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文献詳細

雑誌文献

理学療法ジャーナル50巻10号

2016年10月発行

文献概要

特集 生活支援につなぐ小児理学療法

発達障害児の小児理学療法と生活支援

著者: 楠孝文1 田内広子1

所属機関: 1愛媛県立子ども療育センター機能訓練グループ

ページ範囲:P.913 - P.920

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はじめに

 発達障害とは,2005年に施行された発達障害者支援法の定義で,自閉症,アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害(pervasive developmental disorders:PDD),学習障害(learning disorders:LD),注意欠陥/多動症(attention deficit/hyper-activity disorder:ADHD)その他これに類する脳機能の障害であって,その症状が通常低年齢において発現するものと定められている.

 2012年の文部科学省の実態調査1)では,特別な教育上の支援を要する児童生徒は,通常学級に6.5%存在するとされ,近年急激に増加している.これは発達障害が啓発活動などにより,広く社会に認知されるようになり,対象となる子供が小児科や各都道府県に設置された発達支援センターなどの専門機関や療育機関に相談,受診するようになったことが主たる要因と思われる.また,PDD,ADHD,LDなどの発達障害の発症率が高いといわれている低出生体重児の増加2)もその一因と考えられる.

 筆者らが勤務する愛媛県立子ども療育センター(以下,当センター)でも,自閉症スペクトラム障害(autism spectrum disorder:ASD),ADHDなどの発達障害児に対するリハビリテーション処方が増加している.特に姿勢,バランスの問題や運動の不器用さ(clumsiness)を主訴とする,米国精神医学会による「精神疾患の診断と統計の手引き第5版(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, Fifth Edition:DSM-5)」で分類されている,運動症群(motor disorders)の発達性協調運動症/発達性協調運動障害(developmental coordination disorder:DCD)3)の児に理学療法(physical therapy:PT)を処方されることが多い.

 そこで本稿では,DCD児の姿勢運動の特性について,臨床経験と諸家の報告を概観し,当センターで行っている理学療法を紹介する.

参考文献

1)文部科学省初等中等教育局特別支援教育課:通常の学級に在籍する発達障害の可能性のある特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査結果について.2012
2)木原秀樹,他:早産・低出生体重児のより良い発達を支援するために.ベビーサイエンス9:2-14,2010
3)American Psychiatric Association(原著),日本精神神経学会(日本語版用語監修),高橋三郎,他(監訳):DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル.pp73-76,医学書院,2014
4)Watemberg N, et al:Developmental coordination disorder in children with attention-deficit-hyperactivity disorder and physical therapy intervention. Dev Med Child Neurol 49:920-925, 2007
5)Green D, et al:Impairment in movement skills of children with autistic spectrum disorders. Dev Med Child Neurol 51:311-316, 2009
6)小林芳文:LD児・ADHD児が蘇る身体運動.pp33-36,大修館書店,2001
7)新田 收:アスペルガー学習障害.注意欠陥多動性障害に対する理学療法介入.新田 收,他(編):知りたかった!PT・OTのための発達障害ガイド.pp199-203,金原出版,2012
8)川崎千里:運動機能の障害—「不器用」の評価と対応.小児の精と神39:33-39,1999
9)土田玲子,他:日本版ミラー幼児発達スクリーニング検査とJMAP簡易版—その解釈及び関連研究.pp49-137,パシフィックサプライ,2003
10)臨床観察(clinical observation)マニュアル・実施メモ,日本感覚統合障害研究会
11)Mijna Hadders-Algra(著),問川博之,他(監訳):発達障害が疑われる子どもの神経学的診察法—軽微な神経機能障害の評価,原著第3版.pp83-85,医歯薬出版,2013
12)土田玲子,他(監):感覚統合とその実践,第2版.協同医書出版.2006
13)小林芳文:LD児・ADHD児が蘇る身体運動.pp81-132,大修館書店,2001
14)楠 孝文,他:最近の学習障害児—注意欠陥多動性障害児の理学療法.理学療法28:1251-1259,2011
15)新田 收:発達障害の運動療法—ASD・ADHD・LDの障害構造とアプローチ.三輪書店,2015
16)成瀬 進:発達障害.上杉雅之(監):イラストでわかる小児理学療法.pp223-237,医歯薬出版,2013
17)東根明人,他:もっともっと運動能力がつく魔法の方法—逆上がり・かけっこ・跳び箱がみるみる得意に! pp8-40,主婦と生活社,2004
18)東根明人(監):子どものつまずきがみるみる解決するコーディネーション運動—ボール運動編.明治図書出版,2007
19)東根明人(監):子どものつまずきがみるみる解決するコーディネーション運動—器械運動編.明治図書出版,2007
20)東根明人,他:子どものつまずきがみるみる解決するコーディネーション運動—準備運動編.明治図書出版,2008
21)日本SAQ協会(編):スポーツスピード養成—SAQトレーニング.pp6-12,大修館書店,1999
22)澤木一貴:姿勢がよくなる! 小学生の体幹トレーニング.pp10-15,ベースボール・マガジン社,2012
23)谷川 聡(監):スポーツでもっと活躍できる! 子どもをアスリートの体にするための本.p23,メイツ出版,2012

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1359

印刷版ISSN:0915-0552

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