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文献詳細

雑誌文献

理学療法ジャーナル49巻9号

2015年09月発行

文献概要

入門講座 臨床に活かす理学療法研究・5

症例研究の実践

著者: 諸橋勇1

所属機関: 1いわてリハビリテーションセンター

ページ範囲:P.835 - P.843

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はじめに

 近年,理学療法士が行っている研究はまだ課題はあるにしても,統計学的な手法を用いて質,量ともに以前より向上していることは誰もが認めるところである.国内外の理学療法専門誌には症例報告の投稿欄も設けられ,そしてケーススタディの特集が企画され,その重要性は認められているといえる.

 しかし,学術大会や研究論文のなかで症例報告,症例研究の割合はまだ少なく,あまり積極的に行われているとはいい難い.例えば臨床のなかで困難な症例や稀少な症例を担当すると,場合によってはそれらの症例と類似した過去の症例報告の文献を検索することがあるが,検索目的に合致した症例がみつからないことが少なくない.

 また,患者の理学療法プログラム作成時には基本的に「患者の個別性」を重視し,その患者に合った個別的プログラムを作成することが理想とされている.しかし,理学療法士が言葉で「重要視している」といっているほど,現場では個別性を考慮したアプローチが行われてきているだろうか.

 また,「患者の経過は順調です」という言葉をよく聞くが,この順調とは何と比較して,どのような根拠で判断しているのだろうか.

 本稿では,ケースレポート,そしてシングルケースデザインを中心に臨床の理学療法の現状も踏まえて,症例研究のあり方を概説し,症例研究に取り組むにあたり,はじめの一歩が踏み出せるような具体的な方法を呈示したい.

参考文献

1)諸橋 勇:EBMの前にすべきこと.理学療法学30:231-234,2003
2)西 信雄,他(訳):EBM時代の症例報告.pp2-7,医学書院,2002
3)丸山仁司(監訳):症例報告の書き方,第2版.アイペック,pp3-16,2006
4)石倉 隆,他:症例報告の意義と方法.PTジャーナル35:775-780,2001
5)鶴見正隆(編):〔標準理学療法学〕臨床実習とケーススタディ.pp90-95,医学書院,2001
6)森山英樹(編):理学療法研究の進めかた.pp185-186,文光堂,2014
7)朝倉隆司:保健・医療のための研究法入門.pp69-72,協同医書,2001
8)内山 靖(編):理学療法研究法.pp56-65,医学書院,2002
9)岩本隆茂,他:シングル・ケース研究法.pp30-38,剄草書房,1999

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1359

印刷版ISSN:0915-0552

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