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入門講座 臨床に活かす理学療法研究・6
データベースを活かしたリハビリテーション医学研究
著者: 杉山統哉1 江口雅之1 原田康隆1 近藤克則2 田中宏太佳3
所属機関: 1独立行政法人労働者健康福祉機構中部労災病院中央リハビリテーション部 2千葉大学予防医学センター環境健康学研究部門 3独立行政法人労働者健康福祉機構中部労災病院リハビリテーション科
ページ範囲:P.933 - P.941
文献購入ページに移動多くの臨床ガイドラインでは,根拠にしたエビデンスの質の高さをいくつかのレベルに分けて評価している.例えば,「脳卒中治療ガイドライン2009」1)のエビデンスレベルに関する分類(表1)では6段階に分けられ,無作為化臨床試験(randomized clinical trial:RCT)によるエビデンスが高いレベルに位置づけられている.ところがリハビリテーション医療にはほかの領域に比べ,RCTが行いにくい2).薬剤の効果を捉えるのに比べ,リハビリテーション医療の場合は多職種チームによる介入であり,退院後の生活再建という長期的な効果も期待されていることなどがRCTを行いにくくしている.
一方,RCTにも弱点がある.選択基準を満たす対象者における内的妥当性は高いが,選択基準外の対象者や他施設・条件下でも,その結果が当てはまるという外的妥当性は保障されていない.したがって,RCT以外のリハビリテーション医療に適した研究デザインによる研究も必要である.その1つの方法が,大規模データベースを活用した研究である3).多施設共同で多数のリハビリテーション患者データが蓄積された日本リハビリテーション・データベース協議会(Japan Association of Rehabilitation Database:JARD)4)のデータベース(database:DB)を利用すると,「よくデザインされた比較研究」になり得る5).それによってRCTの次にレベルが高いエビデンスづくりができる可能性がある(表1).
このJARDのデータを利用した研究論文が徐々に増えている.以前はデータ提供施設でなければ,データ利用ができなかった.今は,データ提供施設でなくても,日本理学療法士協会の会員で,研究計画が協会の公募で採択されれば,協会を通してデータを利用し,その研究結果を論文にすることも可能である.
本稿では,JARDの概要,データの利用プロセスの概要,JARDのデータを利用し現在までに発表された研究を筆者の研究も含め紹介する.
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