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文献詳細

雑誌文献

理学療法ジャーナル48巻3号

2014年03月発行

文献概要

特集 地域における理学療法のパラダイムシフト

特別支援学校での障がい児・家族と学校教員に対する理学療法士の活動

著者: 小玉美津子1 鶴見隆正2

所属機関: 1神奈川県立麻生養護学校 2神奈川県立保健福祉大学リハビリテーション学科

ページ範囲:P.221 - P.228

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はじめに

 1994年のサラマンカ宣言(特別なニーズ教育に関する世界会議),障害者の権利条約採択(2006年)1),世界保健機関(World Health Organization:WHO)の総会での国際生活機能分類(International Classification of Functioning, Disability and Health:ICF)の採択(2001年)2)など,国際的動向とともにわが国における福祉,教育も大きく変化してきている.

 そのなかでも近年,脳性まひ児や小児の骨関節疾患に加えて,学習障害(learning disabilities:LD),注意欠陥多動性障害(attention-deficit/hyperactivity disorder:ADHD)などの発達障害児の教育に注目が集まっている.その児たちの病態,障害像は多様で,障害の重度・重複化が進み,特別支援学校に通学する児の人数は年々増加傾向にある.文部科学省によると,2013年6月時点で,特別支援学校に在籍する児数は12万8,425人に達している.このように特別支援学校に在籍する児が増加している背景には,養護学校義務化に加え,教育環境の整備などが挙げられる.そのなかでも2003年「今後の特別支援教育の在り方について(最終報告)」(特別支援教育の在り方に関する調査研究協力者会議)3)において,障害のある児に対する教育を特殊教育から特別支援教育へと教育の質を踏まえた教育システムに進化させ,さらに従来用いられてきた養護学校の名称を特別支援学校へと変更し,地域のセンター的機能を有するものとして位置づけた.また特別支援教育は,これまでの特殊教育の対象の障害だけでなく,発達障害を含む特別な支援を必要とする幼児児童生徒が在籍するすべての学校において実施されるものとなった.これがすべての子供を包み込む(include)教育システムを構築し,そのなかで一人ひとりのニーズに合った教育を展開しようとするインクルージョン教育の始まりとなる.中央教育審議会では「共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システム構築のための特別支援教育の推進」が2012年に報告され4),教育環境のユニバーサル・デザイン化やインクルーシブ教育の展開に向けた新たな取り組みが始まろうとしている.

 2009年に特別支援学校学習指導要領5)が改訂され,障害の重度・重複,多様化に対応するとともに,一人ひとりに応じた指導を充実するため「自立活動」の指導内容に新たな項目が追加された.また,重複障害者の指導にあたっては,専門的な知識や技能を有する教師間で協力して指導を行うことや外部の専門家を活用することが明記された6)

 このように,障害児を取り巻く教育システムは質的にも制度的にも変容しており,特に特別支援教育では,児の教育的観点のみでなく地域や生活場面までを視野に入れた取り組みが求められている.そこで本稿では,わが国における肢体不自由児の障害児教育の変遷を,教育制度と理学療法士のかかわりから解説し,さらに筆者がかかわっている神奈川県の障害児教育において理学療法士が自立活動教諭として配属されている現状について触れ,特別支援教育のパラダイムシフトについて論じる.

参考文献

1)外務省:障害者の権利に関する条約(仮訳文),2006 http://www.mofa.go.jp(2013年12月20日閲覧)
2)障害者福祉研究会(編):国際生活機能分類(ICF)―国際障害分類改定版,中央法規,2002
3)中央教育審議会:今後の特別支援教育の在り方について(最終報告),2003 http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/018/toushin/030301.htm(2013年12月20日閲覧)
4)中央教育審議会:共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システム構築のための特別支援教育の推進(報告).2012 http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/044/houkoku/1321667.htm(2013年12月20日閲覧)
5)文部科学初等中等教育局特別支援教育課:特別支援教育資料(平成20年),2009 http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/material/1279975.htm(2013年12月20日閲覧)
6)文部科学省:特別支援学校学習指導要領解説―自立活動編,海文堂出版,2009
7)浜田青志:障害児の治療と教育.理作療法13:215-220,1979
8)児玉和夫:肢体不自由児の疫学.総合リハ18:5-12,1990
9)木下賢治:障害児の治療に携わって―理学療法士の立場から.理作療法13:221-226,1979
10)竹内光春,他:座談会 養護学校教師とPT・OT.理作療法10:398-406,1976
11)上田信一:養護・訓練.理・作・療法13:239-244,1979
12)小玉美津子:特別支援学校における理学療法・士の関わりと展開.PTジャーナル45:479-485,2011
13)神奈川教育委員会:協働支援チーム宣言―自立活動教諭(専門職)とのチームアプローチによる支援が必要な子どもの教育の充実,2010 http://www.pref.kanagawa.jp/uploaded/attachment/172868.pdf(2013年12月20日閲覧)
14)神奈川教育委員会(資料):自立活動教諭(専門職)の手引き,2013
15)眞鍋克博:特別支援教育におけるリハビリテーションの現状と課題―リハビリテーション学科を有する大学に求められているもの.帝京科学大学紀要7:49-53,2011
16)糸永和文:大阪教育大学における動作訓練の実践.大阪教育大学障害児紀要29:9-19,2006
17)上田 敏:リハビリテーションの歩み―その源流とこれから,医学書院,2013
18)浜田青志,他:座談会 脳性まひ治療・訓練の歴史的経過と今後への課題.神奈川県立ゆうかり園・神奈川県立ゆうかり養護学校紀要・ 20周年特集号:39-46,1978
19)井上 保:理学療法.神奈川県立ゆうかり園・神奈川県立ゆうかり養護学校紀要11:7-11,1988
20)山口 薫,他:特別支援教育の展望,第3版,日本文化科学社,2004

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1359

印刷版ISSN:0915-0552

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