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甃のうへ・第11回
『声』
著者: 熊丸めぐみ1
所属機関: 1群馬県立小児医療センターリハビリテーション課
ページ範囲:P.150 - P.150
文献購入ページに移動30代半ばで成人病院から小児病院に異動して,1年半になる.この歳まで「声」が理学療法の武器になるとは思っていなかった.もちろん,成人病院時代も年配者にとって聞きやすい声のトーンや喋るスピードには留意していたが,正直,そこまで重要視していなかったと思う.もともと扁桃腺炎にかかりやすく喉を痛めやすかったが,ガラガラ声になると「カラオケの歌いすぎ」とか「お酒の飲みすぎ」といった冗談にかえて患者さんと笑いあっていたくらいだ.しかし,当たり前だが,子供たちにこの冗談は通じない.昨日までニコニコしていた子供が,ガラガラ声には誰ひとりとして振り向いてはくれないのだ.子供の興味もやる気も引き出すことができない,つまりは理学療法として成立しないことを意味する.ちょっとした敗北感をおぼえた瞬間だった.
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