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文献詳細

雑誌文献

理学療法ジャーナル50巻2号

2016年02月発行

文献概要

症例報告

BNPを指標として運動負荷と身体活動管理を行った完全大血管転位Ⅰ型による重症成人心不全の1例

著者: 高見沢圭一1 横田一彦1 後藤美和1 山口正貴1 長谷川真人1 芳賀信彦1

所属機関: 1東京大学医学部附属病院リハビリテーション部

ページ範囲:P.229 - P.234

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要旨 New York Heart Association(NYHA)Ⅳ度の重症心不全を契機に入院し,加療,理学療法を経て自宅退院となった完全大血管転位症(transposition of great arteries:TGA)Ⅰ型の成人未治療症例を経験した.TGAは新生児期に大多数が心内修復術を行われることから,成人未治療症例はきわめて少ない.同様に,理学療法に関する報告は,小児患者や術後患者については散見されるものの,未治療かつ成人患者の報告例は見当たらない.重症心不全時期の理学療法介入であったが,安静が優先される時期においても低強度の抵抗運動を積み重ね,骨格筋の維持,改善を果たした.特異な循環システムのため心予備能に乏しく,わずかな運動負荷増,身体活動増が過大な心負荷となることが懸念され,その調節に難渋したが,B型ナトリウム利尿ポリペプチド(brain natriuretic peptide:BNP)を心不全の指標とし,metabolic equivalent(MET)単位での運動負荷,身体活動制限を導入することで,心不全に応じた適切な心負荷となり,心不全改善に好影響を与えたものと考えられた.

参考文献

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8)Ohta Y, et al:Drop in plasma brain natriuretic peptide levels after successful direct current cardioversion in chronic atrial fibrillation. Can J Cardiol 17:415-420, 2001

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1359

印刷版ISSN:0915-0552

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