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雑誌目次

雑誌文献

理学療法ジャーナル48巻11号

2014年11月発行

雑誌目次

特集 脊椎・脊髄疾患と理学療法

EOI(essences of the issue)

ページ範囲:P.1007 - P.1007

 運動器疾患のなかでも脊椎・脊椎疾患の比率は高く,運動療法や装具療法などの保存療法,手術前後での介入など,理学療法士の多くがかかわる分野である.近年では診断機器や手術方法の進化とともに,高齢の方でも生活の質の向上という観点から脊椎・脊髄の手術を選択することは珍しくなくなった.

 本特集では,脊椎・脊髄疾患に対する治療の進歩を確認し,幅広い年代の対象者に対して理学療法士がどのような取り組みを行っていけばよいのかを整理することを目的として企画した.

脊椎・脊髄疾患に対する外科治療の進歩

著者: 石川雅之 ,   福井康之 ,   石原慎一 ,   中村聡 ,   朝本俊司 ,   西山誠

ページ範囲:P.1009 - P.1015

はじめに

 近年,科学技術の進歩に伴い医療環境は大きく変化し,筆者らが専門とする脊椎・脊髄疾患領域も画像診断法の進歩に伴い,治療法は大きく変容を遂げている.本稿で,脊椎・脊髄外科領域における画像診断法ならびに脊椎・脊髄外科治療の進歩を概説し,各論として代表的な脊椎・脊髄疾患に対するわれわれの治療方針を解説する.

頸椎・頸髄疾患と理学療法

著者: 小俣純一 ,   伊藤俊一 ,   岩渕真澄 ,   白土修

ページ範囲:P.1017 - P.1024

はじめに

 頸椎・頸髄疾患は,高齢化が進むにつれて増加することが予測される疾病の一つであり,われわれが臨床現場で治療にあたる機会も増えている.頸椎・頸髄疾患による脊髄症状や神経根症状は,日常生活に大きな影響を与えることもあり,重篤な脊髄症状や神経根症状がある場合に手術療法が適応となる.また,頸部疾患で頸部痛・肩こりといった疼痛を訴える患者も多く,異常姿勢を来すこともあることから,ストレッチングなどによる疼痛軽減を目的としたアプローチも必要となる.

 頸部痛・肩こりは厚生労働省国民生活基礎調査において,有訴率が男性では1位の腰痛に続いて2位,女性では1位であり,多くの者を悩ます疾病の一つである.有訴率1位である腰痛に対する腰背筋のリラクセーションと疼痛の除去に対するストレッチングの効果は2005年のコクランシステマティックレビュー1)をはじめ多くの報告がなされている2,3).さらに,膝関節や足関節に関するストレッチングの効果についても多数の報告がある4〜6).しかし,頸部痛に対するストレッチングの臨床的効果について検証した報告は少なく7,8),一定の見解は得られていない.

 本稿では,頸椎・頸髄疾患についての概要,評価,また頸部痛に対するストレッチングの効果について述べる.

胸腰椎・胸腰髄疾患と理学療法

著者: 田島泰裕 ,   高橋友明

ページ範囲:P.1025 - P.1033

はじめに

 社会の超高齢化が進み,整形外科を受診する中高年者はますます増加している.特に腰部疾患は非常に多く,2010年の厚生労働省による国民生活調査1)によると,65歳以上の有訴者で腰下肢痛が第1位となっており,今後も増加していくとともに,理学療法の需要も増大してくると予想される.

 本稿では,胸腰椎・胸腰髄疾患で代表的な腰部脊柱管狭窄症,後縦靱帯骨化症および黄色靱帯骨化症における障害について概要し,保存的療法と観血的療法後の理学療法のポイントを解説する.

高齢者脊椎圧迫骨折と装具療法

著者: 竹井健夫 ,   東島直生 ,   浅見豊子 ,   森本忠嗣

ページ範囲:P.1035 - P.1039

はじめに

 近年,高齢者の理学療法を実施する際に,加齢により骨粗鬆症や変形性脊椎症が進行したり,脊椎アライメントの構造変化を生じたりしている患者に対応しなければならないことが少なくない1).そのような高齢者においては,何ら問題のない普通の動作によっても脊椎圧迫骨折などを生じ,急激な腰痛,腰背部痛を引き起こすことがある.さらに脊柱起立筋の筋力低下が起立時後彎変形を起こし,椎体の圧潰を進行させる.そのような場合に有用なのが装具療法である.

 本稿では,高齢者脊椎圧迫骨折に対する装具の構造と特徴,装着時のチェックポイント,装具支給制度,理学療法および患者指導における留意点などを中心に概説したい.

とびら

「ほっと」する,絆を大切に

著者: 長谷川真人

ページ範囲:P.1005 - P.1005

 人が「ほっと」する瞬間ってどんなときだろうか? 友人と過ごす週末,家族一緒の夕食の時間,同僚と世間話をして盛り上がったとき,好きな人に会った瞬間,などなどいろいろな場面が挙げられるが,私は人と人とのかかわりができて絆がつくれたときだと考えている.そして,その絆は人が生きていくうえでとても大切なものであると信じている.

 私は,保育園,小・中学校,高校,大学,大学院,就職の際に,それぞれ異なる場所,環境で過ごしてきたため,いつも最初は緊張することがたくさんあった.でも半年,1年,2年と経つと周りの人々といろいろなかかわりを持ちながら,友人や知り合いが増えて多くの絆がつくられ,「ほっと」することができてきた.

ひろば

アジア留学のススメ—タイ国マヒドン大学の留学経験より

著者: 渡辺長

ページ範囲:P.1043 - P.1043

●はじめに

 昨今,英語力を身につけ世界で通じる理学療法士をめざし,海外の大学院留学を志す方が増えてきている.理学療法士の留学といえば米国などの欧米諸国が一般的だ.しかし今,目覚ましい成長を遂げるアジア諸国でこそ学べることがある.特に国際保健分野を学びたいと思っている方にはぜひ,お勧めしたい.

新たな50年に向けて いま伝えたいこと・第8回

野々垣嘉男

ページ範囲:P.1045 - P.1049

 私は幼少期にかかった麻疹の後遺症により,小学6年生ぐらいまで角膜にアレルギー性炎症が出て,春と秋になると眼が真っ赤に充血して大変苦労しました.その診療のために通院していた名古屋第一赤十字病院でいろいろな患者さんを見る機会があり,将来,私にも何か手助けできる仕事があるのではないかと興味を持ちました.医師や看護師にお世話になったことで少しでも恩返ししたいという気持ちが生まれ,それがまず医療との出会いであったと思います.

 その後,視力が十分に回復しなかったこともあり,高等学校専攻科(理療科)に進学しました.卒業後は,名古屋大学医学部附属病院整形外科・理療科で約10か月間研修し,社会保険中京病院に整形外科医長として勤務していた医師から「病院を継ぐことになり,整形外科を開設するので手伝ってください」と言われ,3年間,愛知県豊川市にある宮地病院に勤務しました.理療科に所属し,朝から夜間まで外来・入院患者の理療をはじめ,緊急患者の対応やX線撮影,徒手整復・ギプス固定,手術助手などを経験し,ご指導いただきました.多くのことを学んだ貴重な3年間を経て,1961年4月に名古屋市立大学医学部附属病院整形外科・理療科に移りました.

臨床実習サブノート 臨床実習における私の工夫・8

片麻痺の評価から治療へ—泥沼から脱出するために,私ならこうする

著者: 佐藤房郎

ページ範囲:P.1051 - P.1059

姿勢や動作に関連づける評価の進め方

 前稿では,学生が評価で最もスタックしやすい統合と解釈に焦点を絞り,システム理論を応用した評価項目のまとめ方について提案してみた.今回は,動作と関連づける評価の具体的な進め方,そして工夫について述べることにする.学生が評価結果を解釈して治療に生かしきれないのは,評価の進め方にも問題がある.評価で陥りやすい問題と解決方法を整理すると表のようになる.そこからは,動作につながる評価のポイントがみえてくる.

 それでは,はじめに姿勢制御の背景になる筋緊張を取り上げ,バランス,運動機能,知覚,認知,そして学生が最も苦労する動作分析の視点を提示してみたい.

1ページ講座 理学療法関連用語〜正しい意味がわかりますか?

社会的手抜き

著者: 岩田健太郎

ページ範囲:P.1061 - P.1061

 社会的手抜きとは,個人が単独で作業を行う場合に比べて,集団で作業を行う場合に,一人当たりの努力の量,仕事量が低下し,作業効率が低下する現象のことをいう.この現象は,リンゲルマン効果ともいわれ,1913年にドイツの社会心理学者Ringelmannが提唱した1).Ringelmannは,綱引きの実験を行い,一人で綱を引く場合と集団で綱を引く場合とで,一人当たりどのくらいの力が発揮されるかを調べ,結果,集団の人数が増えるほど,一人当たりの発揮する力が減少することを明らかにした.

最近の患者会・家族会の活動

全国脊髄損傷者連合会

著者: 妻屋明

ページ範囲:P.1064 - P.1064

●設立の経緯

 労働災害で重度の障害を負い,車椅子生活を余儀なくされているにもかかわらず,少ない一時金で済まされてしまうなど,脊髄損傷者にとって生涯にわたる生活を保障する年金制度はなかった.このような状況を打開するため,終身年金補償制度を求めて,全国の労災病院に入院している脊髄損傷患者(主に車椅子使用者)に全国組織の結成を呼びかけ,全国脊髄損傷患者寮友会が発足した.その後,国に対して陳情,請願など組織を挙げてさまざまな要求運動が始まり,脊髄損傷者の労災年金制度を勝ちとったのをはじめ,さまざまな成果を上げ現在に至っている.2002年にそれまでの任意団体から社団法人全国脊髄損傷者連合会となり,2014年4月1日付で公益社団法人全国脊髄損傷者連合会へ移行した.

学会印象記

—第16回日本医療マネジメント学会学術総会—理学療法士がマネジメントという観点をもつために

著者: 荒尾賢

ページ範囲:P.1062 - P.1062

 2014年6月13日・14日の2日間,岡山コンベンションセンター,他(岡山市)にて第16回日本医療マネジメント学会学術総会が開催されました.国立岡山医療センターの青山興司院長が会長を務められ,「楽しく働くために 医療の進むべき姿を求めて」というテーマのもと,多数の演題,シンポジウムが設けられ,4,100名もの参加がありました.演題発表のテーマは「組織マネジメント」「クリティカルパス」「地域連携」「医療安全」など多岐にわたり,主に医師,看護師,その他に理学療法士,作業療法士,栄養士,放射線技師,診療情報管理士など多職種による発表がありました.

甃のうへ・第20回

私の目標とメンター,サポーターそして未来のライター

著者: 安倍恭子

ページ範囲:P.1063 - P.1063

 私の目標は「山形の脳血管疾患に対する下肢装具療法を変えた人」になることです! 急性期病院である当院に勤務して19年目,この数年は脳神経外科を中心に担当しています.2年半ほど前,「下肢装具を有効に使えば,もっと良い早期歩行練習ができるのでは?」と感じ,「装具yearにしよう!」と自分の課題に決めました.まずは勉強のため,東京や大阪で開催される研修会へ参加しました(東北開催はほとんどありません).そこで出会う講師の先生方は本当に活き活きとされていて,思わずワクワクしました.「職場の皆や同じ地域で働くセラピストの皆さんにも聴いてほしい.一緒に学んで,考えたい」.そんな思いを抱き,「ぜひ『山形』にお力を貸してください!」とお願いすると,先生方は皆さん,温かい笑顔で「ぜひ」と言ってくださいました.そのお言葉に甘えて先生方を山形にお招きし,下肢装具療法にかかわるセミナーを計4回開催することができました.

 当院の装具療法はこの2年で大きく変わってきました.今は装具の地域連携に向けて模索中です.その一つとして始めた「一症例検討会」が「すごくいい!」のです(残念ながら詳細は割愛します).「一歩踏み出す→新たな出会い→ワクワクする→また一歩踏み出す」というサイクルに恵まれ,私の「装具year」は続いています.

入門講座 ICFを現場で使おう・3

小児,特別支援教育

著者: 堺裕 ,   秋山辰郎

ページ範囲:P.1065 - P.1075

はじめに—特別支援教育とICF

 障害のある幼児児童生徒にとって,自立や社会参加は重要な目的である1).この目的を達成するためには,教育のみならず,福祉,医療,労働などのさまざまな側面からの取り組みが必要である.このため,特別支援教育では関係機関との連携を重視している.理学療法士は,その一翼を担っている.

 特別支援教育において行われる指導および支援は,障害のある幼児児童生徒の一人ひとりのニーズを正確に把握して行うことを旨としている.特別支援学校の目的の一つとして,「障害による学習上又は生活上の困難を克服し自立を図るために必要な知識技能を授けること」がある2).自立や社会参加に向けて,生活や学習上の困難に対して適切な指導および必要な支援を行うために,教育的ニーズの内容は,個別の教育支援計画3)のなかに盛り込まれるようになっている.教育的ニーズの把握に基づいて,教育的支援の目標と基本的な指導内容が明確にされる.さらに保護者を含め,教育的支援を行う者および関係機関とその役割の具体化が図られる.特別支援教育は,このような内容を明記した個別の教育支援計画を作成することにより,教育的ニーズに対する適切な対応を図っている.

 特別支援教育における国際生活機能分類(International Classification of Functioning,Disability and Health:ICF)4)の活用については,学習指導要領の解説のなかで述べられている.学習指導要領とは,学校における教育課程を編成する際の基準を示したものであり,文部科学省によって定められているものである5).特別支援学校学習指導要領解説自立活動編のなかでは,国際障害分類(International Classification of Impairments,Disabilities and Handicaps:ICIDH)からICFへの障害の捉え方の変化に言及したうえで,「『障害による学習上又は生活上の困難』は,WHO(World Health Organization)において,ICFが採択されたことにより,それとの関連で捉えることが必要である」と述べられている6).特別支援教育では,指導・支援に取り組むにあたり,ICFにより障害をとらえようとしている.

 また,特別支援学校学習指導要領解説総則等編のなかでは,「個々の教育的ニーズに応じて連携する相手や内容・方法等を工夫することが大切である.その際,関係者間で個々の児童生徒の実態等を的確に把握したり,共通に理解できるようにするため国際生活機能分類(ICF)の考え方を参考にすることも有効である」と述べられている7).これに示されるように,特別支援教育はICFの共通言語としての役割にも着目し,多職種連携のために活用しようとしている.

 特別支援学校に在籍する子どもを担当する理学療法士にとって,特別支援教育との連携が大切であることはいうまでもない.特別支援教育においてICFの活用が図られている今日,理学療法を進めていくうえで,特別支援教育との連携はより一層意義深いものとなっていくと考えられる.本稿では,特別支援教育におけるICF-児童版(Children & Youth Version:CY)8)の活用方法について具体的な症例を挙げて示し,特別支援教育におけるICF-CYの活用が理学療法にもたらす効果について,家族への説明,チームの理解,帰結の向上の視点から述べる.また,特別支援教育における多職種連携のなかで理学療法士がICF-CYを活用する長所について,医療・福祉連携の視点を含めて述べる.

講座 脳・3

視覚経路と運動・行動

著者: 武田景敏 ,   河村満

ページ範囲:P.1077 - P.1082

はじめ

 視覚経路の研究は,古くは霊長類での解剖学的研究から現在の脳機能イメージングまで多岐にわたる.視覚経路は物体の知覚だけでなく,物体と動作者の位置関係などの空間情報処理や眼球運動と深くかかわっており,その障害は運動に大きな影響を及ぼす.また,意識されない視覚系である膝状体外視覚系は,情動認知やアイコンタクトなど社会的認知に重要な役割を果たしている.

 本稿では主にヒトと霊長類での病巣研究と機能画像の研究の観点から,視覚経路と運動・行動とのかかわりについての知見をレビューする.

お知らせ

第4回日本リハビリテーション栄養研究会学術集会in名古屋/看護師・コメディカルのためのFIM講習会のご案内/第4回日本がんリハビリテーション研究会

ページ範囲:P.1039 - P.1042

第4回日本リハビリテーション栄養研究会学術集会in名古屋

日 程:2014年12月13日(土)

会 場:ウインクあいち(愛知県名古屋市中村区名駅4-4-438)

書評

—舟波真一・山岸茂則(編集)—「運動の成り立ちとは何か—理学療法・作業療法のためのBiNI Approach」

著者: 藤縄理

ページ範囲:P.1041 - P.1041

 理学療法・作業療法の基礎科学には,解剖学,生理学,運動学などの基礎医学,臨床医学,そして心理学などがある.理学療法(physical therapy)の場合は,さらに文字通りphysicalというように物理学(physics)も入る.作業療法(occupational therapy)は作業科学が入るのだろうか.本書のタイトルは『運動の成り立ちとは何か』であるが,内容はまさに療法を行うための基礎医学,臨床医学,物理学,心理学,作業科学などを基礎に,日々の実践をもとに新たな治療体系を紹介しようというものである.著者らはこの概念を「統合的運動生成概念」といい,手法をBiNI Approach(Biomechanics and Neuroscience Integrative Approach)と名付けている.

 本書をめくると統合的運動生成概念の説明があり,そのあとに力学,解剖学,神経科学,バイオメカニクスなどの説明が続いていく.理学療法の基礎科学の一つとして物理学があるなどと言われても,正直言って物理学は苦手という人も多いのではないだろうか.さらには,新しい分野に挑戦しようとしているためか,新たに定義した用語や,あまり聞きなれない用語がかなり出てくる.例えば,「加速度は力である」などは「エ! 違うでしょう」,「姿勢は運動である」と言われると「そんなふうに習っていない!!」と思ってしまう.そして,非線形力学,量子力学,Global Entrainment(グローバル・エントレインメント:大域的引き込み),アフォーダンス理論,などが続いてくると「はァ??」となってしまう.

—荒木秀明(著)—「非特異的腰痛の運動療法—症状にあわせた実践的アプローチ」

著者: 板場英行

ページ範囲:P.1076 - P.1076

 腰痛は,腰椎,椎間板,椎間関節,神経根,腰部関与筋と軟部組織などの病変が発症原因と考えられている.しかし,臨床的にみると,腰痛の約80%は,医学的診断と臨床症状が一致せず,痛みの原因が特定できない非特異的腰痛である.その意味で,腰痛症例の治療では,診断名や画像所見に固執せず,眼前の対象者から把握できる病態と臨床症状を包括的に評価分析し,的確な臨床推論と臨床判断を駆使した治療介入を行い,臨床考察により治療効果を確認するプロセスが重要である.学際的には,医学モデルに生物・心理・社会的要因に視点を拡充した包括的・多角的・集学的アプローチが強調されている.腰痛の運動療法における近年の動向は,腰部症状に起因した局所基盤治療から,骨盤帯や下肢関節,身体上位構成体との連結,運動機能障害連鎖を考慮したトータルアプローチへと変化している.

 このたび,医学書院から荒木秀明著『非特異的腰痛の運動療法—症状にあわせた実践的アプローチ』が発刊された.著者の荒木氏とは,2001年から3年間,徒手理学療法関係の講習会で,ともに講師を務めたことがある.臨床家としての鋭い視点から理論と実技を展開される姿勢に共感したことを覚えている.

—蜂須賀研二(編)/大丸 幸・大峯三郎・佐伯 覚・橋元 隆・松嶋康之(編集協力)—「服部リハビリテーション技術全書(第3版)」

著者: 吉尾雅春

ページ範囲:P.1083 - P.1083

 『リハビリテーション技術全書』初版が発刊されたのは1974年.私が理学療法士になった年でした.当時,九州リハビリテーション大学校は九州労災病院に併設されていたため,同病院のリハビリテーション科で見る光景がリハビリテーション医療そのものであるという認識がありました.その光景が一冊の分厚い本になったという印象をもって,『リハビリテーション技術全書』を買い求めたのを覚えています.私が九州リハビリテーション大学校に入学した頃には,服部一郎先生は同病院からは退任され長尾病院を開設されていましたが,九州においてリハビリテーションの世界を切り開かれたその熱い存在は学生の間でも知れわたっていました.故に,『リハビリテーション技術全書』は私にとって「聖書」というイメージがありました.1984年には,随所に改訂がされた第2版が出版されました.

 1987年には第22回日本理学療法士学会が神戸で開催され,「日本における理学療法の独創性」を主題に服部先生にご講演いただきました.情報のない戦後間もない時代から取り組んでこられたわが国のリハビリテーション医療の開拓では,服部先生自らの提案が荒野を拓く原動力になっていたのだと,そのときあらためて強く感じたものです.

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次号予告

ページ範囲:P.1024 - P.1024

「作業療法ジャーナル」のお知らせ

ページ範囲:P.1075 - P.1075

文献抄録

ページ範囲:P.1084 - P.1085

編集後記

著者: 横田一彦

ページ範囲:P.1088 - P.1088

 先日,高校生の施設見学で職場の説明を引き受けました.ここ数年は個人的な申し込みばかりでなく,高校からの直接の申し込みも増えました.社会見学,進路検討の機会として,修学旅行とセットで行われることもあるようです.明確に意志を持ってくる方や「よくわからないけど来ました」という方もいてさまざまです.それでも自分が高校生のころを考えると,理学療法士の認知度は隔世の感があります.そんななか,質疑応答のとき一番狼狽えてしまう質問は,「この仕事のやりがいは何ですか」というものです.うまく言葉にできないことが多いのですが,いつもなんだか新鮮な気持ちにもしてくれます.読者の皆様ならどのようにお答えになりますか.

 さて,今月号の特集は「脊椎・脊髄疾患と理学療法」です.石川論文では,脊椎脊髄外科領域における近年の画像診断法,治療の進歩を概説していただきました.診断機器,治療機器の発展の様子が具体的に示されており,過去から現在への進歩を理解しやすくまとめていただきました.小俣論文では,頸椎・頸髄疾患について取り上げ,主として評価および頸部痛に対するストレッチングについて述べていただきました.田島論文では,胸腰椎・胸腰髄疾患の障害の概説と保存的治療並びに外科的治療後の理学療法についておまとめいただきました.竹井論文では,私たちが遭遇することの多い高齢者圧迫骨折を対象に,体幹装具の構造や活用方法について概説していただきました.診断機器や治療機器,治療方法などの進歩とともに,理学療法のあり方も進歩しているのか,という観点でも検証していかなければならないとあらためて感じました.

読者の声募集

ページ範囲:P. - P.

基本情報

理学療法ジャーナル

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1359

印刷版ISSN 0915-0552

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