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文献概要
特集 姿勢と歩行—理学療法士の診るべきこと
姿勢と歩行の成り立ちと運動制御
著者: 石井慎一郎1
所属機関: 1神奈川県立保健福祉大学保健福祉学部リハビリテーション学科
ページ範囲:P.5 - P.13
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ヒトの移動様式は脊柱と後脚が直立した姿勢を基本姿勢として,二本の脚を交互に振り出して推進する直立二足歩行である.地球上には多種多様な生物が存在しているが,直立二足歩行が可能な生物はヒト以外に存在しない.ペンギンやダチョウ,サルなど,後脚で二足歩行を行う生物が存在しないわけではない.しかし,ヒト以外の生物の二足歩行では,脊柱と大腿が鉛直軸に対して傾斜しており,膝関節が屈曲した状態で体重を支持している(図1).したがって,これらの生物の二足歩行は直立二足歩行とは呼ばない.直立二足歩行は,ヒトだけにみられる極めて特異的な移動様式だと言える.
生物の解剖学的特徴は移動様式と密接な関係がある.その生物が生息する環境と重力場の影響が外圧となり,適応条件として選択された移動様式が進化の指向性を決定する.筋骨格系の進化は,そうした力学対応の結果として生じたものである.最近の研究結果から,ヒトの祖先は初めから直立二足歩行をめざして進化したのではなく,直立姿勢への適応という段階を経て,その結果として直立二足歩行が可能になったと考えられている1).つまり,ヒトの姿勢と歩行の成り立ちは,重力場に対して姿勢を直立化させ,前肢を体重支持から完全に解放する指向性に基づいているということである.したがって,ヒト固有の移動様式である直立二足歩行の成り立ちを知るためには,姿勢が直立化した意味と,その成り立ちについて知る必要がある.
ヒトの移動様式は脊柱と後脚が直立した姿勢を基本姿勢として,二本の脚を交互に振り出して推進する直立二足歩行である.地球上には多種多様な生物が存在しているが,直立二足歩行が可能な生物はヒト以外に存在しない.ペンギンやダチョウ,サルなど,後脚で二足歩行を行う生物が存在しないわけではない.しかし,ヒト以外の生物の二足歩行では,脊柱と大腿が鉛直軸に対して傾斜しており,膝関節が屈曲した状態で体重を支持している(図1).したがって,これらの生物の二足歩行は直立二足歩行とは呼ばない.直立二足歩行は,ヒトだけにみられる極めて特異的な移動様式だと言える.
生物の解剖学的特徴は移動様式と密接な関係がある.その生物が生息する環境と重力場の影響が外圧となり,適応条件として選択された移動様式が進化の指向性を決定する.筋骨格系の進化は,そうした力学対応の結果として生じたものである.最近の研究結果から,ヒトの祖先は初めから直立二足歩行をめざして進化したのではなく,直立姿勢への適応という段階を経て,その結果として直立二足歩行が可能になったと考えられている1).つまり,ヒトの姿勢と歩行の成り立ちは,重力場に対して姿勢を直立化させ,前肢を体重支持から完全に解放する指向性に基づいているということである.したがって,ヒト固有の移動様式である直立二足歩行の成り立ちを知るためには,姿勢が直立化した意味と,その成り立ちについて知る必要がある.
参考文献
1)Thorpe S, et al:Origin of human bipedalism as an adaptation for locomotion on flexible branches. Science 316:1328-1331, 2007
2)Sockol MD, et al:Chimpanzee locomotor energetics and the origin of human bipedalism. Proc Natl Acad Sci U S A 104:12265-12269, 2007
3)Isabelle CW, et al:Human bipedalism and the importance of terrestriality. Antiquity 88:915-916, 2014
4)葉山杉夫:サルにおこった腰の革命—猿まわしのサルのからだに生じた変化とは.アニマ154:79-83,1985
5)Miomir V:On the stability of anthropomorphic systems. Mathematical Biosciences 15:1-37, 1972
6)本田技研工業株式会社広報部.The Honda HUMANOID ROBOT ASIMO.広報資料,2000
7)長谷川由理:歩行中のつまずきに対する転倒回避のメカニズムについて 身体重心加速度と回転力の変化に対する姿勢制御.理学療法学40:P-A基礎-230,2013
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