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文献詳細

雑誌文献

理学療法ジャーナル48巻12号

2014年12月発行

文献概要

特集 認知行動療法

子供に対する認知行動療法

著者: 川端康雄1 元村直靖1

所属機関: 1大阪医科大学神経精神医学教室

ページ範囲:P.1119 - P.1126

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はじめに

 1970年代の心理学的な理解では,子供にはうつ病をはじめとした気分障害を経験し得るだけの発達学的,心理学的な構造を持たないため,うつ病は存在しないと考えられていた1).そのため,気分障害は青年期以降の疾患として理解され,仮にそのような症状があったとしても,子供への認知的な介入は認知発達を必要とするため,効果は期待されておらず,実践報告は少なかった.しかし,1990年代後半にはさまざまな実証的効果研究により,認知行動療法(cognitive behavioral therapy:CBT)が子供のさまざまな症状や問題行動に有効であることが報告され,現在では最も効果的な介入法として各ガイドラインで広く推奨されるようになった2)

 小児期に不安やうつなどの精神症状を形成したり,トラウマを経験したりすると,成人になって症状や問題が遷延化,複雑化するリスクが高まることが知られており,この時期からの適切なケアと予防を行うことは,成人における精神疾患の予防や治療を考えるうえでもきわめて重要であると思われる.成人の不安障害患者に対する後ろ向き研究では,不安症状を呈している患者の約50〜80%が児童期から既に不安障害を有していたという報告がある3,4)

 子供はさまざまな出来事を経験するなかで試行錯誤的な学習を繰り返すことにより,出来事についてさまざまな予測を立てることができるようになり,その結果,固有の考え方のスタイルを構築すると考えられている.まだ独自の考え方のスタイルを十分に構築していない子供への介入は,成人と比較して効率的であると考えられる.そこで本稿では子供の心理的問題や認知的特性に触れ,CBTの各技法について解説したうえで,その実践例について紹介することとする.

参考文献

1)Rie HE:Depression in childhood:A survey of some pertinent contributions. J Am Acad Child Psychiatry 5:653-685, 1966
2)Silverman WK, et al:The second issue on evidence-based psychosocial treatments for children and adolescents:A 10-year update. J Clin Child Adolesc Psychol 37:1-7, 2008
3)Pauls DL, et al:A family study of obsessive-compulsive disorder. Am J Psychiatry 152:76-84, 1995
4)Pollack MH, et al:Relationship of childhood anxiety to adult panic disorder:correlates and influence on course. Am J Psychiatry 153:376-381, 1996
5)石川信一,他:児童における不安症状と行動的特徴の関連—教師の視点からみた児童の社会的スキルについて.カウンセリング研究38:1-11,2005
6)下山晴彦:2精神療法の適用と留意点 C.認知行動療法.齊藤万比古(編):子どもの心の診療入門.pp240-247,中山書店,2009
7)Quakley S, et al:Can children distinguish between thought and behaviors? Behav Cogn Psychother 31:159-168, 2003
8)Weisz JR:Psychotherapy for children and adolescents:Evindece-based treatments and care examples. Cambridge University Press, Cambridge, 2004
9)JS.マーチ,他(著),原井宏明,他(訳):認知行動療法による子どもの強迫性障害治療プログラム—OCDをやっつけろ! 岩崎学術出版社,2008
10)石川信一,他:児童の不安障害に対する短期集団認知行動療法の効果.精神科治療学23:1481-1490,2008

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1359

印刷版ISSN:0915-0552

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