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文献詳細

雑誌文献

理学療法ジャーナル49巻3号

2015年03月発行

文献概要

特集 大規模災害の支援・防災活動—大震災からの学び

東日本大震災および東京電力福島第一原子力発電所事故による福島県南相馬市の現状と課題—南相馬市立総合病院リハビリテーション科の支援活動

著者: 小野田修一1

所属機関: 1南相馬市立総合病院リハビリテーション技術科

ページ範囲:P.221 - P.226

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 東日本大震災および東京電力福島第一原子力発電所(以下,原発)事故で被災された皆様に,心よりお見舞い申し上げます.また福島県南相馬市をご支援くださった皆様にあらためて感謝いたします.


はじめに

 2011年3月11日の東日本大震災により発生した原発事故は,1986年に起きたチェルノブイリ原子力発電所事故同様,国際原子力事故評価尺度で最も深刻な「レベル7」に相当する.筆者の勤務地のある南相馬市も,多くの住民が政府の指示で強制避難を強いられ,今なお放射線という見えない脅威によりもたらされたさまざまな問題に翻弄されている.県内外へ避難している福島県民は現在も12万7,000人にのぼる1).そのうち,南相馬市から市内外への避難者数は県内で最も多い1万2,991人(県内5,278人,県外7,713人)である2).また勤務先が警戒区域内であったために3,000人以上が失業し3),若年層が帰還するための雇用環境が整っていないのが現状である.市外避難者の多くが住民票を南相馬市に残しているため,住民基本台帳上の人口と市内居住人口には乖離がある.

 2013年8〜9月に避難指示解除準備区域,居住制限区域および帰還困難区域の全世帯対象の市民意向調査が行われた.その結果,「現時点で帰還しない」と考えている者は23.9%であった.「現時点で判断がつかない」は45.0%であり,その理由(複数回答)は「原子力発電所の安全性に不安があるから(64.1%)」が最も多く,「医療環境(54.5%),教育環境(32.3%),介護・福祉サービス(31.2%)に不安があるから」が続いた4)

 本稿では,多くの市民の不安要素である医療環境について,南相馬市立総合病院(以下,当院)が震災直後から行ってきたこと,震災後の原発立地地域の現状と抱えている課題を報告し,大規模災害に対する支援について私見を述べる.

参考文献

1)福島民報:12万7,000人 避難続く.2014年9月11日
2)南相馬市:避難の状況と市内居住の状況.http://www.city.minamisoma.lg.jp/index.cfm/10,853,58,1,html(2014年12月15日閲覧)
3)南相馬市:原子力発電所事故における南相馬市の状況について.2013年6月22日 https://www.google.com/url?q=http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/kaihatu/016/shiryo/__icsFiles/afieldfile/2013/06/24/1336650_1_1.pdf&sa=U&ei=3EKRVNfGOsOsogSnq4HgDA&ved=0CAYQFjAA&client=internal-uds-cse&usg=AFQjCNH4fBsnun-u_ohgeensiD7wEeblQQ(2014年12月15日閲覧)
4)復興庁:南相馬市住民意向調査調査結果(速報版).2013年11月1日
5)清信秀樹:震災,その後を振り返って….震災アーカイブス〜あの日から1年間の取り組みの記録.南相馬市立総合病院,2012
6)福島民報:東日本大震災生活情報 県内死者.2014年9月28日
7)大石万里子:福島県南相馬市—原発事故への対応から市民生活の復興をめざして.保健師ジャーナル68:183-190,2012
8)清山真琴,他:東日本大震災 2年半後の今を語る こころのケアに焦点をおいた地域づくりの現状.OTジャーナル47:1336-1340,2013
9)JDF被災地障がい者支援センターふくしま:南相馬市要援護者避難計画策定に向けた訪問調査結果の最終報告.2011年8月25日
10)中村雅彦:あと少しの支援があれば—東日本大震災 障がい者の被災と避難の記録.ジアース教育新社.2012
11)後藤博音:東日本大震災と理学療法 気仙沼圏域における被災後の地域リハビリテーション支援活動について—県保健福祉事務所を軸にした震災後の地域リハビリテーション支援活動.PTジャーナル46:197-202,2012

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1359

印刷版ISSN:0915-0552

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