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特集 重症下肢虚血と理学療法
重症下肢虚血のlimb salvageの動向
著者: 寺師浩人1
所属機関: 1神戸大学大学院医学研究科形成外科学
ページ範囲:P.813 - P.818
文献購入ページに移動下肢慢性創傷を有する治療において,集学的治療の必要性が提唱されて久しい.本邦における下肢慢性創傷の代表は糖尿病性足潰瘍である.糖尿病は末梢動脈疾患(peripheral arterial disease:PAD)を合併しいったん潰瘍を生ずれば感染を伴いやすいことから,創傷の病態は複雑な病因の複合体を成す1).そもそも重症下肢虚血(critical limb ischemia:CLI)が,単なる下肢血流障害のみを改善することにより治癒が叶うとすれば集学的治療は不要である.
本邦において,糖尿病患者はPADを合併しやすく,創傷をもつ患者は透析率が世界一高い.また,諸外国に比較し,Rutherford分類6が圧倒的に多いこともよく知られている事実である.最新のデータでは,本邦においてCLIに対して末梢血行再建術を施行した患者の7割が糖尿病患者で5割が透析患者であった2).
したがって,本邦のCLIにおける集学的治療は,糖尿病内科医,循環器内科医,腎臓内科医(透析科),放射線科医,感染症内科医,血管外科医,形成外科医,整形外科医,リハビリテーション医,理学療法士,義肢装具士,作業療法士,看護師の複合チームで行われなければならない.一人の患者にかかわるべきチームがあまりに大きいため,できればセンター化が好ましいことになる.本邦では,これらすべての科がCLIに対して前向きに取り組んでいる病院がほとんどないため,近年は地域連携で確立していこうとする動きが活発である.それぞれの地域におけるフットケアやlimb salvageにかかわる研究会の発足がそれを現している3).
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