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文献詳細

雑誌文献

理学療法ジャーナル50巻6号

2016年06月発行

文献概要

1ページ講座 理学療法関連用語〜正しい意味がわかりますか?

やる気スコア apathy rating scale:ARS

著者: 松谷綾子1

所属機関: 1甲南女子大学看護リハビリテーション学部理学療法学科

ページ範囲:P.587 - P.587

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 脳卒中後の患者に生じやすい精神障害の1つとして,うつ病やアパシー(apathy)がある.アパシーは,1990年にMarinによって意識障害,認知障害,感情障害によらない動機づけの減弱と定義され,意識レベルの低下,認知障害,感情的な悲嘆に起因するものではないとされている1).その後,2006年にLevyとDuboisにより,目的に向けられた随意的で意図的な行動の量的な減少と定義され,次の3型に分類されている2).① 情動感情処理障害によるアパシーは感情と行動の結びつきの変化により,行動を起こし完結させる意欲が減じるか,将来の行動の結果を評価する能力が減少して生じるものである.② 認知処理障害によるアパシーは,目的指向行動を計画し実行するのに必要ないくつかの遂行機能,例えば,企画,作業記憶,ルールをみつけセットを変換することの障害に由来する.③ 自己賦活障害によるアパシーは,自動賦活化過程の障害により自ら発想することや自発的な行動が障害されるが,外的駆動による行動は保たれるものである.アパシーの原因として,前頭前野,基底核,視床といった皮質への経由路の障害による発動性低下が考えられている.

 やる気スコアは,複数あるアパシーの評価法のうち,臨床で実施すべき評価法である3).本評価法は,Apathy Scale4)を岡田ら5)が日本語訳したものであり,14項目の質問に対し0〜3の4段階の回答のなかから1つを選択する.日本人に対しては,16点以上を意欲低下とする判定が提案されている5).適応できるのは,適切な回答ができる知的レベルと言語能力を有する患者であることから,高度の意欲低下,中等度の認知症,自分で適切に回答できない患者の場合は別の評価法を選択するべきである3)

参考文献

1)Marin RS:Differential diagnosis and classification of apathy. Am J Psychiatry 147:22-30, 1990
2)Levy R, Dubois B:Apathy and functional anatomy of the prefrontal cortex-basal ganglia circuits. Cerebral Cortex 169:916-928, 2006
3)蜂須賀研二:リハビリテーション医療におけるアパシーとその対策.高次脳機能研34:184-192,2014
4)Starkstein SE, et al:Reliability, validity, and clinical correlates of apathy in Parkinson's disease. J Neuropsychiatry Clin Neurosci 4:134-139, 1992
5)岡田和悟,他:やる気スコアを用いた脳卒中後の意欲低下の評価.脳卒中20:318-323,1998
6)北地 雄,他:脳卒中後の回復期病棟入院時の身体機能面,心理・精神的側面,社会的側面,およびQuality of Lifeの関係—1.抑うつ症状とアパシー.理療科29:995-1000,2014
7)高橋真紀:回復期リハビリテーション病棟における脳卒中後うつとアパシー.高次脳機能研34:193-197,2014

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1359

印刷版ISSN:0915-0552

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