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臨床実習サブノート 理学療法をもっと深めよう・11
高齢者の生活環境支援を理解する
著者: 河添竜志郎12
所属機関: 1株式会社くますま 熊本住まいづくり研究所 2たっく リハサポートセンター
ページ範囲:P.167 - P.172
文献購入ページに移動高齢者の生活支援というと難しく考えがちであるが,例えば,皆さんが自ら下肢のケガをし,歩行が困難な状態で自宅に退院しなければならないとしよう.病院で退院前にどんな支援をしてほしいだろうか.
例えば,松葉杖歩行で病院内のトイレを自立できたとする.その松葉杖を使用した歩行が,自宅の廊下の移動やトイレの扉の開閉,トイレのなかの空間の移動に適していなければ,病院だけでの自立となり退院後に不安を残す.入浴においては,浴槽の出入りに一部介助を要すレベルであった場合,病院では一部介助で可能と言われても,自宅に介助者がいなければ,不可能となってしまう.外出しようにも,更衣から靴の着脱,玄関の出入り,交通手段の確保とあらゆる行為が可能となって初めて実現できる.病院内での治療は,あくまでも自宅に帰ってからの生活が目的だと痛感するのであろう.
このように,病院での価値判断はそのまま自宅での生活とはなり得ない.このことからも,病院での対象者の生活支援を特別なことと思わず,身近な人に置き換えて考えると理解しやすい.しかし,実際には今あなたの隣にいる友人であっても,入浴を第一に考えるのか,外出を第一に考えるのか,価値観には違いかある.このことは十分に理解して支援する必要がある.また同様に,皆さんのような年齢の人たちと高齢者には,身体的機能ばかりではなく高齢者特有の特性も存在する.
今回は高齢者の在宅を支援するうえで知っておかなければならない点を,装具や福祉用具,住環境などの生活環境の整備という視点から考えてみる.
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