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雑誌目次

雑誌文献

理学療法ジャーナル50巻2号

2016年02月発行

雑誌目次

特集 最新の糖尿病治療と運動療法

EOI(essences of the issue)

ページ範囲:P.143 - P.143

 厚生労働省の2014年「国民健康・栄養調査」の結果によれば,糖尿病を強く疑われる者の割合は男性15.5%,女性9.8%となっている.初期糖尿病の治療で重要なのは食事療法と運動療法とされており,運動療法の専門家である理学療法士の関与が期待されている.また,合併症や重複疾患例など,日々の理学療法実践でのかかわりも濃厚であると考えられる.本特集は理学療法士が糖尿病に対する知識と経験を深めるために,糖尿病の最新治療と専門職として取り組むべき運動療法のエビデンスを知ることを通し,理学療法士の役割を考えていくことを目的に企画した.

糖尿病治療の進歩と展望

著者: 𠮷岡成人

ページ範囲:P.145 - P.151

はじめに

 糖尿病の治療における3つの柱として,① 食事療法,② 運動療法,③ 薬物療法があり,これらを一人ひとりの患者さんの状態に応じて適切に組み合わせ,糖尿病ではない人と変わらない日常生活のQOLを維持することが糖尿病の治療の目標である.

 1921年にバンチングとベストらによってインスリンが精製され,1957年にスルホニル尿素(sulfonylurea:SU)薬であるトルブタミドが使用されるようになったことでスタートした糖尿病の治療は20世紀後半から著しい進歩をとげた.インスリン製剤は,ブタ,ウシの製剤からヒトインスリン,インスリンアナログ製剤へと進歩をとげ,α-グルコシダーゼ阻害薬,グリニド薬,チアゾリジン薬,メトホルミンの再評価を経て,DPP-4(dipeptidyl peptidase Ⅳ)阻害薬,SGLT2(sodium-glucose co-transporter 2)阻害薬が登場した.30年前には速効型インスリン,中間型インスリン,SU薬でしか治療できなかった糖尿病治療には大きな多様性が与えられた.一方,日本の社会は高齢化が著しく,人口の26%は65歳以上の高齢者である.高齢の糖尿病患者も増加しており,加齢に伴う認知機能障害,がん,骨粗鬆症,歯周病などは糖尿病の併発疾患としても注目されている.

 本稿では,糖尿病の食事療法,薬物療法の最近の進歩と今後の展望について概説を加える.

糖尿病に対する運動療法の効果

著者: 佐藤祐造 ,   荒川聡美 ,   飯田裕二

ページ範囲:P.153 - P.162

 現在,日本の医学・医療の現場においては根拠に基づく医療(evidence-based medicine;EBM)が求められている1).糖尿病運動療法に関する研究・臨床の分野においても,安静の弊害2),運動指導と糖尿病発症予防に関する疫学的大規模研究が報告されるなど3〜6),運動療法の有用性を証明する根拠が次第に明確になっている.また,身体運動の効果発現のメカニズムに関しても,分子生物学的アプローチによる解明が画期的な進歩を遂げている7)

糖尿病治療における理学療法士の役割

著者: 石黒友康

ページ範囲:P.163 - P.169

はじめに

 2000年日本糖尿病療養指導士認定機構が発足し,第1回認定試験が実施されてからすでに15年が経過した.2015年5月現在,理学療法士の認定者は約1,181名である.療養指導士全体としては数%を占めるにすぎないが,運動療法の専門家として,チーム医療の一員として役割を果たしている.

 2015年1月,500名を超える参加者を迎え,第1回糖尿病理学療法学会が大阪で開催された.学会長を務めた井垣1)は基調講演のなかで,日本糖尿病学会認定医が所属する医療施設で,理学療法士が勤務する722施設の理学療法士を対象に調査を行い,回答のあった629施設中62%の施設が,糖尿病診療に理学療法士が関与していないことを明らかにした.しかし逆の見方をすれば,診療報酬の裏付けがないにもかかわらず,約40%の施設で理学療法士が糖尿病診療にかかわっているわけで,もはや,糖尿病療養指導は理学療法士にとって,当然の業務となりつつある.この意味で,糖尿病理学療法の確立が急務であると訴えた.

 糖尿病は従来の障害の概念に合致しにくい,さらに診療点数の裏付けがないなどの理由で,他の内部障害疾患に比べ理学療法士のかかわりは決して多くない.しかし,糖尿病の病態や合併症の成り立ちなどを理学療法士の目でよく観察すると,全身疾患としてのさまざまな糖尿病の表情がみえてくる.本稿では,糖尿病治療における「理学療法士の独自性」という観点から,糖尿病治療における理学療法士の新たな展開を提示したい.

糖尿病に対するチーム医療と理学療法士のかかわり

著者: 片田圭一 ,   浅利香 ,   藤井寿美枝

ページ範囲:P.171 - P.178

はじめに

 糖尿病治療では,専門職がチームで療養指導を行うことが推奨されている.教育入院プログラムやクリニカルパスにおいて多職種が連携するとともに,糖尿病教室では各専門職が専門分野の講義を担当し,外来においても役割分担がなされている.チーム医療では,症例検討会や回診において情報の共有と治療方法などの確認を行い,統一の目標に向かって患者・家族とともに治療が行われている.

 そこで,理学療法士がチーム医療のなかで他の専門職と協力し,適切な運動療法の実践と継続を支援するためのかかわりについて考えてみたい.

糖尿病外来における運動療法の実践と効果

著者: 天川淑宏

ページ範囲:P.179 - P.189

はじめに

 食後に血糖値が上がったから運動でエネルギーを消費して血糖値を下げる.この取り組みは必ずしも間違った方法ではないが,本来,運動療法がめざすべきことは,苦なく動けるカラダを維持し,インスリン標的臓器のなかで最大の糖取り込み器官である骨格筋の質を保ち,インスリン感受性を高め,膵臓を守ることにある.

 2型糖尿病の発症は,肥満,運動不足,ストレス,不適切な食事などの生活習慣の乱れによるインスリン抵抗性の増加と,食後のインスリン分泌パターンの低下や遅延型などの遺伝的体質が重なって血糖値の上昇が生じたものであり,食事の見直し,日常的身体活動量の確保,ストレスの処置方法など,日常的な自己管理が治療として重要である.

 これに対し,1型糖尿病の目標は,インスリン治療を主に日常の食事量と内容,運動の質と持続時間の3つの関係より,良好な血糖コントロールや体重コントロールをめざすことであり,患者が意図する運動をいかに安全に実施できるかをチーム医療でサポートしていくことが重要である.

とびら

職場での悩みと期待

著者: 加藤祝也

ページ範囲:P.141 - P.141

 職場体制を見直すことになったが,課題は多い.理解はするが納得はしないということになるのだろうか.疑問を持たず長期に慣れ親しんだ業務環境を変えることは困難であることを再認識した.

 診療報酬制度というルールの下で日々の業務を遂行している.だが,ルールの理解度の差は大きい.法令に従い,納得した(はずの)業務ルールを決め,運用することでスムースな業務効果が期待できる(はず)と考える.しかし,現実は望むべく結果にはなかなか到達しない.

甃のうへ・第33回

Seeking untapped potential

著者: 高倉利恵

ページ範囲:P.192 - P.192

 理学療法士という仕事に導いてくれたのは,障害を持つ子ども達との出会いであった.「理学療法の先進国だというアメリカへ行こう!」.1990年の9月下旬,サンフランシスコの北東約80キロにある田舎町Davisで,米国の大学に入るための英語勉強が始まった.初めての異国文化での生活は驚異の連続だった.例えば,当時日本ではあまり普及していなかった電子レンジの活用法.カップラーメンはカップに水を入れ,ティーバッグはマグカップの水の中に入れ「チン」とする.ポテトチップスは乳飲み子の普通のおやつであり,ペットに飼っている蛇の餌,「ネズミ」が食材といっしょに冷凍庫に入っていた.今でこそ,あのネズミを蛇に与える前に電子レンジで解凍したのだろうかと考えるほど余裕があるが,ネズミ色の毛と小さな耳のようなものが包みの端からみえた瞬間,包み紙とその中身は宙に舞い上がった.

 英語学校に3学期間通い,その後,理学療法学科入学の必修科目である基礎科学を短期大学で履修,その単位とともに4年制大学に編入後,理学療法学科への入学試験を受けた.在籍中は同級生に支えられ,月月火水木金金の勉強,週末に1週間分の料理と洗濯をするという規則正しい生活.何とか理学療法士国家試験に合格して免許を受理,就労査証もようやく発行され,正式な理学療法士としての仕事が中西部にある学校を併設する小児病院で始まった.

1ページ講座 理学療法関連用語〜正しい意味がわかりますか?

ミオクローヌス

著者: 五日市克利

ページ範囲:P.193 - P.193

■ミオクローヌスの定義と概念

 ミオクローヌス(myoclonus)は,中枢神経系の機能異常による突然の,電撃的な,四肢・顔面・体幹などに生じる,意識消失を伴わない不随意運動である1)と定義される.時に刺激で誘発され,突発性で短時間持続するショック様の不規則かつ不随意な筋収縮を来す陽性ミオクローヌス(positive myoclonus),もしくは不随意に筋収縮が突然停止する陰性ミオクローヌス(negative myoclonus),加えて両者が混在する病態を示す.筋線維束攣縮(fasciculation)とは異なり,複数の脊髄運動ニューロンの同時発火を伴う.ミオクローヌスは静止時にみられることが多いが,動作時にみられるものは動作性ミオクローヌス(action myoclonus)と呼ばれる.

理学療法関連審議会・協議会

社会保障審議会

著者: 上野有希子

ページ範囲:P.194 - P.194

 「社会保障審議会」という言葉を聞いたことがありますか? 病院や学校では耳にすることが少ないかもしれません.厚生労働省には,その諮問機関として16の審議会が設置されており(2015年12月現在),社会保障審議会や中央社会保険医療協議会もその一つです.諮問機関とは,国が助言を求める機関です.つまり審議会の役割は,国の政策に対し助言や意見を述べる(答申を出す)ことです.それでは社会保障審議会は,いったいどのような審議会なのでしょうか.

 社会保障審議会は,2001年に医療審議会や年金審議会などの8つの審議会が統合され設置されました.医療・介護だけでなく,年金問題や,少子化対策などの人口問題,障がい者支援など,人々の生活を支える,さまざまな社会保障制度のあり方や課題の検討が行われる審議会です.出席する委員は厚生労働大臣からの任命を受けた者であり,任期は2年です.さらに下部組織として部会や分科会があり,より専門的な議論や調査が行われます.部会は検討の必要性に応じて増設されることもあります.

入門講座 重複疾患症例のみかた・3

治療—運動プログラムと介入の工夫

著者: 南角学 ,   中谷未来

ページ範囲:P.195 - P.202

はじめに

 一般的なリハビリテーションでは,病態から予測される予後などの医学的情報および生活背景などの社会的情報を十分に考慮しながら退院後の生活を想定したうえで目標設定を行う.そして,この目標を達成するための課題や阻害因子に対して適切な介入方法を具体的に立案し,実践していく(図1).

 重複疾患のリハビリテーションでは,重複疾患をどの程度念頭に置くかは症例ごとに異なり,臨床ではそれを見極め選別し重みづけを行う過程も重要となる.また,重複疾患患者では,医学的情報が複雑になることから目標設定や理学療法プログラムについて十分な配慮が必要となる.

 本稿では,重複疾患例に対して,問題点の把握,病態と想定される予後と退院後の生活を想定した目標設定,さらに具体的な理学療法プログラムの立案・実践までの全体的なリハビリテーションの流れと考え方を,筆者らが実際に担当した事例に基づいて紹介する.

講座 超音波エコーを用いた非侵襲的理学療法・3

超音波エコーを用いた筋肉の評価と理学療法への応用

著者: 池添冬芽

ページ範囲:P.203 - P.213

講座企画にあたって

 近年,超音波エコーは非侵襲的に身体内部の状態を把握することが可能なため理学療法分野でも使用の可能性が検討され,一部で臨床応用されはじめている.しかし,超音波エコーを医療現場で理学療法士が使用する場合には注意が必要である.医療現場では,どのような生体モニターや評価機器であっても,患者の身体に適用する以上,医師の管理下で医師の指示に従って行うことが求められる.

 また,理学療法士が心電図を装着したり,超音波エコーを当てたりすることは可能であるが,診断は不可というのが基本である.例えば,銭湯や薬局などに据え付けてある血圧計で,患者が自身で測定することは問題ないが,医師以外の誰かが「高血圧」と「診断」すると医師法違反になることと同様に,医療機関で超音波エコーを当て「診断」を患者に伝えた時点で,医師法違反になると考えられる.したがって,理学療法士が医療現場で超音波エコーを使用する場合は,その使用や結果の伝達については,細心の注意が必要となる.

 一方,医師や臨床検査技師が行った超音波エコーの結果を,理学療法士が正しく理解することは非常に有用で,超音波エコーの結果をどのように理学療法に活かしていくか,また,理学療法への応用をどのように浸透させ,拡大していくかは今後の課題でもある.

臨床実習サブノート 臨床実習で患者さんに向き合う準備・9

がん

著者: 國澤洋介 ,   高倉保幸

ページ範囲:P.215 - P.220

はじめに

 現在,わが国において,2人に1人はがんに罹り,3人に1人はがんにより亡くなるとされています.一方,がん治療の進歩によりがん生存者は500万人を超えようとしており,がんが「不治の病」とされた時代から「がんと共存」する時代へと変化しています.これまで,がん自体,あるいはがん治療過程で生じた心身の障害に対する積極的な対応は十分とはいえませんでしたが,2010年度診療報酬改定をきっかけに,がん患者に対するリハビリテーションにかかわる理学療法士が増えるとともに,学生が臨床実習でかかわる機会も増加しています.本稿では,学生が臨床実習でがん患者のリハビリテーションにかかわる前に知っておくべきポイントについて解説します.

報告

慢性期脳卒中患者に対する間欠入院による集中的理学療法の効果—歩行可能例を対象とした検討

著者: 岡田誠 ,   和田智弘 ,   岡前暁生 ,   難波敏治 ,   陽川沙季 ,   内山侑紀 ,   山本憲康 ,   福田能啓 ,   道免和久

ページ範囲:P.221 - P.227

要旨 [目的]本研究の目的は,慢性期脳卒中患者に対し,間欠入院による集中的な理学療法を実施し,その効果を検討することである.[方法]在宅・施設生活のなかで機能低下が生じた15名の慢性期脳卒中患者を対象に,間欠入院による集中的な理学療法を実施し,その効果を検討した.評価にはBerg Balance Scale(BBS),Functional Movement Scale(FMS),10m最大歩行時間,下肢の上田式片麻痺回復グレード(下肢グレード),片麻痺の頸部・体幹・骨盤運動機能検査(Motor Functional Test for Neck, Trunk, Pervis of the People with Stroke:NTP),Functional Independence Measure(FIM)の運動項目,認知項目,FIM合計点,およびFIM各下位項目の得点を用いた.[結果]BBS,FMS,10m最大歩行時間,FIM運動項目,FIM合計点,FIM移動と階段の項目については,入院時に比べ退院時で有意(p<0.05)な改善を認めた.一方,下肢グレード,NTP,FIM認知項目,移動と階段以外のFIM下位項目に有意な変化はなかった.[結論]在宅・施設生活のなかで運動機能が低下した慢性期脳卒中患者に対し,集中的な理学療法を実施することで,バランスや歩行などの動作能力および日常生活動作の回復について効果があることが示唆された.

症例報告

BNPを指標として運動負荷と身体活動管理を行った完全大血管転位Ⅰ型による重症成人心不全の1例

著者: 高見沢圭一 ,   横田一彦 ,   後藤美和 ,   山口正貴 ,   長谷川真人 ,   芳賀信彦

ページ範囲:P.229 - P.234

要旨 New York Heart Association(NYHA)Ⅳ度の重症心不全を契機に入院し,加療,理学療法を経て自宅退院となった完全大血管転位症(transposition of great arteries:TGA)Ⅰ型の成人未治療症例を経験した.TGAは新生児期に大多数が心内修復術を行われることから,成人未治療症例はきわめて少ない.同様に,理学療法に関する報告は,小児患者や術後患者については散見されるものの,未治療かつ成人患者の報告例は見当たらない.重症心不全時期の理学療法介入であったが,安静が優先される時期においても低強度の抵抗運動を積み重ね,骨格筋の維持,改善を果たした.特異な循環システムのため心予備能に乏しく,わずかな運動負荷増,身体活動増が過大な心負荷となることが懸念され,その調節に難渋したが,B型ナトリウム利尿ポリペプチド(brain natriuretic peptide:BNP)を心不全の指標とし,metabolic equivalent(MET)単位での運動負荷,身体活動制限を導入することで,心不全に応じた適切な心負荷となり,心不全改善に好影響を与えたものと考えられた.

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次号予告

ページ範囲:P.151 - P.151

「作業療法ジャーナル」のお知らせ

ページ範囲:P.162 - P.162

書評 —上杉雅之(監修)—「イラストでわかる人間発達学」

著者: 小塚直樹

ページ範囲:P.191 - P.191

 ギリシャ神話に登場するスフィンクスは,「朝は四本足,昼は二本足,夕は三本足.この生き物は何か?」と旅人に問いかけたという.この有名な「なぞなぞの答え」は,人間である.人としての生活が始まる赤ちゃんの時期は背臥位から腹臥位へ,そしてやがて四つ這い(四本足)で移動しながら準備を整え起立から歩行(二本足),長い人生を歩み老人になると杖歩行(三本足)になる.人間発達学とはまさしくこのような人生の夜明けから夕暮れまでに人が歩んだ歴史と特性を概観する学問である.

 今回この書評のお仕事をいただき,現在出版されている理学療法士・作業療法士養成校の学生向けに出版されている人間発達学に関連する4種類の教科書を読み比べてみた.いずれも朝昼夕の生涯にわたる記載はあるのだが,生後数年,つまり朝の部分のボリュームが多い.本書も朝の部分に重きを置いた教科書に分類される.

文献抄録

ページ範囲:P.236 - P.237

第28回理学療法ジャーナル賞について

ページ範囲:P.239 - P.239

編集後記

著者: 横田一彦

ページ範囲:P.240 - P.240

 2016年は2年ごとにくる診療報酬の改定の年です.全体ではマイナス改定となるなかで,リハビリテーションにかかわる部分ではどのような形となって現れるのでしょうか.「とびら」で加藤氏が述べておられるように,施設によっては大きな変革が必要となることもあろうかと思います.医療機関にお勤めの方にとっては気が気でない時期であろうと思います.

 さて,今月号の特集は「最新の糖尿病治療と運動療法」です.厚生労働省は「2014年患者調査の概況」を発表し,糖尿病患者数は前回調査(2011年)から46万6,000人増えて,過去最多の316万6,000人になったとしています.先に述べたリハビリテーションの診療報酬との兼ね合いでは何かと問題がある糖尿病ですが,理学療法士が対象とすべき疾患と症候であることは明確で,今後私たちが対応することが増す領域だと考えます.𠮷岡論文では,食事療法と薬物療法について概説していただきました.歴史的な流れを具体的にご提示いただくとともに,高齢糖尿病患者の問題にも触れていただきました.病態と個々の状況に応じた治療のあり方の大切さがよく理解できます.佐藤論文では,運動療法に関するエビデンスを幅広くお示しいただきました.同時に理学療法士の糖尿病治療への参画に強い期待をお寄せいただきました.石黒論文では,糖尿病と理学療法士とのかかわりを過去から遡ってご提示いただきました.そして,未来に向かって理学療法士がとるべき方向性と担うべき役割を示していただけたと考えます.片田論文は糖尿病のチーム医療における理学療法士の役割を概説し,具体的な症例を提示して,チーム医療の有効性を示していただきました.天川論文は,豊富な糖尿病外来での経験をもとに,実践的な理学療法士の取り組みをお示しいただきました.いずれの論文も糖尿病治療のこれまでの歴史的経緯,現在の動向を知り,理学療法士として取り組むべき課題を考えるうえで,本特集は示唆に富んだものとなったのではないかと考えます.

読者の声募集

ページ範囲:P. - P.

基本情報

理学療法ジャーナル

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1359

印刷版ISSN 0915-0552

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