理学療法ジャーナル48巻1号

2014年01月発行

特集 バランスupdate―実用的な動作・活動の獲得のために

前庭器官疾患におけるバランス障害と理学療法

著者： 杉原弘康¹

所属機関： ¹スタンフォード大学病院リハビリテーション部

ページ範囲：P.41 - P.46

バランスと前庭器官障害

　バランスとは，Shumway-Cookら^1）によると「重心を足底基底面のなかに維持し，姿勢を維持する身体能力」である．このとき3種類の感覚が，バランスへの入力情報として大きな役割を果たしている．すなわち，視覚，体性感覚と前庭感覚である．これら3つの感覚が脳内で統合され，空間内での身体の位置を把握して適切な身体反応を誘発する．Peterka^2）は健常者の立位姿勢のバランス維持は，70％は視覚から，20％は体性感覚から，そして10％は前庭器官からの入力情報に依存していると報告した．そして，状況によって視覚や体性感覚からの入力情報が限られたときには入力情報の再偏重が起こり，前庭感覚からの入力がバランスの維持に最も重要な役割を果たす．本稿では，前庭器官の役割とその機能障害について述べる．

参考文献

1）Shumway-Cook A, et al：Motor Control, p165, Lippincott Willams & Wilkins, Baltimore, 2001

2）Peterka RJ：Sensorimotor integration in human postural control. J Neurophysiol 88：1097-1118, 2002

3）Prokopakis EP, et al：Benign paroxysmal positional vertigo：10-year experience in treating 592 patients with canalith repositioning procedure. Laryngoscope 115：1667-1671, 2005

4）Shumway-Cook A, et al：Predicting the probability for falls in community-dwelling older adults. Phys Ther 77：812-819, 1997

5）Whitney SL, et al：The sensitivity and specificity of the Timed“Up & Go”and the Dynamic Gait Index for self-reported falls in persons with vestibular disorders. J Vestib Res 14：397-409, 2004

6）Herdman S：Vestibular Rehabilitation, F. A. Davis, Philadelphia, 2007