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特集 大規模災害の支援・防災活動—大震災からの学び
東日本大震災および東京電力福島第一原子力発電所事故による福島県南相馬市の現状と課題—南相馬市立総合病院リハビリテーション科の支援活動
著者: 小野田修一1
所属機関: 1南相馬市立総合病院リハビリテーション技術科
ページ範囲:P.221 - P.226
文献購入ページに移動はじめに
2011年3月11日の東日本大震災により発生した原発事故は,1986年に起きたチェルノブイリ原子力発電所事故同様,国際原子力事故評価尺度で最も深刻な「レベル7」に相当する.筆者の勤務地のある南相馬市も,多くの住民が政府の指示で強制避難を強いられ,今なお放射線という見えない脅威によりもたらされたさまざまな問題に翻弄されている.県内外へ避難している福島県民は現在も12万7,000人にのぼる1).そのうち,南相馬市から市内外への避難者数は県内で最も多い1万2,991人(県内5,278人,県外7,713人)である2).また勤務先が警戒区域内であったために3,000人以上が失業し3),若年層が帰還するための雇用環境が整っていないのが現状である.市外避難者の多くが住民票を南相馬市に残しているため,住民基本台帳上の人口と市内居住人口には乖離がある.
2013年8〜9月に避難指示解除準備区域,居住制限区域および帰還困難区域の全世帯対象の市民意向調査が行われた.その結果,「現時点で帰還しない」と考えている者は23.9%であった.「現時点で判断がつかない」は45.0%であり,その理由(複数回答)は「原子力発電所の安全性に不安があるから(64.1%)」が最も多く,「医療環境(54.5%),教育環境(32.3%),介護・福祉サービス(31.2%)に不安があるから」が続いた4).
本稿では,多くの市民の不安要素である医療環境について,南相馬市立総合病院(以下,当院)が震災直後から行ってきたこと,震災後の原発立地地域の現状と抱えている課題を報告し,大規模災害に対する支援について私見を述べる.
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