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雑誌目次

雑誌文献

理学療法ジャーナル48巻12号

2014年12月発行

雑誌目次

特集 認知行動療法

EOI(essences of the issue)

ページ範囲:P.1091 - P.1091

 近年,抑うつ,心的外傷後ストレス障害(post traumatic stress disorder:PTSD),慢性疼痛などへの治療戦略として認知行動療法が注目されてきている.最近ではさらに,脳損傷例への適応報告も散見される.しかしながら,理学療法領域においてはその適応,具体的アプローチの方法,効果と限界についての知識は十分ではない.そこで,本特集では本誌初登場の企画として「認知行動療法」の基本的理解を得るための解説をお願いした.

認知行動療法の基礎と展望

著者: 大野裕

ページ範囲:P.1093 - P.1098

はじめに—認知行動療法の歴史的背景

 認知療法・認知行動療法(以下,認知行動療法)とは,認知のあり方に働きかけて情緒状態を変化させることを目的とした短期の構造化された精神療法であり,うつ病やパニック障害をはじめとする精神疾患の治療に効果的であることが明らかにされているだけでなく,身体疾患に伴う心理的負荷や日常のストレスを緩和するアプローチとしても有用であることが示されている1〜3)

 認知行動療法の基礎となる考え方である,人間が現実世界をありのままにではなくその人なりのフィルターを通して受け取っているという考え方は,ギリシア時代のストア学派がすでに指摘していることである.私たちはそれぞれ,自分を取り巻く世界からの情報を,そして自分の内部から発せられる刺激を選択的に知覚し,必要な場合には,過去の記憶も参考にしながら判断を下し,将来を予測する.またこの体験は,短期記憶として,さらには長期記憶として保存され,必要に応じて呼び出されることになる.

 こうした情報処理は,通常はほとんど意識されることなく適応的に行われているが,精神的に不調になると,それが思うように進まなくなる.そのことに注目したのが認知行動療法の創始者のBeck, A. T. である.うつ病の患者は,「集中できないし,物覚えも悪くなった.だから自分はダメな人間だ」(自分に対する否定的な考え),「自分は何一つおもしろい話もできなくて,こんな人間とつきあいたいと思う人なんていないだろう」(周囲に対する否定的な考え),「このつらい気持ちは一生続いて絶対に楽になんてならない」(将来に対する否定的な考え)といった考えに支配されている.この自己,世界(周囲),将来の3領域における悲観的な認知を,Beck, A. T. は,抑うつ状態に特徴的な否定的認知の3徴候(negative cognitive triad)と呼び,このように歪曲された認知過程/思考過程(distorted cognition/thinking)に注目することによって精神疾患の治療が効果的に行えることを明らかにした.

 Beck, A. T. は,患者が自分の意識のなかにつくり出している患者なりの現実に焦点をあてて,それを修正することで抑うつ患者を治療することを考えた.そして,これまでの伝統的な治療法の長所を巧みに取り入れて統合的精神療法に仕上げていった.

 例えば,患者の状態像を現象的に把握し,問題点を整理する場合には,伝統的な精神神経医学の記述論的視点を重視する.治療関係を形成し,維持していくうえでは,Rogersのクライエント中心療法などいわゆるヒューマニスティックな態度をとる.つまり,患者の持っている力を信じ,患者のありのままを温かく取り入れるのである.さらに,認知の歪みを同定し修正していく段階では,精神分析的な手法を用いる.特に,前意識(もしくは無意識)を意識化することによって患者の自分自身に対する理解を深めるいわゆる「局所論モデル」や,繰り返される特徴的な行動に焦点をあてて心的理解を深める「反復強迫」などの概念が認知行動療法モデルに影響を与えている.また,抑うつ患者の引きこもり傾向を,行動を通して打破していく段階では,さまざまな行動療法技法が用いられる.例えばそれは,段階的な行動課題の設定(graded task assignment)や日常の行動計画(daily activity schedule),系統的脱感作,漸進的弛緩法などである.

脳損傷例に対する認知行動療法

著者: 大嶋伸雄 ,   中本久之 ,   高山大輔 ,   小原朋晃 ,   下岡隆之

ページ範囲:P.1099 - P.1109

はじめに

 脳損傷患者のリハビリテーションにおける課題の多くは運動機能主体の問題点に帰結しがちであるが,実際の臨床場面では意識レベルから知的水準,そして意欲につながる患者の認知機能全般の回復に成否がかかっている場合が多い1).患者は“経験のない新しい知覚・感覚と身体図式”を分析〜解釈しながら,麻痺や感覚障害を伴う“新しい身体”をコントロールし,“慣れているはずの動作”を遂行するという錯綜課題を,しかもまだ混乱した意識水準のなかで再構築しなければならない複合課題の状況下にあると言える.つまり,多重の障害を持つ身体を駆使して目標課題を遂行するため,同時に反作用としていくつかの“挫折感”や“自己効力感の低下”という負の連鎖が患者自身を追い詰める状況にあり,突然,感覚的に異常な世界の住人となった患者が安定した心理状態に至るまで,ある程度の時間とケアが必要になる2,3,4)

 こうした患者心理は,表面的には仮面様顔貌のような反応でしか答えないため,なかなか読み取れないが,実際には多くの葛藤を抱えている2,3).その状態を放置したり,うつ症状を見逃したうえでさらに,トレーニング時に叱咤激励することなど常識ではあり得ないが,現実的にそうした状況がまったく把握されていない.また,患者—セラピスト間関係において,入院で“患者役割”に徹する患者と,患者心理をあまり考慮しない身体優先のトレーニング方法にもこうしたトラブルの原因があると思われる5,6)

 本稿では,そうした脳卒中患者の心理と,これまでにそうした視点・観点を持ち得なかったセラピストの課題や問題点に焦点をあて,認知行動療法(cognitive behavioral therapy:CBT)を応用した新しい患者—セラピスト間関係とそのトレーニング方法について言及したい.

 なお本稿では,アプローチの方法が若干異なる外傷性脳損傷については省略し,脳卒中患者に対するCBTアプローチを主体に構成した.

慢性疼痛に対する認知行動療法

著者: 中島恵子

ページ範囲:P.1111 - P.1117

はじめに

 リハビリテーション医療は,神経・筋・骨格系の運動障害を主な治療対象とするが,機能障害の診断,評価項目は,成長,発達,高次脳機能障害,排泄障害など多岐にわたっているため,機能障害から派生する能力低下,社会的不利の把握は重要である.治療は,機能障害の回復はもとより,機能障害による生活あるいは社会への不適応状態を改善し自立をめざすことにある.そのため,リハビリテーション医療は,身体障害への評価・トレーニングと心理・社会的障害への評価・トレーニングを同時に行うチーム医療である.

 病気や事故などの後遺症(障害など)から,これまでの人生の基盤となっていたさまざまな事柄を失うことによって生じる感情は多様である.「回復への願望」「挫折感」「閉塞感」「失望感」「不安感」「抑うつ感」「恐怖感」などの感情は,セルフエスティーム(自分の存在価値)を低下させることがある.このような心理・社会的障害には,適切な評価に基づく早期からの治療介入が必要である.

子供に対する認知行動療法

著者: 川端康雄 ,   元村直靖

ページ範囲:P.1119 - P.1126

はじめに

 1970年代の心理学的な理解では,子供にはうつ病をはじめとした気分障害を経験し得るだけの発達学的,心理学的な構造を持たないため,うつ病は存在しないと考えられていた1).そのため,気分障害は青年期以降の疾患として理解され,仮にそのような症状があったとしても,子供への認知的な介入は認知発達を必要とするため,効果は期待されておらず,実践報告は少なかった.しかし,1990年代後半にはさまざまな実証的効果研究により,認知行動療法(cognitive behavioral therapy:CBT)が子供のさまざまな症状や問題行動に有効であることが報告され,現在では最も効果的な介入法として各ガイドラインで広く推奨されるようになった2)

 小児期に不安やうつなどの精神症状を形成したり,トラウマを経験したりすると,成人になって症状や問題が遷延化,複雑化するリスクが高まることが知られており,この時期からの適切なケアと予防を行うことは,成人における精神疾患の予防や治療を考えるうえでもきわめて重要であると思われる.成人の不安障害患者に対する後ろ向き研究では,不安症状を呈している患者の約50〜80%が児童期から既に不安障害を有していたという報告がある3,4)

 子供はさまざまな出来事を経験するなかで試行錯誤的な学習を繰り返すことにより,出来事についてさまざまな予測を立てることができるようになり,その結果,固有の考え方のスタイルを構築すると考えられている.まだ独自の考え方のスタイルを十分に構築していない子供への介入は,成人と比較して効率的であると考えられる.そこで本稿では子供の心理的問題や認知的特性に触れ,CBTの各技法について解説したうえで,その実践例について紹介することとする.

がん医療における認知行動療法

著者: 上田淳子

ページ範囲:P.1127 - P.1133

はじめに

 がん患者・サバイバーに対する認知行動療法の場合には,広義の認知行動療法(ストレス・マネジメント技法やリラクセーション技法といったさまざまな認知・行動技法を含む認知行動療法的アプローチ)とBeck, A.T.の古典的行動理論に基づいた狭義の認知行動療法(認知再構成と行動活性の双方が含まれ,一般的には6セッション以上実施される)に区別される.広義・狭義ともに認知行動療法は,がん患者が抱えるさまざまな身体・精神症状(例えば,倦怠感,睡眠障害,疼痛,食欲低下,嘔気・嘔吐,呼吸困難・息切れ,不安,抑うつ)に対して有効であることが報告されている.

 本稿では,がん患者の身体・精神症状に対する広義・狭義の認知行動療法の効果についてレビューし,実践例を提示しながら,がん医療における認知行動療法の実際を紹介する.さらに,集学的治療(多職種チーム医療)が求められるがん医療において認知行動療法が果たす役割や課題についても論じる.

とびら

目標を決めて,新しい1年にチャレンジ!!

著者: 久保雅昭

ページ範囲:P.1089 - P.1089

 年末となり,今年の反省と来年の目標を考えている人も多いと思います.

 先日,渡辺知子一座のコンサートを聴く機会があり,エネルギーに満ち溢れたステージに大変感動しました.渡辺知子一座とは障害者とその介助者で構成される音楽グループで,「生きることの素晴らしさ,命の大切さを知ってほしい」というメッセージをコンサートで伝えてくれます.渡辺座長はコンサートのMCで目標設定の話題として,「入院中のリハビリテーション室の話」をされ,私には大変勉強になりました.渡辺座長は,隣にいた患者さんから「リハビリテーションを行ううえで,目標を持つことはどんな薬よりも効果がある」と聞き,その患者さんの取り組む姿勢に感動し,自分でも目標に向かって取り組んだ結果,ステージに復帰することができたそうです.その患者さんの目標とは孫と手をつないで歩くこと.そして,渡辺座長よりも早く退院され,お孫さんと手をつないでお見舞いに来てくれたそうです.

講座 脳・4

小脳の神経回路

著者: 筧慎治 ,   石川享宏

ページ範囲:P.1135 - P.1143

はじめに

 小脳は,運動制御および運動学習に重要な役割を果たしている.この古典的小脳像は,実験動物を対象にした厖大な基礎研究や,100年以上にわたる小脳疾患患者でのさらに厖大な臨床観察に基づく揺るぎないものである.しかし,議論の余地がないのはここまでである.運動制御や運動学習はきわめて広い概念である.小脳とよく対比される基底核も,運動制御と運動学習に重要な役割を果たしている点で変わりはない.そこで「小脳が運動制御や運動学習のどのような側面に,どのように関わっているのか?」さらに「それがどのような神経回路のメカニズムで実現されているのか?」という,より具体的な機能的問題に踏み込むと,定説と呼べるものがないのが現状である.

 一方,小脳を神経解剖学的な入力・出力関係に基づいて,前庭小脳,脊髄小脳,そして大脳小脳という3つの領域に分ける古典的区分に関しては,最新の神経解剖学的研究によるさらなる裏付けが得られており,小脳の基本構造としてかなり確かな部分である.

 そこで本稿では,最初に小脳全体に共通する入出力の基本回路について概観し,次いで,前庭小脳,脊髄小脳,大脳小脳の3つの機能領域のそれぞれにおける入力と出力の特殊性についてまとめ,各領域の障がいによる典型的臨床症状との関係についても触れる.最後に,ここ数年の最新の研究により現れつつある,小脳の新しい側面についても触れ,小脳の神経回路に関するアップデートとしたい.

1ページ講座 理学療法関連用語〜正しい意味がわかりますか?

バンドワゴン効果

著者: 西本加奈

ページ範囲:P.1145 - P.1145

 バンドワゴン効果(bandwagon effects)1)とは,アメリカの経済学者Harvey Leibensteinにより提唱された行動心理学原理の1つである.特定の商品やサービスに対し,その購入者や利用者が多ければ多いほど,大多数の人がよいと評価しているという判断がなされ,顧客の満足度や安心感が高まっていくという群集心理を指す.

 そもそもバンドワゴンとは,行列の先頭をいく楽隊車を意味し,そのバンドワゴンに乗るということは,時流に乗る,多勢に与するということを意味しており,バンドワゴン効果の背景には,個人の判断よりも集団の決定に従うという同調現象が影響しているとも言われる.一方で,流行しているという空気を醸成することにより,バンドワゴン効果が働きやすくなり,その製品やサービスへの支持がいっそう強まり,購買・支持行動に結びつくよう誘導することも可能であるともされる.

最近の患者会・家族会の活動

日本呼吸器障害者情報センター

著者: 岸田遼生

ページ範囲:P.1148 - P.1148

●設立の経緯と活動の趣旨

 元東京都呼吸器機能障害者団体(東京みどり会)会長であった故 遠山雄二氏が中心となり,2000年1月に日本の呼吸器疾患の患者団体として初めてNPO法人の認証を取得しました.呼吸器疾患患者の立場から,禁煙や慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmona-ry disease:COPD)の検診による早期治療の運動を,全国の患者会と連携し推進しています.患者会として,啓発や要望を実現すべく国へ働きかけることも重要な活動の1つです.2004年に,日本呼吸器学会とともに設立された「日本呼吸器疾患患者団体連合会」には,創立メンバーとして参画し,J-BREATHは設立15年となる現在に至るまで発展し続けています.

ひろば

高校生のスポーツ外傷・障害予防について思うこと—全国高校ハンドボール大会のトレーナーを経験して

著者: 岡田誠

ページ範囲:P.1146 - P.1147

 第37回全国高等学校ハンドボール選抜大会が,2014年3月25日(火)〜30日(日)の6日間にわたり,愛知県豊田市スカイホール豊田にて開催されました.男子41校,女子41校が出場して,大接戦のなか男子は沖縄県代表の興南高校,女子が東京都代表の佼成学園女子高校が優勝しました.出場校男女82校のうちトレーナーが参加した高校は,23校(男子12校,女子11校)で,そのなかで理学療法士は6名でした(主催者側資料参考).高校野球などは,日本理学療法士会の県士会レベルでサポート体制がありますが,高校ハンドボールではそのような体制もないため,上述のような人数になってしまっていると思われます.筆者はこの大会に,愛知県代表愛知県立松蔭高校のトレーナーとして参加しました.

 今回,ハンドボール部のトレーナーとして大会に参加することになったのは,松蔭高校と藤田保健衛生大学で協力して実施した高校生のスポーツ外傷・障害予防の活動がきっかけでした.運動部所属生徒のうち67.4%が何らかのスポーツ外傷・障害の要因をもっていることが筆者調査によりわかりました.この活動を通して,高校生,特に公立高校に在籍する生徒のスポーツ外傷・障害の現状を目の当たりにすることができました.

甃のうへ・第21回

私の仕事と子育て

著者: 岡本朱

ページ範囲:P.1149 - P.1149

 私は当院に勤めて12年目,単身赴任中の夫と義父,義母,子供3人(5歳,3歳の双子)の7人家族です.現在,回復期リハビリテーション病棟で2時間短縮という形で勤務させていただいています.

 長男出産後,復職してすぐに双子の妊娠がわかり,半年後にはまた産休という形で3年近く臨床から離れる時期がありました.2度目の復職のときは特に,また理学療法士として働くことに大きな不安を感じていました.それでも家族や職場の方々の理解と協力のおかげで,何とか毎日をしのぎながら過ごしているといった状況です.

入門講座 ICFを現場で使おう・4

生活援助

著者: 高尾哲也

ページ範囲:P.1151 - P.1158

はじめに

 生活援助とは何か.例えば,施設にて入所・通所中の方々に対する食事の介助,自然災害により被災した方々に対する義援金や生活用品の提供,などが想像されるが,これらの内容や度合は事例各々により異なり,各々の把握は容易でない.

 しかし,国際生活機能分類(International Classification of Functioning, Disability and Health:ICF)を基盤にし,ICFの要素それぞれを把握し,要素それぞれのつながりを理解することにより,各事例における生活援助の内容・度合の把握のほか,効果判定も可能となる.ICFは,患者や利用者と接する理学療法士にとって最高のツールになる.

 本稿では,ICFの総論や細部について記載し,症例を提示したうえで,ICFの活用方法や臨床効果について説明し,障害者支援施設における生活援助を再考する.

臨床実習サブノート 臨床実習における私の工夫・9

片麻痺症例のリスク管理

著者: 山下彰

ページ範囲:P.1159 - P.1165

はじめに

 脳血管障害片麻痺症例ではさまざまなリスクを要し,いくつかの特徴がみられる.急性期であれば多くは病院でのリハビリテーション施行になり,医学的情報が揃っているため最低限度の内科的リスクを事前に把握してから病室へ訪床できる.しかしながら,急性期以外ではどうであろうか.最近では,回復期に移行しても急性期と同様に内科的なリスクが多く見受けられる.これらの要因は内科的な観点から評価しているが,このほかにも脳血管障害片麻痺症例にとって大きなリスクがある.それは,弛緩性麻痺の状態からみられる麻痺側の肩の痛みである.

 疾患に関係なく,痛みは気分をどんどん落ち込ませ,他者が触れることすらできない状況の症例まで多く存在する.臨床上,肩の痛みで多く見受けられるのは夜間痛であり,「肩が痛くて目を覚ます」と言って,昼夜のリズムが逆転する引き金になったりすることで,思うようにリハビリテーションが進まず,バイタルにも影響し,いつまで経っても臥床を余儀なくされる症例も少なくない.

 また,片麻痺患者だけではないが,治療においては疲労の問題にも配慮が必要である.内科的リスクは他書でも多く述べられているため,本稿では割愛し,片麻痺患者のリスク管理として肩の痛み,疲労について述べていきたい.ただ,一概に肩の痛みと言っても,亜脱臼,廃用症候群,誤用症候群,肩手症候群,腱板損傷,腕神経叢損傷などさまざまな要因がある.本稿ではこのような問題を解決していくための背景知識をどのようにして勉強していけば問題解決の糸口につながるかを考えていきたい.よって,本稿の内容はマニュアルではなく問題解決のための勉強方法の例として位置づける.

新たな50年に向けて いま伝えたいこと・第9回

武富由雄

ページ範囲:P.1167 - P.1171

 私が大阪大学病院整形外科理療室に就職したのは1954年,理学療法士及び作業療法士法の制定前であり,理療師としてポリオの後遺症の患児や関節疾患を主とする整形外科手術の後療法を行っていました.当時は「リハビリテーション」という言葉は聞いたこともなかったですね.

 阪大病院でリハビリテーション旋風が巻き起こったのは,1960年に水野祥太郎先生が整形外科教授に就任されたころからです.当時のことで印象深いのは,1963年に第1回日本リハビリテーション医学会が大阪で開催されたときのことです.学会長を務める水野先生から,「そごう百貨店でリハビリテーションのPRをするから,君たち,ポスターを作れ」と言われたのです.英語の文献など資料を集め,終業後にポスターの下書きをして水野先生に見てもらうのですが,何も言わないで出ていかれる.駄目ということなんですが,それが何日も続くんですよ(笑).

お知らせ

第41回日本リハビリテーション工学協会車いすSIG講習会in別府

ページ範囲:P.1158 - P.1158

日 程:2015年1月24日(土)・25日(日)

会 場:社会福祉法人農協共済別府リハビリテーションセンター(大分県別府市鶴見1026-10)

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「理学療法ジャーナル」バックナンバーのお知らせ

ページ範囲:P.1117 - P.1117

「作業療法ジャーナル」のお知らせ

ページ範囲:P.1133 - P.1133

次号予告

ページ範囲:P.1165 - P.1165

文献抄録

ページ範囲:P.1172 - P.1173

編集後記

著者: 網本和

ページ範囲:P.1176 - P.1176

 木枯らしが吹き始め,ようやくデング熱をもたらす蚊の不安からは解放されたと思ったら,エボラ出血熱の脅威が忍び寄って,社会的不安が増してきている昨今の状況です.読者の皆様はいかがお過ごしでしょうか.

 さて本号の特集は「認知行動療法」です.EOIにも記しましたが,臨床心理領域ではすでに高いエビデンスを有するアプローチ法として知られる認知行動療法は,残念ながら理学療法領域では十分に理解されているとはいえません.そこで本邦の第一人者の先生方による解説をいただきました.

読者の声募集

ページ範囲:P. - P.

基本情報

理学療法ジャーナル

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1359

印刷版ISSN 0915-0552

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