icon fsr

文献詳細

雑誌文献

理学療法ジャーナル48巻1号

2014年01月発行

文献概要

講座 低侵襲手術の今・1【新連載】

低侵襲人工膝関節置換術と理学療法

著者: 難波良文1

所属機関: 1川崎医科大学骨・関節整形外科

ページ範囲:P.61 - P.69

文献購入ページに移動
はじめに

 米国において,現在年間50万人以上に人工膝関節置換術(total knee plasty:TKA)が施行され,2030年には300万人以上に増加するという試算がある1).本邦でも年々増加の一途をたどっており,2011年現在で,年間7万人を超えている.このように,人工膝関節置換術は決して珍しい手術ではなく,比較的ありふれた手術となっている.

 一方で,理学療法の現場においては,病院によって,または執刀する医師によっても治療方針は一見バラバラで,やや混乱しているという印象がある.例えば,術後に膝をついたまま移動する(いざる)という動作を許可するか否か,各病院で方針は異なっている.当院では,ほとんどの患者さんに術後膝をついていざってもよいと指導しているが,場合によっては積極的に膝つきをしないように指導することもある.このような理学療法上の違いはどこから来るかと言うと,使用したインプラントが違うからである.この点を理学療法士にきちんと説明して指導することは非常に大切である.本稿では,理学療法を実施するうえで知っておくべき人工膝関節の基本的な知識について述べる.

 さて,2000年代に入ると,最小侵襲手術(minimally invasive surgery:MIS)という概念が人工関節手術においても導入された.当初,低侵襲手術により,術後疼痛の軽減,入院日数の短縮化,これによる医療コストの削減などが期待され,多くの施設で導入された.人工股関節置換術(total hip arthroplasty:THA)の分野では,MISは一定の成功を収めたが2),TKAの分野ではその効果は期待されたほどではなかった.

 一方,2012年現在,全国の人工膝関節症例数の1割を超える程度と数は少ないものの,人工膝単顆置換術(unicompartmental knee arthroplasty:UKA)は真のMISとして見直され,注目されている.実際,術後疼痛は軽く,術後の機能回復は極めて早いため,当院では積極的にこの手術を行っている.徐々にではあるが全国的に症例数は増えつつあるため,膝の低侵襲手術としてUKAを紹介する.

参考文献

1)Kurtz S, et al:Projections of primary and revision hip and knee arthroplasty in the United States from 2005 to 2030. J Bone Joint Surg Am 89:780-785, 2007
2)難波良文,他:Mini-incision THAとMIS-THAの短期成績の比較検討.日本人工関節学会誌37:270-271,2007
3)Bal BS, et al:Tibial post failures in a condylar posterior cruciate substituting total knee arthroplasty. J Arthroplasty 23:650-655, 2008
4)Lachiewicz PF:How to treat a tibial post fracture in total knee arthroplasty? A Systematic Review. Clin Orthop Relat Res 469:1709-1715, 2011
5)松田秀一:人工膝関節におけるバイオメカニクス―PS型TKAにおけるpost-cam機構のバイオメカニクス.関節外科30:60-66,2011
6)福島重宣,他:MIS-TKAの経験.東北膝関節研究会会誌15:15-17,2005
7)難波良文,門田弘明,他:MIS人工膝関節の短期成績―MIS-UKAとMIS-TKAの比較.日本人工関節学会誌38:86-87,2008
8)Price AJ, et al:Sagittal plane kinematics of a mobile-bearing unicompartmental knee arthroplasty at 10 years:a comparative in vivo fluoroscopic analysis. J Arthroplasty 19:590-597, 2004
9)門田弘明,難波良文,他:MIS-TKAにおけるアリクストラの使用経験.中部日本整災誌52:495-496,2009
10)Price AJ, et al:Rapid Recovery After Oxford Unicompartmental Arthroplasty Through a Short Incision. J Arthroplasty 16:970-976, 2001
11)Insall J, et al:A five to seven-year follow-up of unicondylar arthroplasty. J Bone Joint Surg Am 62:1329-1337, 1980
12)Marmor L:Unicompartmental knee arthroplasty. Ten-to 13-year follow-up study. Clin Orthop Relat Res 226:14-20, 1988
13)赤木将男:UKAの歴史と展望.関節外科24:1173-1178,2005
14)Argenson JN, et al:Modern unicompartmental knee arthroplasty with cement:a three to ten year follow-up study. J Bone Joint Surg Am 84-A:2235-2239, 2002
15)Berger RA, et al:Unicompartmental knee arthroplasty:Clinical experience at 6 to 10-year follow up. Clin Orthop Relat Res 367:50-60, 1999

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1359

印刷版ISSN:0915-0552

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?