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臨床実習サブノート 臨床実習における私の工夫・9
片麻痺症例のリスク管理
著者: 山下彰1
所属機関: 1ボバース記念病院
ページ範囲:P.1159 - P.1165
文献購入ページに移動はじめに
脳血管障害片麻痺症例ではさまざまなリスクを要し,いくつかの特徴がみられる.急性期であれば多くは病院でのリハビリテーション施行になり,医学的情報が揃っているため最低限度の内科的リスクを事前に把握してから病室へ訪床できる.しかしながら,急性期以外ではどうであろうか.最近では,回復期に移行しても急性期と同様に内科的なリスクが多く見受けられる.これらの要因は内科的な観点から評価しているが,このほかにも脳血管障害片麻痺症例にとって大きなリスクがある.それは,弛緩性麻痺の状態からみられる麻痺側の肩の痛みである.
疾患に関係なく,痛みは気分をどんどん落ち込ませ,他者が触れることすらできない状況の症例まで多く存在する.臨床上,肩の痛みで多く見受けられるのは夜間痛であり,「肩が痛くて目を覚ます」と言って,昼夜のリズムが逆転する引き金になったりすることで,思うようにリハビリテーションが進まず,バイタルにも影響し,いつまで経っても臥床を余儀なくされる症例も少なくない.
また,片麻痺患者だけではないが,治療においては疲労の問題にも配慮が必要である.内科的リスクは他書でも多く述べられているため,本稿では割愛し,片麻痺患者のリスク管理として肩の痛み,疲労について述べていきたい.ただ,一概に肩の痛みと言っても,亜脱臼,廃用症候群,誤用症候群,肩手症候群,腱板損傷,腕神経叢損傷などさまざまな要因がある.本稿ではこのような問題を解決していくための背景知識をどのようにして勉強していけば問題解決の糸口につながるかを考えていきたい.よって,本稿の内容はマニュアルではなく問題解決のための勉強方法の例として位置づける.
脳血管障害片麻痺症例ではさまざまなリスクを要し,いくつかの特徴がみられる.急性期であれば多くは病院でのリハビリテーション施行になり,医学的情報が揃っているため最低限度の内科的リスクを事前に把握してから病室へ訪床できる.しかしながら,急性期以外ではどうであろうか.最近では,回復期に移行しても急性期と同様に内科的なリスクが多く見受けられる.これらの要因は内科的な観点から評価しているが,このほかにも脳血管障害片麻痺症例にとって大きなリスクがある.それは,弛緩性麻痺の状態からみられる麻痺側の肩の痛みである.
疾患に関係なく,痛みは気分をどんどん落ち込ませ,他者が触れることすらできない状況の症例まで多く存在する.臨床上,肩の痛みで多く見受けられるのは夜間痛であり,「肩が痛くて目を覚ます」と言って,昼夜のリズムが逆転する引き金になったりすることで,思うようにリハビリテーションが進まず,バイタルにも影響し,いつまで経っても臥床を余儀なくされる症例も少なくない.
また,片麻痺患者だけではないが,治療においては疲労の問題にも配慮が必要である.内科的リスクは他書でも多く述べられているため,本稿では割愛し,片麻痺患者のリスク管理として肩の痛み,疲労について述べていきたい.ただ,一概に肩の痛みと言っても,亜脱臼,廃用症候群,誤用症候群,肩手症候群,腱板損傷,腕神経叢損傷などさまざまな要因がある.本稿ではこのような問題を解決していくための背景知識をどのようにして勉強していけば問題解決の糸口につながるかを考えていきたい.よって,本稿の内容はマニュアルではなく問題解決のための勉強方法の例として位置づける.
参考文献
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