報告
後方安定型人工膝関節全置換術患者の脛骨前方弛緩性と膝関節可動域および臨床症状との関連について
著者:
近藤淳
,
沼田純希
,
安東陽子
,
永塚信代
,
糟谷紗織
,
井上宜充
ページ範囲:P.1147 - P.1152
要旨:〔目的〕本研究の目的は後方安定型人工膝関節全置換術(posterior stabilized TKA:PS-TKA)後患者における脛骨前方弛緩性と膝関節可動域・臨床症状との関連を検討することである.〔方法〕対象はPS-TKAを施行された術後患者23例28膝とした.脛骨前方弛緩性としてKS-measureを使用し,膝屈曲20°・50°・80°で脛骨前方移動量を測定した[以下,20°anterior tibial translation(AAT)・50°AAT・80°AAT].膝関節可動域の測定は膝関節伸展屈曲可動域を他動で行った.臨床症状の調査はKnee injury and Osteoarthritis Outcome Scoreのなかの症状と疼痛(以下,KOOS-疼痛)の下位尺度を使用した.各脛骨前方移動量と各関節可動域・臨床症状の相関にSpearman順位相関係数検定を使用した.〔結果〕膝関節伸展可動域と20°AAT[(Spearman's rank Correlation Coefficient:rs)=0.56]・50°AAT(rs=0.51)で正の相関があった.膝関節屈曲可動域と20°AAT(rs=0.48)・50°AAT(rs=0.53)・80°AAT(rs=0.72)で正の相関があった.80°AATとKOOS-疼痛(rs=−0.41)に負の相関があった.〔結論〕PS-TKAでは脛骨前方弛緩性の増大と膝関節可動域の拡大に関連があることが示唆された.しかし脛骨前方弛緩性の増大と疼痛の増悪との関連もあった.