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文献詳細

雑誌文献

理学療法ジャーナル49巻10号

2015年10月発行

文献概要

入門講座 臨床に活かす理学療法研究・6

データベースを活かしたリハビリテーション医学研究

著者: 杉山統哉1 江口雅之1 原田康隆1 近藤克則2 田中宏太佳3

所属機関: 1独立行政法人労働者健康福祉機構中部労災病院中央リハビリテーション部 2千葉大学予防医学センター環境健康学研究部門 3独立行政法人労働者健康福祉機構中部労災病院リハビリテーション科

ページ範囲:P.933 - P.941

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はじめに

 多くの臨床ガイドラインでは,根拠にしたエビデンスの質の高さをいくつかのレベルに分けて評価している.例えば,「脳卒中治療ガイドライン2009」1)のエビデンスレベルに関する分類(表1)では6段階に分けられ,無作為化臨床試験(randomized clinical trial:RCT)によるエビデンスが高いレベルに位置づけられている.ところがリハビリテーション医療にはほかの領域に比べ,RCTが行いにくい2).薬剤の効果を捉えるのに比べ,リハビリテーション医療の場合は多職種チームによる介入であり,退院後の生活再建という長期的な効果も期待されていることなどがRCTを行いにくくしている.

 一方,RCTにも弱点がある.選択基準を満たす対象者における内的妥当性は高いが,選択基準外の対象者や他施設・条件下でも,その結果が当てはまるという外的妥当性は保障されていない.したがって,RCT以外のリハビリテーション医療に適した研究デザインによる研究も必要である.その1つの方法が,大規模データベースを活用した研究である3).多施設共同で多数のリハビリテーション患者データが蓄積された日本リハビリテーション・データベース協議会(Japan Association of Rehabilitation Database:JARD)4)のデータベース(database:DB)を利用すると,「よくデザインされた比較研究」になり得る5).それによってRCTの次にレベルが高いエビデンスづくりができる可能性がある(表1).

 このJARDのデータを利用した研究論文が徐々に増えている.以前はデータ提供施設でなければ,データ利用ができなかった.今は,データ提供施設でなくても,日本理学療法士協会の会員で,研究計画が協会の公募で採択されれば,協会を通してデータを利用し,その研究結果を論文にすることも可能である.

 本稿では,JARDの概要,データの利用プロセスの概要,JARDのデータを利用し現在までに発表された研究を筆者の研究も含め紹介する.

参考文献

1)脳卒中合同ガイドライン委員会:脳卒中治療ガイドライン2009.協和企画,2009
2)里宇明元:〔21世紀のリハビリテーション医学・医療〕医療システム—リハビリテーション医学とEBM.医学のあゆみ203:590-596,2002
3)近藤克則,他:〔リハビリテーションにおける帰結研究 脳卒中を中心に〕実践例—研究手法の紹介 大規模データベースとデータバンク.総合リハ36:23-27,2008
4)日本リハビリテーションデータベース協議会 http://square.umin.ac.jp/JARD/index.html/(2015年5月20日閲覧)
5)近藤克則:データベースマネジメント データ・マネジメント・システムの概要と課題.Jpn J Rehabil Med 49:73-78,2012
6)リハビリテーション患者データバンク http://rehadb.umin.jp/(2015年5月20日閲覧)
7)近藤克則,他:リハビリテーション患者データベースの二次分析—プロセス,可能性と限界.Jpn J Rehabil Med 49:142-148,2012
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9)徳本雅子,他:脳卒中急性期リハビリテーションにおける作業療法の意義.日職災医誌59:276-280,2011
10)曽川裕一郎:脳卒中患者における深部静脈血栓症の実態調査—日本リハビリテーション医学会リハビリテーション患者データベースの分析.Jpn J Rehabil Med 49:137-141,2012
11)Iwai N, et al:Discharge index and prediction for stroke patients in the post-acute stage:Evaluation of the usefulness of Nichijo-seikatsu-kino-hyokahyo. Jpn J Compr Rehabil Sci 3:37-41, 2012
12)杉山統哉,他:急性期脳卒中患者の歩行自立度と社会的サポートの関連—リハビリテーション患者データバンクの多施設登録データを用いた研究.総合リハ41:161-169,2013
13)Jeong S, et al:An evaluation of the quality of post-stroke rehabilitation in Japan. Clinical Audit 20:59-66, 2010
14)Jeong S, et al:Formula for predicting FIM for stroke patients at discharge from an acute ward or convalescent rehabilitation ward. Jpn J Compr Rehabil Sci 5:19-25, 2014
15)徳永誠,他:研究と報告 脳卒中回復期における訓練時間とFIM利得との関係—日本リハビリテーション・データベースの分析.総合リハ42:245-252,2014

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1359

印刷版ISSN:0915-0552

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