icon fsr

文献詳細

雑誌文献

理学療法ジャーナル50巻11号

2016年11月発行

文献概要

症例報告

透析療法中に下肢痛や筋痙攣を認めた症例の運動療法経験

著者: 垣内優芳12 森明子3

所属機関: 1医療法人社団五誓会あさひ病院リハビリ室 2西神戸医療センターリハビリテーション技術部 3兵庫医療大学リハビリテーション学部

ページ範囲:P.1063 - P.1067

文献購入ページに移動
要旨 今回われわれは,透析療法後半に下肢痛や筋痙攣を認める症例の運動療法を経験した.[症例]症例は糖尿病性腎症で血液透析導入となった60歳台の男性である.初期評価時,骨格筋量を反映する%クレアチニン産生速度は91%で,透析療法中は下肢痛や筋痙攣により臥床傾向で,運動療法に対して消極的であった.[介入]運動療法は,週2〜3回,1回20分を透析療法中(開始2時間以内)に1年間継続した.内容は下肢関節可動域運動,ストレッチ,筋力強化運動とした.筋の収縮様式は等尺性や遠心性収縮を避けた.また,生活指導の実施やドライウエイトは適宜修正された.[結果]運動療法開始1年後,下肢痛や筋痙攣は消失した.%クレアチニン産生速度は98%であった.[考察]筋痙攣の改善は,骨格筋量の改善がみられ,体内の総水分量が増加した結果,除水に伴う脱水症状が緩和したためであると考える.また飲水管理の改善や,ドライウエイトが患者にとって適正値に近づいたことも要因の1つと考えられた.

参考文献

1)和田健太朗:血液透析患者の除水困難症・筋痙攣に対する五苓散の効果.日東医誌63:168-175,2012
2)大野政人,他:筋疲労および脱水が運動誘発性筋痙攣に及ぼす影響.体力科学53:131-140,2004
3)冨野康日己:根拠がわかるナースのための透析ケアQ & A.p130,南江堂,2004
4)Diesel W, et al:Morphologic features of the myopathy associated with chronic renal failure. Am J Kidney Dis 22:677-684, 1993
5)Kutsuna T, et al:Physical activity is necessary to prevent deterioration of the walking ability of patients undergoing maintenance hemodialysis. Ther Apher Dial 14:193-200, 2010
6)新里高弘,他:Kt/Vと蛋白質異化率(PCR)および%クレアチニン産生速度の考え方.透析会誌29:1511-1516,1996
7)水口 潤,他:日本透析医学会 維持血液透析ガイドライン-血液透析処方.透析会誌46:587-632,2013
8)Moore G, et al:Cardiovascular response to submaximal stationary cycling during hemodialysis. Am J Kidney Dis 31:631-637, 1998
9)市橋則明(編):運動療法学.p61,文光堂,2008
10)Naohito I, et al:Comparative associations of muscle mass and muscle strength with mortality in dialysis patients. Clin J Am Soc Nephrol 9:1720-1728, 2014.
11)上月正博:透析患者における運動療法の重要性.臨透析27:1291-1298,2011
12)忽那俊樹,他:腎機能障害者に対する理学療法.理学療法40:486-492,2013

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1359

印刷版ISSN:0915-0552

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?