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講座 ボツリヌス療法・1【新連載】
ボツリヌス治療—脳血管障害
著者: 菊地尚久1
所属機関: 1横浜市立大学附属市民総合医療センターリハビリテーション科
ページ範囲:P.455 - P.461
文献購入ページに移動はじめに
脳血管障害,脳性麻痺,脊髄損傷などの中枢神経疾患には,痙縮が随伴することが多い.痙縮は上位運動ニューロン症候群による陽性徴候の一つであり,腱反射亢進を伴った緊張性伸張反射の速度依存性増加を特徴としている1).痙縮により,クローヌスや筋のスパズム,姿勢異常,病的共同運動,筋の同時収縮,筋の過剰な筋活動が出現し,さらに筋の短縮,関節可動域制限を生じ,これに伴い疼痛,歩行障害,ADL障害,QOL障害の原因となる.
痙縮に対する治療としては,筋弛緩薬などの薬物療法,物理療法,装具療法,フェノールを用いた神経ブロック,腱延長などの整形外科的治療などが従来用いられてきたが,ボツリヌス治療も近年保険適用に伴い,用いられるようになってきた.ボツリヌス治療は神経筋接合部でのアセチルコリン放出を抑制するボツリヌス毒素を筋に直接投与する治療法であり,従来用いられてきた治療法と比較して,直接的な痙縮抑制効果があることから,有効な治療法の一つであるといえる.
ここではボツリヌス治療の概説,脳血管障害に対するボツリヌス治療の評価,適応と効果,ボツリヌス治療後の装具療法,理学療法について概説する.
脳血管障害,脳性麻痺,脊髄損傷などの中枢神経疾患には,痙縮が随伴することが多い.痙縮は上位運動ニューロン症候群による陽性徴候の一つであり,腱反射亢進を伴った緊張性伸張反射の速度依存性増加を特徴としている1).痙縮により,クローヌスや筋のスパズム,姿勢異常,病的共同運動,筋の同時収縮,筋の過剰な筋活動が出現し,さらに筋の短縮,関節可動域制限を生じ,これに伴い疼痛,歩行障害,ADL障害,QOL障害の原因となる.
痙縮に対する治療としては,筋弛緩薬などの薬物療法,物理療法,装具療法,フェノールを用いた神経ブロック,腱延長などの整形外科的治療などが従来用いられてきたが,ボツリヌス治療も近年保険適用に伴い,用いられるようになってきた.ボツリヌス治療は神経筋接合部でのアセチルコリン放出を抑制するボツリヌス毒素を筋に直接投与する治療法であり,従来用いられてきた治療法と比較して,直接的な痙縮抑制効果があることから,有効な治療法の一つであるといえる.
ここではボツリヌス治療の概説,脳血管障害に対するボツリヌス治療の評価,適応と効果,ボツリヌス治療後の装具療法,理学療法について概説する.
参考文献
1)Mayer NH:Clinicphysiologic concepts of spasticity and motor dysfunction in adults with an upper motorneuron lesion. Muscle Nerve 6:S1-S13, 1977
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3)向井洋平,梶 龍兒:痙縮のボツリヌス治療.Brain Nerve 60:1421-1426,2008
4)Scott AB:Botulinum toxin injection into extraocular muscles as an alternative to strabismus surgery. Ophthalmology 87:1044-1049, 1980
5)木村彰男,他:A型ボツリヌス毒素製剤(Botulinum Toxin Type A)の脳卒中後の上肢痙縮に対する臨床評価 プラセボ対照二重盲検群間比較試験ならびにオープンラベル反復投与試験.Jpn J Rehab Med 47:829-833,2010
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8)木村彰男,他:A型ボツリヌス毒素製剤(Botulinum Toxin Type A)の脳卒中後の下肢痙縮に対する臨床評価—プラセボ対照二重盲検群間比較試験ならびにオープンラベル反復投与試験.Jpn J Rehab Med 47:626-636,2010
9)Yaşar E, et al:The efficacy of serial casting after botulinum toxin type A injection in improving equinovarus deformity in patients with chronic stroke. Brain Inj 24:736-739, 2010
10)菊地尚久,他:ボツリヌス療法を施行した脳卒中片麻痺患者に対する下肢装具への効果.Jpn J Rehab Med 51:S331,2014
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