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文献詳細

雑誌文献

理学療法ジャーナル49巻6号

2015年06月発行

文献概要

特集 急性期からの理学療法 医師にとっての急性期—専門科別急性期の概念と医師が重要視すること

4.多発外傷

著者: 石原諭1

所属機関: 1兵庫県災害医療センター

ページ範囲:P.517 - P.520

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はじめに

 外傷は救急医療のなかでごくありふれた,太古から存在する疾患群であるが,系統立った診療システムが確立され始めたのは比較的最近で,防ぎ得た外傷死(preventable trauma death)の撲滅を目的に1970年代後半から米国で初期診療の標準化が開始された.このうねりは20年近く遅れて本邦にも波及し,現在多くの地域において,病院前はJapan Prehospital Trauma Evaluation and Care(JPTEC),院内における初期治療はJapan Advanced Trauma Evaluation and Care(JATEC)と呼ばれる標準プログラムに則った診療が実践されている.標準診療の教育啓蒙により治療成績の向上が期待されるが,その評価項目として防ぎ得た外傷死とともに防ぎ得た外傷後遺障害(preventable trauma disability:PTDA)の問題が提起された1).土田2)によると英国では四肢の手術が必要であった多発外傷の約50%に,防ぎ得たPTDAが発生していたという.ちなみに多発外傷とは身体を,頭部・頸部・胸部・腹部・骨盤・四肢などと区分した場合に,複数の身体区分に「重度の」損傷が及んだ状態をいう.

 一方,昨年JATECの次の段階,即ち決定的治療の標準化を目的に,外傷専門医を対象とした外傷専門診療ガイドラインJapan Expert Trauma Evaluation and Care(JETEC)が発刊された(図).急性期リハビリテーションの重要性はJATECテキストにも記載されていたが,JETECテキストでは「社会復帰戦略」との題目で16ページを割いてより詳細に記述されている3)

参考文献

1)松下 隆:わが国の救急外傷治療体制の充実に向けて.週刊医学界新聞第2861号,2010年1月4日 http://www.igaku-shoin.co.jp/paperDetail.do?id=PA02861_05(2015年3月30日閲覧)
2)土田芳彦:置き去りにされてきた四肢外傷治療〜社会復帰に向けての戦略—巻頭言に代えて.ドクターズ・ネットワーク45:4-7,2011
3)日本外傷学会(監),日本外傷学会外傷専門診療ガイドライン編集委員会(編):外傷専門診療ガイドラインJETEC.pp221-236,へるす出版,2014
4)Boyd CR, et al:Evaluating trauma care:the TRISS method. Trauma Score and the Injury Severity Score. J Trauma 27:370-378, 1987
5)島崎修次,他:平成13年度厚生労働科学研究「救命救急センターにおける重症外傷患者への対応の充実に向けた研究」,2002
6)Wing PC:Early acute management in adults with spinal cord injury:a clinical practice guideline for health-care providers. Who should read it? J Spinal Cord Med 31:360, 2008
7)Clark DE, et al:Effectiveness of an early mobilization protocol in a trauma and burns intensive care unit:a retrospective cohort study. Phys Ther 93:186-196, 2013

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1359

印刷版ISSN:0915-0552

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