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甃のうへ・第31回
共に感じ,進む
著者: 中山裕子1
所属機関: 1新潟中央病院リハビリテーション部
ページ範囲:P.1022 - P.1022
文献購入ページに移動 数年前,Hさんという患者さんが入院してこられました.腰部脊柱管狭窄症の急性増悪で数日のうちに両下肢麻痺が急激に進行し,入院時には移乗や座位保持も困難な状況になっておられました.Hさんは50歳台後半の男性で,重篤な症状にもかかわらず,明るくおどけたような表情が印象的な,いわゆる「おやじ」さんで,周囲を気遣い深刻な面を敢えて見せない方でした.手術後,積極的理学療法が開始され,後輩の理学療法士が担当し,私も代理で時々かかわらせていただいていました.術後も重度の下肢麻痺と腰痛があり,ご本人にとって大変な時期が続いていました.
移乗が介助で可能になってきたある日,さらに動作を安定化させて,トイレでの排泄をと説く私に,Hさんは「オレは小のほうは座っては嫌なんだ,女になったみたいで」とこれまでの意欲的な様子とは一転,苦々しい表情で訴えてこられました.私は,「じゃあ,立って用が足せるようにしましょう」と,その場を取り繕うように言い切ってしまいました.運動麻痺の回復を考えるとずいぶん先の目標になるであろうことは後から考え直しましたが,後輩である担当にもそのやり取りのことを伝え,その後理学療法を進めていきました.
移乗が介助で可能になってきたある日,さらに動作を安定化させて,トイレでの排泄をと説く私に,Hさんは「オレは小のほうは座っては嫌なんだ,女になったみたいで」とこれまでの意欲的な様子とは一転,苦々しい表情で訴えてこられました.私は,「じゃあ,立って用が足せるようにしましょう」と,その場を取り繕うように言い切ってしまいました.運動麻痺の回復を考えるとずいぶん先の目標になるであろうことは後から考え直しましたが,後輩である担当にもそのやり取りのことを伝え,その後理学療法を進めていきました.
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