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文献詳細

雑誌文献

理学療法ジャーナル48巻3号

2014年03月発行

文献概要

特集 地域における理学療法のパラダイムシフト

成長期スポーツ選手の障害予防における理学療法士の活動と今後の展望

著者: 青木啓成1

所属機関: 1相澤病院スポーツ障害予防治療センター

ページ範囲:P.211 - P.219

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はじめに

 文部科学省では2010年8月に,スポーツ立国の実現に向けて必要となる施策の全体像を示す「スポーツ立国戦略」を策定した1).この戦略は,日本の「新たなスポーツ文化の確立」をめざし,人(する人,観る人,支える・育てる人)の重視と連携・協働の推進を基本的な考え方として,今後概ね10年間で実施すべき5つの重点戦略(表1),政策目標,重点的に実施すべき施策や体制整備の在り方などをパッケージとした広範囲をカバーするものとなっている.

 さらに2011年には「スポーツ基本法」1)が施行された.これは1961年に制定されたスポーツ振興法を50年ぶりに全面改正したものであり,スポーツに関し,基本理念を定め,国および地方公共団体の責務ならびにスポーツ団体の努力等を明らかにするとともに,スポーツに関する施策の基本となる事項を定めるものである.

 スポーツ振興法が1964年の東京オリンピックの開催を控えて制定され,施設設備等に主眼が置かれていたのに対し,スポーツ基本法は前文で「スポーツ立国の実現を目指し,国家戦略として,スポーツに関する施策を総合的かつ計画的に推進する」ことを謳い,スポーツの振興を国家戦略として位置づけている.

 特に,スポーツ立国戦略の5つの重点戦略のなかでは,「安心してスポーツ活動を行うための環境を確保するためにスポーツ医・科学を活用し,日常のスポーツ活動におけるスポーツ障害等を予防するため啓発活動や指導者の資質の向上を図る」と述べられている.さらに学校・運動部活動の充実においては地域の医療機関などの専門家等と連携をとることの必要性を示している.

 こうした国家戦略をもとに,われわれ理学療法士が地域で行うべき活動の目的は「スポーツを行う方々の心身の健康の保持増進および安全の確保が図られ,安心してスポーツ活動が行えるようにスポーツ障害・外傷を早期発見するとともに予防対策を講じるために,地域での連携・協働を図ること」であると考えられる.

 2020年の夏季オリンピックの開催都市が東京に決定した.これからの時代を担う成長期スポーツ選手の育成において,われわれ理学療法士は前述した戦略を念頭に置きながら,地域での活動を考えていくべきである.

参考文献

1)文部科学省:スポーツ立国戦略 http://www.mext.go.jp/a_menu/sports/rikkoku/1297182.htm(2013年12月20日閲覧)
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3)鳥塚之嘉,他:スポーツ医とスポーツ現場との良い連携を高校野球をモデルに―日本高校野球連盟で進めてきた成長期のスポーツ傷害予防対策.日臨スポーツ医会誌18:220-222,2010
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18)青木啓成,他:成長期型野球肘の保存的治療成績と体幹機能について.理学療法学38:OF2-061,2011
19)柏口新二,他:世界運動における筋・骨格系疾患の予防・治療戦略―スポーツによる骨軟骨障害の予防.THE BONE 19:407-412,2005

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1359

印刷版ISSN:0915-0552

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