害を例に病態への理解を深める.

甃のうへ・第11回

歴史好き理学療法士の独り言

著者: 須藤恵理子

ページ範囲:P.56 - P.56

 歴女と胸を張ることはできないが,歴史好きなほうである.10代か20代のころ,何かで読んで印象に残っている言葉に「なにせうぞ くすんで 一期は夢よ ただ狂へ」がある.閑吟集(1585年に成立した,室町時代に民衆の間で流行した歌謡集)の一節らしい.「何になるだろう,まじめくさってみたところで,どうせ,一生は夢のように儚いものだ.ただ,狂えばいい」が直訳になるのだろう.「狂う」をどう解釈するかだが,読んだころからやりたいことをやったらいいと理解していた.

 もう一つ.「おもしろき こともなき世を おもしろく」.こちらは幕末の高杉晋作の辞世の句とか.本人の意図はおいといて「日々の生活がおもしろくないのなら,それをおもしろくしてやろう」と解釈している.

1ページ講座 理学療法関連用語~正しい意味がわかりますか?

サルコペニア,Frailty

著者: 島田裕之

ページ範囲:P.57 - P.57

●サルコペニアの操作的定義

 高齢期における骨格筋の萎縮と,それに伴う筋力低下を表す造語であるサルコペニアは,概念としては古くから存在する.初期には筋量を計測し,一定以上の減少をサルコペニアと定義してきた.最も広く用いられている定義は,二重X線エネルギー吸収法から得られた四肢の筋量の合計を身長(m)の2乗で除したskeletal muscle mass index(SMI)を指標としたものである.サルコペニアの定義は,成人(18~40歳)におけるSMIの平均から2標準偏差以下に達した場合とされた.この操作的定義に基づくサルコペニアの有症率は,70歳以下において13~24%,80歳以上では50%以上とされた1)

 また,近年サルコペニアの国際的な合意形成を目的としてthe European Working Group on Sarcopenia in Older Peopleによるサルコペニアの操作的定義が発表された.従来の骨格筋量による定義のみでなく,筋力と歩行速度がサルコペニアの構成要素として含められた.しかし,運動機能をサルコペニアの定義に含めると,frailtyと同じような定義となってしまう.地域在住高齢者4,800名を対象に,歩行速度を含めた基準と,含めない基準とでサルコペニアと判定された者の合致率は98%であり,サルコペニアの基準に歩行速度を含めるかどうかは慎重な判断が必要であろう.筋量と筋力からサルコペニアを判定し,歩行速度によって介入の必要性を判断する思考過程が,治療の選択をするために重要であると考えられる(図).

最近の患者会・家族会の活動【新連載】

全国パーキンソン病友の会

著者: 高本久

ページ範囲:P.60 - P.60

●活動内容

 まず会員にとっては,身近な地域の友の会があります.そこでは同じ地域ということで顔見知りになりやすく,毎月の例会では30人程度での情報交換,パーキンソン病特有の症状に対処するための体操,歌唱指導などを行っています.情報交換では,薬の効果・飲み方や症状の理解などの話題が中心となります.

 都道府県レベルでは,会報の発行,医療講演会・相談会や研修旅行の開催,全国レベルでは,会報の発行,総会・大会の開催,国会請願活動,行政への陳情,電話による医療相談(事前登録制で,友の会より電話し,協力医師が応対します)などを行っています.

学会印象記

―6th WCPT-AWP & 12th ACPT Congress 2013 in Taiwan―初めての国際学会参加,発表を経験して

著者: 小幡賢吾

ページ範囲:P.58 - P.59

 2013年9月5日~9日(学会自体は7・8日)に台湾・台中にて,The 6th Asia-Western Pacific Regional Congress of the World Confederation for Physical Therapy(WCPT-AWP)ならびにThe 12th International Congress of Asian Confederation for Physical Therapy(ACPT)が開催されました.私は初の国際学会での発表を行うため,本学会へ参加しました.

講座 低侵襲手術の今・1【新連載】

低侵襲人工膝関節置換術と理学療法

著者: 難波良文

ページ範囲:P.61 - P.69

はじめに

 米国において,現在年間50万人以上に人工膝関節置換術(total knee plasty:TKA)が施行され,2030年には300万人以上に増加するという試算がある1).本邦でも年々増加の一途をたどっており,2011年現在で,年間7万人を超えている.このように,人工膝関節置換術は決して珍しい手術ではなく,比較的ありふれた手術となっている.

 一方で,理学療法の現場においては,病院によって,または執刀する医師によっても治療方針は一見バラバラで,やや混乱しているという印象がある.例えば,術後に膝をついたまま移動する(いざる)という動作を許可するか否か,各病院で方針は異なっている.当院では,ほとんどの患者さんに術後膝をついていざってもよいと指導しているが,場合によっては積極的に膝つきをしないように指導することもある.このような理学療法上の違いはどこから来るかと言うと,使用したインプラントが違うからである.この点を理学療法士にきちんと説明して指導することは非常に大切である.本稿では,理学療法を実施するうえで知っておくべき人工膝関節の基本的な知識について述べる.

 さて,2000年代に入ると,最小侵襲手術(minimally invasive surgery:MIS)という概念が人工関節手術においても導入された.当初,低侵襲手術により,術後疼痛の軽減,入院日数の短縮化,これによる医療コストの削減などが期待され,多くの施設で導入された.人工股関節置換術(total hip arthroplasty:THA)の分野では,MISは一定の成功を収めたが2),TKAの分野ではその効果は期待されたほどではなかった.

 一方,2012年現在,全国の人工膝関節症例数の1割を超える程度と数は少ないものの,人工膝単顆置換術(unicompartmental knee arthroplasty:UKA)は真のMISとして見直され,注目されている.実際,術後疼痛は軽く,術後の機能回復は極めて早いため,当院では積極的にこの手術を行っている.徐々にではあるが全国的に症例数は増えつつあるため,膝の低侵襲手術としてUKAを紹介する.

臨床実習サブノート 理学療法をもっと深めよう・10

脳性麻痺児の生活を理解する

著者: 中林美代子

ページ範囲:P.71 - P.80

はじめに

 日本理学療法士協会によれば,会員数は現在85,000名を超えているが,このうち小児領域に携わっている理学療法士は,約1,300名(全体の2%弱)と想定される1)

 小児理学療法は,対象疾患が多岐にわたるが,なかでも中枢神経障害に起因する脳性麻痺(cerebral palsy:CP)児は,理学療法士がかかわることが最も多い疾患である.生後より成長過程の各時期に応じて理学療法による治療介入を要するが,治療的ハンドリングによる介入のみならず,成長・発達の観点から,遊びを通して理学療法を実施する必要がある.また,療育者に対し子育てを支援し,生活にあたっては,社会資源の調整も考慮しなければならない.この点が成人の中枢神経疾患と異なる点と考える.本稿では,CP児について,その病態や生活を踏まえながら解説し,理学療法アプローチや家族支援について紹介する.

資料

2014年リハビリテーション領域関連学会

ページ範囲:P.83 - P.83

書評

―道免和久(編集)―「脳卒中機能評価・予後予測マニュアル」

著者: 市橋則明

ページ範囲:P.48 - P.48

 理学療法や作業療法では,「評価に始まり評価に終わる」とよく耳にするが,この評価結果を数値化し,蓄積できていないことが,科学的データに基づくエビデンスを示しにくくしている大きな原因である.医学会では,過去のカルテの血液データや画像データなどを後方視的に分析し,ある治療効果の有無や予後を検討しているような研究も多いが,理学療法や作業療法分野ではほとんどない.エビデンスの確立や正確な予後予測のためには,国際的に共有できる,信頼性や妥当性の高い機能評価を日々の臨床のなかで行っていくことが不可欠である.

 理学療法や作業療法評価におけるゴール設定の重要性は誰もが認めるところであるが,理学療法士や作業療法士は何を根拠にゴール設定をしているのであろうか? 自分が評価した結果から患者のゴールを導き出すためには,必ず予後予測を行う必要があるが,多くの場合は過去の経験からのみゴールを設定し,そのゴールが正しかったかどうか(治療が正しかったのかどうか)の吟味さえされない.これでは理学療法や作業療法の発展など考えられない.

―中村好一(著)―「基礎から学ぶ楽しい学会発表・論文執筆」

著者: 若林チヒロ

ページ範囲:P.81 - P.81

 疫学研究の方法を解説した,「楽しい研究」シリーズ第一弾『基礎から学ぶ楽しい疫学』は,「黄色い本」として辞書代わりに活用している人も多い.第二弾として今回出版された「青い本」では,研究の発表方法を一から学べるようになっており,やはり長く使い続けることになるであろう.疫学や公衆衛生学をリードしてきた研究者であり,医学生や保健医療者の研究指導をしてきた教育者でもある著者が,長年蓄積してきた学会発表や論文執筆の方法を惜しげもなく伝授してくれている.さらに,学術誌の編集委員長を務めてきた経験から,査読者の視点や意識まで解説してくれている.2年間に及ぶ連載をまとめただけあって,ノウハウが詰まった濃い一冊である.

 この本はコメディカルや大学院生など研究の初学者向けに執筆した,と著者は書いている.発表する学会の選び方や抄録の書き方,口演での話し方からポスター用紙の種類まで,至れり尽くせりで効果的な学会発表のノウハウが示されており,確かに初学者が「基礎から」学べるようになっている.しかしこの本は,キャリアのある臨床家や研究者が,よりインパクトのある発表をしたり,より採択されやすい論文を執筆したりするためにも,十分に適している.「基礎から,かなり高度なレベルまで」学べるようになっているのである.

―奈良 勲,鎌倉矩子(シリーズ監修)/岡田隆夫,長岡正範(執筆)―「《標準理学療法学・作業療法学専門基礎分野》生理学 第4版」

著者: 松波謙一

ページ範囲:P.82 - P.82

 生理学は,理学療法士,作業療法士にとって,解剖学とともに基礎医学の基幹となる科目である.しかし,高校を卒業したばかりの理学療法学科,作業療法学科の1年生にとっては,大変難しい科目となる.特に生理学は,解剖学と違って数式などがあるので,とりわけその感が強くなる.そのため,毎年,学期初めになると,1年生から「生理学の授業は難しくてわからない」と言われ続けてきた.

 私は,岐阜大学医学部に在職中から13年間,近くの専門学校で理学療法学科,作業療法学科(および視能訓練士)の学生に対して,生理学の講義と実習を担当した.同じく名古屋大学でも,理学療法学科の学生に対して神経心理学を担当し,前頭前野の講義を受け持った.定年後は中部学院大学リハビリテーション学部の学部長を務める傍ら,理学療法学科の学生に生理学の講義と実習を教えてきた.そうしたなかで,それぞれレベルの異なった学生のためにどんな教科書を使ったらいいか,その都度,頭を悩ましてきた.

お知らせ

整形徒手理学療法国際認定セミナー/患者さんの行動を内面から引き出すコミュニケーションスキル・ブラッシュアップ講座―コミュニケーションの視点による新たなリハビリアプローチ

ページ範囲:P.70 - P.70

整形徒手理学療法国際認定セミナー
① 第12期基礎コース全9回の第1回(滋賀コース)

日 時:2014年4月25日(金)~4月29日(火・祝)

内 容:整形徒手理学療法総論,臨床的推論,四肢の触診,マッサージ

講 師:林 寛,鳥本 茂,山内正雄,奥出 弘,近藤正太,佐伯武士,宇於崎孝,他

会 場:滋賀医療技術専門学校(滋賀県東近江市北坂町967)

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次号予告

ページ範囲:P.39 - P.39

「作業療法ジャーナル」のお知らせ

ページ範囲:P.69 - P.69

第25回理学療法ジャーナル賞発表

ページ範囲:P.80 - P.80

文献抄録

ページ範囲:P.84 - P.85

編集後記

著者: 横田一彦

ページ範囲:P.88 - P.88

 明けましておめでとうございます.2014年は診療報酬の改定年です.改定の骨子も見え始め,医療機関にお勤めの方は年度末に向けて期待と不安の入り混じった時期でもあろうかと思います.真摯に理学療法を実践することは変わらないとしても,適切なバランスのとれた報酬とはいったいどのくらいのものなのか,普段は忘れてしまいがちなことを考えさせられる時期でもあります.

 今月の特集は「バランスupdate―実用的な動作・活動の獲得のために」と題して,代表的な疾患や障害を取り上げ,各々のバランス障害にかかわる特徴や実践的な理学療法について論じていただきました.澤田論文では,脳卒中患者におけるバランス障害について丁寧な解説と多くの図を用いて具体的な介入方法を示していただきました.八谷論文では,パーキンソン病患者のバランス障害に関する評価,治療介入について文献を示しながら解説していただきました.大島論文では,下肢関節症患者のバランス障害について,関係の深いロコモティブシンドロームにも触れていただき,質的改善をめざしたトレーニング方法を述べていただきました.大羽論文では,高齢者のバランス障害の特徴の解説と筆者らの具体的な実践例が述べられています.杉原論文ではバランスに関して重要な位置づけである前庭感覚に焦点をあてた理学療法の評価と実践,リスク管理について示していただきました.疾患,障害,加齢などによる修飾が加わったうえで,個々のケースでバランスという複合的な概念をとらえるには,丁寧な観察,評価が大切であることがどの論文でも示されています.日々の理学療法のなかで,実用的な動作・活動の獲得に向けた考察を深めていくのに本特集はきっと役立つものであると考えます.

読者の声募集

ページ範囲:P. - P.

基本情報

理学療法ジャーナル

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1359

印刷版ISSN 0915-0552

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