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雑誌目次

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理学療法ジャーナル49巻3号

2015年03月発行

雑誌目次

特集 大規模災害の支援・防災活動—大震災からの学び

EOI(essences of the issue)

ページ範囲:P.187 - P.188

 阪神・淡路大震災から20年,東日本大震災から4年を迎え,当時の悲惨で壊滅的な状態の記憶や防災に対する意識が風化していることは否めない.理学療法士界はこれまで震災直後から組織的に,個人的に支援活動にかかわり,災害時の支援のあり方を体験的に学んできた.本特集では,今後も起こり得る大規模自然災害に対する支援活動や防災に向けた取り組みに焦点をあて,これまでの震災支援からの学びを活かした災害理学療法のあり方,防災活動の現状と方向性を提示した.

大規模災害時の日本理学療法士協会としての支援体制と理学療法・士の役割

著者: 梶村政司

ページ範囲:P.189 - P.195

はじめに

 わが国では,自然災害といわれる「災害」を数多く経験し,今ようやくリハビリテーション専門職の体制が整備されているのか確認できる機会を迎えるに至った.

 これまでリハビリテーション専門職による「大規模災害」とのかかわりは,阪神・淡路大震災時(1995年1月17日)であった.しかし,この災害ではリハビリテーション専門職のチームによる支援は行われていなかった.その後,16年を経て2011年3月11日に東日本大震災が発生した.それから早いもので4年が過ぎ,この間わが国で発生した「災害」はいくつニュースとして飛び込み,またどれほどの人が直接あるいは間接的に災害にかかわっただろうか.同時にその大震災後,日本国民の災害に対する意識は確実に高まり,国が公表する災害被害を想定(数値化)した内容に一喜一憂し,日常の話題には事欠かなくなってきている.

 本稿では,全国的かつ多職種の団体で構成されたわが国初の災害リハビリテーション支援組織である大規模災害リハビリテーション支援関連団体協議会(Japan Rehabilitation Assistance Team:JRAT)を紹介する.また,「理学療法・士」に焦点をあて,普段から生活の視点をもつ重要性や,今後の課題を述べる.

災害派遣医療チーム(DMAT)における理学療法士の支援活動

著者: 浅野直也 ,   冨岡正雄 ,   小早川義貴 ,   近藤和泉

ページ範囲:P.197 - P.204

はじめに

 筆者は理学療法士になり十数年経つが,災害医療はまったく興味のない分野だった.しかし,災害派遣医療チーム(Disaster Medical Assistance Team:DMAT)指定医療機関でもあった独立行政法人名古屋医療センターに在籍中に「災害研修」を受け,災害・DMATに関心を持ち始め,その後,「愛知DMAT」「日本DMAT」研修を受講し日本DMATの隊員になった.本稿では,DMATの概要を紹介するとともに,DMATと理学療法士とのかかわりについて述べる.

県士会(公益法人)の地域支援・防災システム構築と理学療法・士の役割

著者: 下田栄次 ,   隆島研吾

ページ範囲:P.205 - P.212

はじめに

 甚大な被害をもたらした東日本大震災を教訓に,南海トラフ巨大地震,首都直下型地震に限らずその他の大規模災害に備えるべく,防災・減災の観点から災害時のリハビリテーション(以下,災害リハビリテーション)支援,災害時理学療法・士の役割を早急に整備していく必要がある.

 今回,大規模災害時の公益社団法人神奈川県理学療法士会(以下,本会)における災害支援体制,地域支援・防災システム,ネットワークづくりについて概説する機会を得た.本稿では,災害対策委員会の設置経緯から現在展開している事業について,また組織的な支援体制のあり方や,災害時における理学療法・士の役割,今後の課題についても考察したい.

大規模災害発生時の医療機関の緊急対応システムと理学療法・士の役割

著者: 冨山陽介

ページ範囲:P.213 - P.219

はじめに

 2011年3月11日の東日本大震災以降も多くの大規模災害が日本を襲っている.2014年の広島県広島市での大規模な土砂崩れも多くの罹災者を生み出した.日本において大規模災害は決して稀ではない.

 東日本大震災直後,当院は救急医療に追われた.その後,避難所や仮設住宅への支援を行った.現在,当院では津波被害に遭った近隣の自治体に理学療法士が健康相談会の一員として参加している.仮設住宅は今もまだ残っており,復興にはまだまだ時間がかかると予想される.一度起こった災害から復興するには非常に長い時間がかかり,その過程でリハビリテーションはさまざまな任務を担うことになる.災害時のリハビリテーションチームのあり方は多くの論点を含むが,自分の施設が被災したら,あるいは近隣が被災した場合にどのように行動すべきかがまず問われるべきだろう.

 本稿では,災害発生後数日までのいわば被災混乱期にリハビリテーションチームに求められることについて,当院の経験に基づいて述べる.

東日本大震災および東京電力福島第一原子力発電所事故による福島県南相馬市の現状と課題—南相馬市立総合病院リハビリテーション科の支援活動

著者: 小野田修一

ページ範囲:P.221 - P.226

 東日本大震災および東京電力福島第一原子力発電所(以下,原発)事故で被災された皆様に,心よりお見舞い申し上げます.また福島県南相馬市をご支援くださった皆様にあらためて感謝いたします.


はじめに

 2011年3月11日の東日本大震災により発生した原発事故は,1986年に起きたチェルノブイリ原子力発電所事故同様,国際原子力事故評価尺度で最も深刻な「レベル7」に相当する.筆者の勤務地のある南相馬市も,多くの住民が政府の指示で強制避難を強いられ,今なお放射線という見えない脅威によりもたらされたさまざまな問題に翻弄されている.県内外へ避難している福島県民は現在も12万7,000人にのぼる1).そのうち,南相馬市から市内外への避難者数は県内で最も多い1万2,991人(県内5,278人,県外7,713人)である2).また勤務先が警戒区域内であったために3,000人以上が失業し3),若年層が帰還するための雇用環境が整っていないのが現状である.市外避難者の多くが住民票を南相馬市に残しているため,住民基本台帳上の人口と市内居住人口には乖離がある.

 2013年8〜9月に避難指示解除準備区域,居住制限区域および帰還困難区域の全世帯対象の市民意向調査が行われた.その結果,「現時点で帰還しない」と考えている者は23.9%であった.「現時点で判断がつかない」は45.0%であり,その理由(複数回答)は「原子力発電所の安全性に不安があるから(64.1%)」が最も多く,「医療環境(54.5%),教育環境(32.3%),介護・福祉サービス(31.2%)に不安があるから」が続いた4)

 本稿では,多くの市民の不安要素である医療環境について,南相馬市立総合病院(以下,当院)が震災直後から行ってきたこと,震災後の原発立地地域の現状と抱えている課題を報告し,大規模災害に対する支援について私見を述べる.

「宮古・山田訪問リハビリステーションゆずる」の支援活動と課題

著者: 石田英恵 ,   櫻田義樹

ページ範囲:P.227 - P.231

はじめに

 未曽有の大震災から約2年後,2013年4月に宮古・山田訪問リハビリステーションゆずる(以下,「ゆずる」)が開設された.「ゆずる」は,「東日本大震災復興特別区域法(以下,復興特区法)」において,「病院・診療所・老人保健施設」以外の法人であっても,医療機関との連携の下であれば開設が可能となった療法士単独型の訪問リハビリステーションである.

 運営母体は一般財団法人訪問リハビリテーション振興財団(以下,財団)であり,被災地の復興を第一義として日本理学療法士協会,日本作業療法士協会,日本言語聴覚士協会の共同出資により2012年10月に設立された.翌月には1つ目の事業所「浜通り訪問リハビリステーション」が福島県で開設され,2つ目の事業所として「ゆずる」が岩手県で開設された.そして,2014年10月に3つ目の事業所「気仙沼訪問リハビリステーション」が宮城県で開設された.

 本稿では,「ゆずる」の実際の活動を紹介するとともに,今後の課題を提示していく.

座談会:大規模自然災害への支援・防災活動

著者: 鶴見隆正 ,   坪田朋子 ,   金野千津 ,   安部ちひろ

ページ範囲:P.253 - P.263

鶴見 2011年3月11日に発生した東日本大震災とそれに伴う巨大津波によって,東北地方ならびに関東地方の太平洋側の広域に甚大な被害がもたらされました.最近の公式発表では死者・行方不明者が1万8,490人にのぼっています.また,福島第一原子力発電所では炉心溶融や建屋爆発事故などが起き,放射性物質が飛散して深刻な状態に陥りました.

 震災発生直後には,消防,警察,自衛隊,あるいは災害派遣医療チーム(Disaster Medical Assistance Team:DMAT)をはじめとする医療機関や各団体,行政が一体となって救命救助活動を行い,日本理学療法士協会においても宮城県理学療法士会(以下,宮城県士会),岩手県理学療法士会,福島県理学療法士会と連携しながら支援体制を立ち上げたことは記憶に新しいところです.

震災支援からの私の学び

1.災害の特徴に則した支援活動の検討

著者: 林寿恵

ページ範囲:P.233 - P.237

はじめに

 2011年3月11日に東北地方を中心とした東日本大震災が発生し,未曽有の自然災害となり,死者・行方不明ともに甚大な被害をもたらした.阪神淡路大震災以降,リハビリテーション活動の必要性について検討されていたが,明確化されておらず,現在その声が高まっている.本稿では,筆者が経験した2012年7月12日九州北部豪雨災害時のリハビリテーション支援における活動内容をもとに,災害リハビリテーション支援時に重要なことを過去の事例も含めて述べる.

2.円滑な支援のために必要なもの

著者: 竹内伸行

ページ範囲:P.239 - P.242

 筆者は,2011年3月11日に発生した東日本大震災におけるリハビリテーション支援活動に2度参加した.本稿では,大学において教育,研究の業務に従事している理学療法士の立場から「震災支援からの私の学び」について振り返ってみたい.なお,ひと口に理学療法士の支援活動といっても,活動した地域の被災状況や発災前の環境,活動場所(避難所や仮設住宅,在宅など),支援を要する方々の生活状況,活動を行う組織の違いなどにより,その内容は大きく異なる.本稿は筆者が経験した支援活動に基づいた私見とご理解いただければ幸いである.

 筆者は,理学療法士になる前は電気技術者として働いていた.その当時,限局的な自然災害によるライフラインの復旧活動や地域の防災活動などに参加することが度々あった.しかし,今回のような大規模災害後の復旧,支援活動の経験はなく,医療従事者としての支援活動も初めてであった.そのため,戸惑いや不安をもちながら,また現地の保健福祉事務所に勤務する理学療法士や医療福祉関係者,全国から集まった支援者などと協働し,助け合いながら活動した.

3.東日本大震災における宮城県石巻市での公的理学療法士の活動

著者: 千葉智子

ページ範囲:P.243 - P.247

はじめに

 宮城県石巻市は旧北上川の河口に位置し,漁業を中心に栄えた宮城県北東部地域を代表する都市である.東日本大震災とそれに伴う大津波は,死者3,182人,行方不明者557人(2012年2月22日時点)にのぼる未曾有の大災害となった1)

 筆者が勤務する石巻市立病院は,病室から太平洋を眺望できる場所に位置し,一般病床206床,14診療科を標榜した急性期病院であり,特に石巻医療圏での消化器系疾患の治療に貢献してきた.リハビリテーション科としては,2名の理学療法士で急性期から慢性期まで多岐にわたる疾患の理学療法を行っていた.しかし,マンパワー不足から在宅患者への対応が厳しく,また行政保健師等とかかわる機会もなかったため,地域リハビリテーションの視点はもっていなかった.公的職員であっても医療技術職は病院内での業務が最優先であり,地域の保健活動を同時に考えている病院管理者は少ないと思われる.

 当院は,東日本大震災による大津波により,すべての医療機能が停止した.被災直後,病院内には入院患者153名,職員233名,見舞者および避難者を合わせた452名がおり,完全な孤立状態であった.そのうち入院患者については,災害派遣医療チーム(Disaster Medical Assistance Team:DMAT)のドクターヘリと自衛隊の救護ヘリにより移送を行い,4日後の3月15日に職員の脱出を完了した1)

 震災から4年近くが経過し,現在はプレハブ診療所で理学療法士1名体制での訪問理学療法,被災者の相談支援や運動教室の実施,地域ケア会議への参加等を行っている.本稿では,震災後,多くの支援者との出会いや,応急プレハブ仮設住宅(以下,仮設住宅)に住む被災者とのかかわりから学んだことを述べたい.

4.東日本大震災後の石巻市における民間組織でのリハビリテーション支援活動

著者: 橋本大吾

ページ範囲:P.249 - P.252

はじめに

 現在私は,「子供から高齢者まで病気や障がいの有無にかかわらず地域で健康的に生活し続けることのできる社会を創造する」という理念に基づいて,宮城県石巻市で常勤4名,非常勤3名の合計7名(理学療法士2名,作業療法士2名,言語聴覚士1名,社会福祉士1名,事務職1名:2015年2月1日時点)で事業を行っている.上記の理念のようにさまざまな年代,特性の方が相談に訪れる.現在は通所介護事業,障がい福祉事業,自主事業,石巻市委託事業を複合的に行っている.自主事業の一つに,地域の自助力・互助力を高める方法として住民主体の介護予防モデルの創造にも注力している.

 私自身,東日本大震災で多くの人からたくさんのことを学び,それが自分の人生を変えるきっかけとなった.本稿では,その一部をみなさまと共有させていただきたく,下記に報告する.

とびら

T先生のご退官によせて

著者: 塚本利昭

ページ範囲:P.185 - P.185

 「T先生はかなり厳しい先生だから,寒い北国青森出身のお前なら耐えられるんじゃないかと思って……」と実習担当の先生に言われ,T先生のもとでの実習が決まりました.実習は早朝リハビリテーション室の掃除から始まり,午後からは個別の治療や研究の時間となり,私も深夜まで研究のモデルとなったりしました.夜遅くに実習の宿舎に帰り,そこからレポート用紙100枚以上の症例報告を手書きで作成します.朝方までかかって書いた自信作もT先生の前では紙くずとなり,手書きでしたので前半の1か所を修正すると,その後半はすべて書き直しになります.何回も何回も指摘され,考え,修正し,また指摘され書き直し…….どんなに「私は頑張って書きましたが,疲れ果てています.もう勘弁してください」という顔をしても,T先生に一切の妥協はありませんでした.担当患者に関してはもちろん,治療見学や患者との話し方,立ち居振る舞いに至るまで厳しく指摘されました.実習後半は「塚本くん」と呼ばれただけで失禁しそうでした.

 今,臨床実習指導者となった自分は,学生に配慮し,気遣い,おだて,慰め,遠慮し,顔色を見,体調を気遣い,自分の言葉で語らず,自分の背中を見せず,養成校からの指導方針に従い,少し離れたところから接するような実習をしてはいないだろうか? そういった気持ちや態度は,一見,客観的にみると学生に優しいようですが,実は自信のない自分に嘘をつき自分を守り,一番守らなければならない患者に嘘をついているからこそ学生に厳しい指導ができないのではないかと自問自答しています.T先生は私に本気でぶつかってくれたのだと,今ごろになって気づかされています.学生にとって厳しいことを言うこと,正しいことを目を見て言うことは,学生以上に言う立場の人間のほうが痛いし傷つくことも,この歳になって実感しています.

1ページ講座 日本理学療法士学会・分科学会の紹介

日本基礎理学療法学会

著者: 河上敬介

ページ範囲:P.266 - P.266

 理学療法の職域は福祉や健康増進などへ拡大しているが,医療という職域がある以上,医学的基礎に基づいたエビデンスが不可欠なことは変わりない.一般に医療技術は,たくさんの培養細胞・動物を用いた検証実験が行われ,それらの一部にヒトへの臨床試験が許され,ランダム化比較試験を行いながら臨床に用いられる.しかし,理学療法では培養細胞・動物による検証がまだまだ少ない.国際的にはさらに悲惨で,World Confederation for Physical Therapy(WCPT)学会においてわが国以外の報告はきわめて少ない.また,器官系で大別された個々の疾患別理学療法における理論体系の構築に加え,理学療法対象者に多い複数器官系にまたがる病態に対する理学療法の総合的な応答を検証する学問領域はない.

 そこで本学会は,以下の設立趣旨をもって,5つの包括する研究領域における研究成果を統合し,理学療法を支える新たな基盤的学問体系を創造する.その成果を広く発信し,理学療法の科学的検証に資することを通して,広く世界の人々の健康と幸福に貢献することを使命として学術活動を継続するものである.

症例報告

術後感染による両側TKA再置換術後1症例の理学療法からみた臨床的課題

著者: 宮﨑紗也佳 ,   池田耕二 ,   廣瀬将士 ,   町井義和

ページ範囲:P.267 - P.271

要旨:人工膝関節形成術(total knee arthroplasty:TKA)は理学療法を代表する運動療法疾患の観血的療法の1つである.合併症には術後感染があり,治療法にもさまざまなものがある.近年は抗菌薬入りのセメントスペーサーによる2期的再置換術が良好とされている.今回,術後感染症による両側2期的TKA再置換術1症例の理学療法を行い,従来のTKAとは違う経過や問題点を経験したので,それをもとに具体的な臨床的課題を抽出した.

 その結果,1)疼痛に対する物理療法の適切な選択,2)適切な関節運動を誘導する関節可動域運動とその妥当性,3)関節や筋の状態を評価しながら負荷量を設定する筋力増強運動とその妥当性,4)転倒リスクの回避と日常生活活動の維持,5)体力維持(廃用症候群予防),6)炎症の再燃を意識した運動量の設定,7)退院後の炎症の把握,8)運動量の増加に伴う転倒リスク,9)長期入院による心理的負担という臨床的課題が挙げられた.

お知らせ

第6回顔面神経麻痺リハビリテーション技術講習会/第2回チーム医療CE研究会西日本主催呼吸ケアセミナー人工呼吸器編/平成27年度畿央大学ニューロリハビリテーションセミナー/第20回3学会合同呼吸療法認定士認定講習会および認定試験

ページ範囲:P.219 - P.275

第6回顔面神経麻痺リハビリテーション技術講習会

日 時:2015年6月10日(水)13:00〜17:00

内 容:顔面神経麻痺に対するリハビリテーションの概要,評価法,外科的治療法についての講演

講 師:栢森良二(帝京平成大学健康メディカル学部),古田 康(手稲渓仁会病院耳鼻咽喉科・頭頸部外科),上田和毅(福島医科大学形成外科),立花慶太(大阪労災病院,理学療法士),森嶋直人(豊橋市民病院,理学療法士),飴矢美里(愛媛大学言語聴覚士)

会 場:東京大学伊藤国際学術研究センター

書評

—伊藤隆夫・斉藤秀之・有馬慶美(編集)—「図解訪問理学療法技術ガイド—訪問の場で必ず役立つ実践のすべて」

著者: 友清直樹

ページ範囲:P.265 - P.265

 今日,高齢社会の進展に伴い,救命や治療を中心とする病院完結型の医療から,地域や自宅で生活を支える,障がいや疾病を抱えて生きる,看取るなどの地域完結型の在宅医療の充実が求められている.

 社会保障制度改革国民会議報告書では,高齢者を地域で確実に支えていくためには訪問リハビリテーションなどの在宅医療が不可欠としており,訪問理学療法の普及が急務といえる.さらに,訪問理学療法を確立させていくことは今後の理学療法士の職域を拡げる意味からも重要とされる.

—Jung Sun Hong(著)/紀伊克昌(監訳)・金子断行(訳)—「正常発達(第2版)—脳性まひの治療アイディア」

著者: 山川友康

ページ範囲:P.273 - P.273

 脳性まひ児の治療を実践するセラピストにとって,正常発達を研究することは必須の責務である.小児リハビリテーションに携わる理学療法士・作業療法士には,正常発達への深い知識と理解が求められる.

 本書は,姿勢コントロールの重要な成熟要素を,胎児期から生後12か月まで5段階に分けて,乳児が日常生活のなかで正常運動をどのように獲得していくのかを,豊富なイラストとともに,平易にクリアカットに解説しているのが特徴である.

—マリー・ダナヒー,マギー・ニコル,ケイト・デヴィッドソン(編)/菊池安希子(監訳)/網本 和,大嶋伸雄(訳者代表)—「臨床が変わる! PT・OTのための認知行動療法入門」

著者: 仙波浩幸

ページ範囲:P.274 - P.274

 認知行動療法は心理職や精神科医による介入から,チームにより展開し提供する新たな段階に突入した.理学療法士や作業療法士は臨床においてそれぞれの専門性を発揮し治療を進めるが,それぞれの専門領域に認知行動療法の理論を取り入れることで治療効果をさらに高め,エビデンスを確立し,それを多職種連携で統合的に展開していくというものである.それは認知行動療法士になるのではなく,各専門職の実践に認知行動療法の理論を理解し治療実践に積極的に活かしてくださいという提言である.

 これは精神心理領域における,理学療法士と作業療法士の治療参加への期待が大きく,患者中心の医療を実現するためには理学療法と作業療法とのコラボレーションが不可欠というメッセージであると受け止めた.治療において身体障害,精神障害,社会的側面,患者本人の主体的参加のいずれかが欠けても最良の結果を残すことができない.このメッセージはイギリスで発せられ,すでに6年が経過している.

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「理学療法ジャーナル」バックナンバーのお知らせ

ページ範囲:P.195 - P.195

次号予告

ページ範囲:P.212 - P.212

「作業療法ジャーナル」のお知らせ

ページ範囲:P.247 - P.247

文献抄録

ページ範囲:P.276 - P.277

編集後記

著者: 鶴見隆正

ページ範囲:P.280 - P.280

 2015年4月からの介護報酬は,9年ぶりの平均2.27%の大幅引き下げ改定となります.今回の改定では介護職員の賃金増に配慮していますが,今後,就労環境の改善が本当に図られていくのか,また介護サービスの質の低下を来さないのかを見届ける必要があります.

 さて,3月号の特集は「大規模災害の支援・防災活動—大震災からの学び」です.時が経つのは実に早いものです.大地震・大津波による甚大な被害と原子力発電所の深刻な事故が重なった東日本大震災から4年.被災地の地域再生に向けた復興事業は継続されていますが,今なお仮設住宅での生活や転居を余儀なくされている方が大勢います.この間にも大型台風の来襲やそれに伴う洪水,局地的な集中豪雨,火山噴火による自然災害などがあり,昨夏の広島市の住宅街を押し流した土砂災害は記憶に新しいところです.このような予期せぬ大規模自然災害に対して,迅速で連携した支援活動の展開力が理学療法士界に求められています.それには平時からの災害理学療法の意識化と地道な防災教育が大切だと考えます.

読者の声募集

ページ範囲:P. - P.

基本情報

理学療法ジャーナル

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1359

印刷版ISSN 0915-0552

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