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雑誌目次

雑誌文献

理学療法ジャーナル48巻8号

2014年08月発行

雑誌目次

特集 慢性腎臓病と理学療法

EOI(essences of the issue)

ページ範囲:P.683 - P.683

 2002年に米国腎臓財団(National Kidney Foundation:NKF)が慢性腎臓病(Chronic Kidney Disease:KD)の概念を提唱してから10年が経過した.わが国ではCKD患者が1,330万人,国民全体の約13%(成人の8人に1人)がCKDと推計されており,CKDはまさに国民病といわれている.加えて,透析療法患者は30万例に達していることからも,CKDの末期腎不全への進展を阻止したり,心臓病や脳血管疾患発症の予防が重要視されている.さらに近年,代謝面や筋肉面への好影響から運動療法の重要性が注目されており,理学療法士の活躍が期待されている.CKDに対する理学療法が正しい認識のもと,広く拡散することを期待して本特集は企画された.

慢性腎臓病(CKD)を理解する

著者: 飯野靖彦

ページ範囲:P.685 - P.690

はじめに

 日本は世界で最も早く超高齢社会に突入する.内閣府の発表した高齢社会白書に示すように,2025年には日本の65歳以上の人口は30.3%になる(図1)1).つまり,3人に1人は高齢者であり,子供も含めた65歳未満の2人が1人の高齢者を支えていかなければならない.もう一つ日本に特徴的なことは,その高齢化速度がフランスなどの欧米社会に比較して5倍も速いことである.このことは慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)患者にも当てはまり,高齢化による腎機能低下患者数は増加し,血液透析患者の高齢化も問題になっている.したがって,CKD患者の自助努力は必須であり,そのためにもリハビリテーションの重要性が叫ばれている.

腎臓機能障害者のリハビリテーション

著者: 上月正博

ページ範囲:P.691 - P.698

はじめに

 わが国の慢性透析患者数は30万人を突破し,国民400人に1人の割合にまで高まった1).超高齢社会を反映して透析患者も年々高齢化し,2012年末の透析人口全体の平均年齢は66.87歳,2012年新規導入透析患者の平均年齢は68.44歳である.透析導入患者を年齢層で見てみると,男女とも75~79歳が最も多い1).本稿では,透析患者をはじめとする慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)患者における腎臓リハビリテーションについて概説する.

慢性腎臓病患者に対する理学療法の可能性

著者: 松沢良太 ,   松永篤彦

ページ範囲:P.699 - P.705

はじめに

 本邦における末期腎不全患者の多くは高齢,長期透析例であり,糖尿病や高血圧をはじめとする生活習慣病者の終末像であることから,疾患管理が極めて難しい.特に生活習慣病を原因として血液透析導入となった患者の場合,脳血管疾患,心大血管疾患あるいは運動器疾患を高頻度に合併している.また,透析導入前の慢性腎不全期にみられる身体不活動は日常生活活動に障害を来すだけでなく,腎機能障害の進行を早めることや死亡リスクの増加につながることも指摘されている.そのため,腎不全患者に対して理学療法士が介入する必要性は高いと言える.

 本稿では,末期腎不全患者および慢性腎不全患者に対する理学療法の役割や実施上の注意点について述べ,腎不全患者に対する理学療法の可能性について考えたい.

腎臓疾患患者に対する理学療法の実際

1.保存期慢性腎臓病(CKD)患者に対する理学療法

著者: 樋口謙次

ページ範囲:P.707 - P.712

はじめに

 慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)は,2002年に米国でその概念が提唱され,本邦におけるCKD患者は1,330万人と推定されている1).これは成人の8人に1人がCKD患者であることを示しており,国民病と言っても過言ではない.そのなかで,わが国における人工透析患者数は2011年12月で約30万人を突破し,さらなる患者数の増加が見込まれている.その自己負担費用は,自立支援医療制度により月額2万円以下(所得に準ずる)であるため,そのほとんどが公費にて負担されており,その額は年間約1兆円以上と報告されている2).2010年度の統計によると国民全体の医療費は約37兆円であるため3),医療経済学的に考えても透析患者の増加を抑えることは急務である.さらに,CKD患者は透析に至る前に脳卒中や心筋梗塞などの心血管病変(cardiovascular disease:CVD)を発症するリスクが高く,死亡に至る割合も高い4)

 この現状を考えると,生活習慣病の予防が昨今取り上げられるなか,CKDも同様に増悪予防の取り組みが必要と考えられる疾患と言える.

 本稿では,このような透析に至る前のCKD患者を保存期と捉え,保存期CKD患者に対して理学療法士ができる理学療法について,その可能性も含め解説する.

2.腹膜透析患者に対する理学療法

著者: 平木幸治 ,   井澤和大 ,   渡辺敏 ,   櫻田勉 ,   柴垣有吾 ,   木村健二郎

ページ範囲:P.713 - P.718

はじめに

 腹膜透析(peritoneal dialysis:PD)は,血液透析(hemodialysis:HD),腎臓移植と並び,末期腎不全に対する腎代替療法の一つである.わが国の透析患者数は,2011年に30万人を突破し,2012年末時点で31万7人と増加の一途をたどっている.そのうち,PD患者数は9,514人であり,全透析患者数に占める割合はわずか3.1%である1).過去のPD患者数も2002年で8,569人,5年前の2007年で9,362人と10年前と比較すると増加しているが,この5年ではその増加も横ばいで推移している.HD患者は年に数千人単位で確実に増加しているのに対し,PD患者数は増加していない.その理由として,教育や医療システムの不備,血液透析施設グループ化による影響,被囊性腹膜硬化症の危惧,医療政策面でのPD誘導の欠如,透析液と機械の開発や治験の停滞,およびPDに関する医療者の考え方などが挙げられている2)

 しかし,PDはHDと比較して生理的で持続的な透析方法であり,循環動態への影響が少ない.このことから,残存腎機能が維持されやすく,治療による拘束時間が少ないため透析導入前のライフスタイルを維持することが可能となり,QOLが保たれるなどの利点がある.特に,残存腎機能は死亡率の減少3)など生命予後に大きく寄与する重要な因子である.以上より,近年では残存腎機能を有する末期腎不全患者の治療として,PDを第一選択とするPDファーストの概念が提唱されている4).本邦では,2009年に日本透析医学会により「腹膜透析ガイドライン」が策定され,PDの普及に向けた取り組みが行われている5)

 本稿では,まずPDの透析方法や特有の合併症について解説し,次にPDの理学療法についてはわれわれの経験をもとに運動を実施する際の注意点を中心に述べたい.

3.血液透析患者に対する透析治療中に行う理学療法

著者: 河野健一 ,   西田裕介

ページ範囲:P.719 - P.728

はじめに

 慢性透析患者は国民の400人に1人の割合を超え1),理学療法士が血液透析患者を治療対象とする機会は今後も増加し続けるであろう.神経系疾患,運動器疾患,呼吸器疾患,心大血管疾患などいかなる対象を専門とする理学療法士であろうと,血液透析患者に対して理学療法を実施する機会はあるため,「私は内部障害が苦手,腎臓については国家試験以降勉強していないからよくわからない.透析って何?」という無責任な状況に陥らないような対処が必要である.

 では,次の症例に対してどのような理学療法を展開すればよいのだろうか.

 「73歳の男性.糸球体腎炎を原因疾患とする末期腎不全で血液透析歴25年.透析日は透析後に理学療法の実施を試みるが,倦怠感や低血圧にて十分に実施できていない.歩行は自立しているものの,疲労の訴えが強く長距離歩行が困難である.現病歴は,2014年○月○日,転倒にて右大腿部頸部骨折を受傷し,翌日,右大腿骨人工骨頭置換術を施行する.術後14病日に透析設備のある回復期B病院に転院し,術後20病日(本日),理学療法プログラムを再検討する」

 われわれは,この症例に対する「透析日」の理学療法プログラムとして,「血液透析治療中のレジスタンストレーニングと栄養指導」を提案する.本稿ではその理由について,入院透析患者に多くかかわっている理学療法士A氏から筆者が実際に受けた質問をもとに,「対話形式」にて臨床推論を進める際に必要な根拠を示しながら解説する.

とびら

繋げたい“轍・わだち”

著者: 清水和代

ページ範囲:P.681 - P.681

 今からちょうど15年前の1999年,本誌の「TREASURE HUNTING」欄(第33巻3号)に「3B体操で運動療法に新境地」と題して,私が臨床で取り組んでいた健康づくりを取り上げていただいたことがある.この掲載直後,予想もしていなかった手紙が全国から多数わが家に届くこととなり,その対応に慌てたことを思い出す.その当時,未開拓であった“健康づくり”に対する理学療法に取り組まれている方たちの熱意が,その手紙のすべてから伝わってきたことを今も印象深く覚えている.

 学校を卒業して15年あまり臨床で治療を経験した私は,産後間もなく自分の健康のために習い始めた体操を理学療法に取り入れたいと思うようになり,その指導者の資格を取得して本格的に臨床で実践していた.理学療法士以外の生涯スポーツ分野にかかわるようになったおかげで“レクリエーション”について学ぶ機会を得ることもできた.理学療法・体操・レクリエーション.この3つを融合させた“健康づくり”の方法論を,臨床を通して模索していたころだった.楽しいだけではなく,治療的効果を目的とした理学療法の一手段としての“体操やレクリエーション”である.

プログレス

腎移植の現状と課題

著者: 今井直彦

ページ範囲:P.731 - P.736

腎移植とは

 腎移植は末期腎不全患者の腎代替療法の一つである.末期腎不全患者に対する腎代替療法には,透析療法である血液透析と腹膜透析,そして腎移植の三つのオプションがあるが(図1),腎移植は透析療法と比較して患者予後やQOLの観点から優れた治療オプションである.つまり三つあるオプションの一つという位置づけではなく,本来むしろ第一選択である.

 腎移植の件数は右肩上がりに年々増加している(図2).しかし日本においては諸外国(欧米はもちろんのこと同じアジア諸国の韓国)と比べて腎移植が腎代替療法として選択される割合がまだ有意に少ないのが現状である(図3).

1ページ講座 理学療法関連用語~正しい意味がわかりますか?

ピグマリオン効果

著者: 只石朋仁

ページ範囲:P.737 - P.737

 ピグマリオン効果(Pygmalion effect)とは,教師の期待によって学習者の成績が向上するという,教育心理学上の行動をいう.自分が彫った女性の像に恋をし,妻にしたいという宿願がかなえられたギリシャ神話のピグマリオン王にその名が由来する.逆に,教師が期待しないことによって学習者の成績が下がることをゴーレム効果(Golem effect)という.

 アメリカの教育心理学者Robert Rosenthalは,小学生を対象に知能テストを実施し,将来能力が伸びる可能性がある児童名を教師へ伝えた.しかし,この知能テスト自体は能力向上が期待できる児童を見極めるものではなく,指名された児童はランダムに選ばれていた.半年後の知能テストで「伸びるとされた児童」で成績が向上していた.このことから,教師が期待することが児童の学習への意欲を高め,成績を向上させたと結論した.期待に基づく教師の行動が児童の学習意欲に影響を及ぼし,成績に影響したと考えられている.教師が児童に対し期待を込めて熱心にかかわることが両者の信頼関係を育み,児童は期待に応えようと意欲を高め,教師は期待通りの結果に近づくよう,力強く児童を導く行動をとる.この相互作用がピグマリオン効果の本質と思われる.

最近の患者会・家族会の活動

リウマチ患者の実態―『2010年リウマチ白書』より

著者: 長谷川三枝子

ページ範囲:P.741 - P.741

●設立の経緯

 日本リウマチ友の会は,1960年国立伊東温泉病院(現 伊東市立市民病院)で治療を受けた152人の患者により発足し,1970年に社団法人の認可を受けて社会的責任をもつ患者会となりました.

 以来「リウマチに関する啓発・リウマチ対策の確立と推進に関する事業を行い,リウマチ性疾患を有する者の福祉の向上に寄与すること」を目的に活動を続け,2012年4月に公益社団法人へ移行しました.

初めての学会発表

支えられて立てた舞台

著者: 堀川真里

ページ範囲:P.738 - P.740

 第49回日本理学療法学術大会は,山手の洋館や赤レンガ倉庫,中華街などで有名な開港の地ヨコハマで開催されました.晴天に恵まれた清々しい気候のなか,地元横浜で初めての学会発表を行い,得難い経験をしたのでご報告します.

甃のうへ・第17回

この道

著者: 橋本美樹

ページ範囲:P.744 - P.744

 「理学療法士になりたいのか否か? その気がないなら今すぐ辞めなさい」

 リハビリテーション学院に入学して1か月経ったころ,冷たい空気の流れる教官室に呼び出された私は,怖い顔の教官に静かにそう言われた.高校生気分が抜けない私には,これから歩む道がどんなものかイメージさえ湧かなかった.

入門講座 義肢装具の適合・4

下腿義足の適合

著者: 田仲勝一

ページ範囲:P.745 - P.753

はじめに

 近年の下腿義足ソケットでは,シリコン素材を中心としたライナーを用いる比率が高くなり,義足の適合は得られやすくなっている.一方で,下肢切断の原因として末梢動脈疾患(peripheral arterial disease:PAD)が増加しているが,このような内科的疾患には高齢者が多いこともあり,義足の適合には切断者側の身体機能,さらには生命予後も考慮すべきところである.本稿では,近年の下肢切断の動向から下肢切断者の身体的特徴について述べ,膝蓋靱帯体重支持方式(patellar tendon bearing:PTB)下腿義足と全面接触式(total surface bearing:TSB)下腿義足の適合について解説する.

ひろば

刷り込まれた文化の功罪―半世紀を迎えた日本の理学療法界の文化

著者: 奈良勲

ページ範囲:P.754 - P.754

 人間社会の文明化(産業化,技術改革など)以前に,人類の誕生以来それぞれの地域や国で種々の文化(英語:cultureラテン語:cultura,〈語幹〉colere)が育まれてきた.その本来の意味は,守る,手入れをする,耕す,さらに敬うなどである.16世紀初頭には広義の意味で,教育による知性の育成,そして19世紀には,精神面の向上を表す意味になってきた.日本では明治時代に若者を育成するため,西洋から学者らを招聘している.“Boys be ambitious”で有名なクラーク博士もその1人であった.ちなみに,日本の理学療法学教育の草創期には海外の教師を招聘していた.

 人類学の観点から文化の概念は,「広く民俗学で使われる文化,あるいは文明の定義とは,知識,信仰,芸術,道徳,法律,慣行など,人が社会の成員として獲得した能力や習慣を含む複合された総体」と表現されている.

講座 子供の理学療法・4

血友病

著者: 後藤美和

ページ範囲:P.755 - P.761

はじめに

 血友病患者に対する理学療法は主に関節機能障害や歩行能力,日常生活活動(以下,ADL)能力の改善を目的とする.本稿では血友病の病態と医学的治療,理学療法介入について概説する.

臨床実習サブノート 臨床実習における私の工夫・5

人工股関節全置換術後症例の評価から治療へ―泥沼から脱出するために,私ならこうする

著者: 藤井保貴

ページ範囲:P.764 - P.772

はじめに

 前回,人工股関節全置換術(total hip arthroplasty:THA)後の評価について私なりの考え方を述べたが,少しは役に立っただろうか? 今回はTHA術後の治療について述べていくが,当然のことながら変形性股関節症患者にとってTHAは最後の頼みの綱である.近年は機能的な機種に加え,手術も低侵襲となりTHA術後の成績は比較的良好で,経過が良ければ術後6~8週で退院となる.その際の歩行はおおよそT型杖歩行であるが,自宅内での移動や家事の際には徐々に杖なし歩行となることが多い.それは,理学療法によって能力が向上してきたこともあるが,生活に慣れてきたことによる油断によるものでもある.またTHAを受けるのは女性が多いことから,家事をはじめ両手を使いながらの活動が多いため,杖なし歩行の獲得が必要になってくる.転倒や脱臼といった二次的な障害を予防しつつ生活の質を向上させていくためにも,股関節機能のしっかりとした再獲得と,姿勢や動作バランスを含めた全身的な能力の向上をめざしていくべきである.前回,評価の際には「木を見て森を見ず」の表現を使ったが,治療の際には「木を育て,森を育てる」という視点で,股関節自体の治療と股関節外からの治療を併せて述べていく.

新たな50年に向けて いま伝えたいこと・第5回

望月圭一

ページ範囲:P.773 - P.777

 私が中学生のときに父が入院しました.その病院に,労災や交通事故による外傷の患者さんを対象に整形外科的な運動療法を行っている人がいて,「何かいいな」と思ったのがこの道に進むきっかけです.その方に「あなたのような仕事をするには,どうすればいいですか」と尋ねたところ,「一番多いのは,マッサージ師や鍼灸師の資格を持って病院に勤めている方だと思います」と言われました.偶然にも親戚に鍼灸・マッサージ師がいて,穏やかな印象があり,ああいう人になりたいなと思ったのと,父の具合が悪く早く手に職をつけて社会に出たいという気持ちもあり,マッサージ師の専門学校に進みました.

 その後,就職した太田総合病院には,当時としては珍しく,整形外科医が常勤していました.そして,東大整形外科の浜田三郎先生が顧問として指導に来られていた関係で,東大病院の理療師であった矢郷弥太郎先生が,東大整形外科理療室での1,2年の研修を終えた若い理療師の指導にあたっていました.そのころは,鍼灸師・マッサージ師などが大学病院の理療室で無給研修生として数年間治療の手伝いをしながら勉強し,教室の医師が関連病院に派遣されるときに一緒に派遣される場合が多かったのです.私はちょうど整形外科医が増え,理療師数が足りない状況下に卒業し,大学病院での研修を受けることなく就職したものですから,皆さんに一から教わりながら臨床経験を積みました.

報告

腰椎椎間板ヘルニア摘出術後の早期理学療法

著者: 石田和宏 ,   対馬栄輝 ,   佐藤栄修

ページ範囲:P.780 - P.786

要旨:[目的]本研究の目的は,われわれが行っている腰椎椎間板ヘルニア摘出術後早期からの積極的な理学療法介入(新プロトコル)の効果を検証することである.[方法]対象は,従来からの基本的な理学療法を受けた者20例(従来群)と新プロトコルとして術後早期からの積極的な理学療法介入を受けた者20例(新プロ群)の比較研究とした.評価項目は,疼痛の程度(Visual Analogue Scale:VAS),疼痛の範囲,日本整形外科学会判定基準(Japanese Orthopaedic Association[JOA]score),X線撮影像から判断した腰椎前彎角と腰仙角,介入前後の腰椎前彎角と腰仙角の改善率とした.評価時期は,術前,再開時,退院時,再来時とした.[結果]各評価項目で新プロ群と従来群の差を検討すると,再来時のVASおよび腰椎前彎角の改善率が新プロ群で有意に良好であった(p<0.05).多重ロジスティック回帰分析の結果では,VAS(オッズ比4.5),腰仙角の改善率(オッズ比1.3)が選ばれた(p<0.05).[結語]術後早期からの積極的な理学療法は,腰・仙椎のアライメントや痛みの改善に有効であると考える.

あんてな

第49回日本理学療法士協会全国学術研修大会(in埼玉)のご案内

著者: 清宮清美 ,   第49回日本理学療法士協会全国学術研修大会準備委員会

ページ範囲:P.787 - P.791

 第49回日本理学療法士協会全国学術研修大会は,2014年10月3日(金),4日(土)の2日間にわたり,埼玉県さいたま市の大宮ソニックシティ(図1)で開催します.埼玉県では,1997年に第32回日本理学療法士学会を開催して以来,次は全国規模の研修大会を開催することを懸案としてきました.17年の時を経て,ここに全国学術研修大会が開催できることを埼玉県理学療法士会会員一同光栄に思い,鋭意準備を進めています.

 埼玉県理学療法士会のロゴマークは,埼玉県行田市にある「さきたま古墳群」で発掘される勾玉をモチーフにしています(図2).勾玉には,「太陽と月が重なり合った形で幸運を呼び込む」との説があります.「臨床・教育・研究」の3色の勾玉に,自己を研鑽し,県民の医療・保健・福祉の増進に寄与する思いを込めました.本大会が,ご参加の皆さまにとってそれぞれの可能性を引き出す一助となり,具体的な目標を持って新たな一歩を踏み出す良い機会となることを願います.どうぞたくさんの皆様のご参加をいただきますよう,よろしくお願い申し上げます.

お知らせ

リハビリテーションプロフェッショナルセミナー2014(リハプロ2014)/東京臨床理学療法研究会第15回研究会/第2回 新潟医療福祉大学・夏期骨学セミナー/第24回日本保健科学学会学術集会/京浜理学療法研究会主催「臨床に活かすための動作分析~その臨床展開の実践~」/日本身体障害者補助犬学会第7回学術大会

ページ範囲:P.728 - P.790

リハビリテーションプロフェッショナルセミナー2014(リハプロ2014)
① 脳卒中機能評価セミナー・予後予測セミナー―一歩進んだリハビリテーションを実践するために

日 時:2014年9月6日(土)10:00~16:00

内 容:

 脳卒中機能評価セミナー:脳卒中リハビリテーションの適切な治療を実践するために推奨される機能評価セットを詳しく解説します.なぜ評価が必要なのか?から,臨床において具体的に用いるべき運動機能,感覚機能,高次脳機能などの評価法について,症例検討を交えながら詳しく解説します.

 脳卒中予後予測セミナー:従来の有用な脳卒中予後予測法から,最新の予後予測法の研究まで詳しく紹介します.さらに症例検討から具体的な使用方法を学びます.これらを通じて臨床にすぐ役立つ予後予測能力を身につけることをめざします.
② リハプログラムに生かす画像セミナー 見える!わかる!明日からリハビリが変わる!!画像が語るリスク管理からゴール設定まで

日 時:2014年9月7日(日)10:00~16:00(予定)

内 容:リハビリテーションの現場では,リハビリテーションプログラムにあたってリスク管理やゴール設定ために画像の評価が必要となります.このセミナーでは画像診断の基礎から疾患ごとの画像所見の評価方法まで解説します.

【以下,①② 共通】

会 場:兵庫医科大学(兵庫県西宮市武庫川町1-1)

書評

―森山英樹(編集)―「理学療法研究の進めかた―基礎から学ぶ研究のすべて」

著者: 伊藤俊一

ページ範囲:P.743 - P.743

 近年では大学院進学や留学の門戸が開かれ,多くの療法士がより詳細に基礎研究や臨床研究が行うようになった.しかし,依然として基礎研究と臨床研究に乖離があるとも言われている.特に理学療法は臨床研究をベースに発展してきた学問であり,その機能的メカニズムや変化を多くの基礎研究と融合して解明しなければ,医学的,社会的にも認められない.すなわち,臨床研究で得た結果のメカニズムを基礎研究で解明・証明すること,さらに基礎研究での結果を臨床研究に応用することで,初めて基礎研究と臨床研究の乖離が埋まりEvidence Based Physical Therapy(EBPT)の構築につながる真の理学療法研究となる.

 このたび,文光堂から出版された『理学療法研究の進めかた』は,前述した問題点が非常にわかりやすく整理されており,より具体的に研究活動の方向性とその実践を示してくれている研究を志す療法士必読の書である.

―石川 朗,内山 靖,新田 收(編集)―「臨床実習フィールドガイド(改訂第2版)」

著者: 奈良勲

ページ範囲:P.763 - P.763

 このたび,『臨床実習フィールドガイド』が第2版として改訂された.初版の刊行は2004年だが,学生が本書を臨床実習の遂行に際して座右の書として活用し続けてきたことを示唆している.これまでも,臨床実習に関する書籍は多く世に出ているが,本書の特色は,実習生に期待される「臨床思考過程」の体得・習得を重点的に基軸にした先駆的な企画内容と編集方針である.本書は,臨床実習施設で不安を抱きながら実習に取り組む学生を丁寧,かつ具体的にガイドする役割を果たしてきたものと思われる.

 昨今の医学的リハビリテーション領域の進歩,また職域の拡大に伴い,理学療法学・作業療法学教育においては,学生が学ぶべき情報量が増加することはあっても,減少することはない.限られた時間内で自らの知識と技術との理解度を深め,また臨床実習の準備を行う負担は大きい.そのため,学生の立場からすれば,具体的・実践的で即効性のある知識と技術とをわかりやすくまとめた書籍(いわゆる虎の巻)を求める傾向があるようだ.

―網本 和・長澤 弘(編集)―「理学療法チェックリスト(第2版)」

著者: 対馬栄輝

ページ範囲:P.779 - P.779

 近年の理学療法で扱う疾患は多様化し,また情報量も多くなり,私も臨床では戸惑うことがある.実習生となると,なおさらであろう.疾患名が何となく思い出せるものの明確には浮かんでこなかったり,何を評価したらよいかと迷ったり,大変なことは多いはずである.

 本書は,そのようなときの助けとなる.疾患の簡単な解説,情報収集,評価,理学療法プログラムなどの項目が箇条書きで述べられている.もちろん多くの書籍のように,必ずしも一つひとつの項目が詳細に解説されているわけではない.いわゆる教科書のようなものとは異なる構成であり,何を評価すべきかのチェックリスト形式である.臨床で扱う主要な疾患はもちろん,疼痛,運動失調,姿勢障害などの障害別にも解説されている.第3章の「シーン別」のところでは,私もうっかり忘れてしまいそうなポイントが述べられてある.確かに詳細に述べられているわけではないが,どういった情報を得るべきかの要点は押さえられている.用語は豊富に掲載されているので,後でさらに詳細な文献を読むなどのキーワード集としても活用できる.日々の臨床で何度も読み返して練習すれば,体系立った知識が自然に身に付くはずである.

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次号予告

ページ範囲:P.705 - P.705

「作業療法ジャーナル」のお知らせ

ページ範囲:P.718 - P.718

文献抄録

ページ範囲:P.792 - P.793

編集後記

著者: 高橋哲也

ページ範囲:P.796 - P.796

 最近,「健康寿命」という言葉をよく耳にするようになった.「健康寿命(healthy life expectancy)」とは,2000年に世界保健機関(WHO)が提唱し,「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」と定義されている.WHOの保健レポートでは,日本人の健康寿命は世界第1位と報告されているが,健康寿命と平均寿命との差は,「不健康な期間」を意味し,医療費や介護給付費の消費が増大することから,社会保障費が漸増するわが国においては,持続可能な社会保障制度にするためにも,健康寿命の延伸は国を挙げた命題となっている.

 本号の特集は「慢性腎臓病と理学療法」がテーマである.まず,慢性腎臓病が成人人口の13%(1,330万人)もいることや透析患者数の増加と透析にかかる医療費(1.5兆円)は驚愕である.また,ステージ3の患者の4分の1が心筋梗塞や脳卒中で亡くなることは,慢性腎臓病患者に対する運動療法の重要性を強く意識させてくれる(飯野論文).透析中の運動療法は定着してきたが,運動療法の腎保護作用は,透析導入を遅らせるという可能性を秘めていることをわれわれはもっとよく理解するべきであろう(上月論文,松沢論文).保存期慢性腎臓病に対する理学療法(樋口論文),腹膜透析患者の理学療法(平木論文),透析治療中に行う理学療法(河野論文)については,それぞれ最前線の臨床家の手によって,より具体的な内容にまとめられている.タイミングよく,プログレスには腎移植について(今井論文),入門講座には腎臓病とは決して無関係でない下腿義足の適合について(田仲論文)掲載することができた.慢性腎臓病患者の理学療法をどうやるか,というHow toを理解しながら,理学療法を通じて,症状の悪化や心血管疾患などの発症予防と健康増進,介護予防などを実現し,平均寿命と健康寿命の差を短縮し,個人の生活の質の低下を防ぐことが,社会保障負担の軽減にもつながることから,どのような疾患を対象にするにしても,健康寿命の延伸という究極の目標は常に眼前に置いていたいものである.

読者の声募集

ページ範囲:P. - P.

基本情報

理学療法ジャーナル

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1359

印刷版ISSN 0915-0552

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