緩和ケアチーム活動の意義と理学療法士の視点
著者:
村岡法彦
,
菊池秀也
,
島田勝規
,
菅原かおり
,
千葉恒
ページ範囲:P.17 - P.25
はじめに
わが国では,2006年のがん対策基本法の施行および2007年のがん対策推進基本計画の策定により,がん診療にかかわるすべての施設での早期からの適切な緩和医療の提供が求められるようになった.また,2009年には全国のがん診療連携拠点病院(以下,がん拠点病院)に緩和ケアチーム(palliative care team:PCT)の設置が義務づけられるようになった.PCTとは,がんなどの病気をもつ患者・家族のQOLの維持向上を目的に,担当医や病棟スタッフと協働しながら専門的知識や技能を提供し,地域連携の調整や緩和ケアの啓蒙などを行う多職種から構成されるチームである.現在までに多くのPCTが活動し,疼痛の軽減やQOLの改善など活動の有効性が示されている1).しかし課題も多く,マンパワーの問題やPCT活動の周知不足,PCTメンバーが知識・技術・態度を修得するシステムが十分でないことなどが挙げられている2).
一方,リハビリテーションについては2007年度に厚生労働省委託事業としてがんのリハビリテーション研修が始まり,ここ10年で大きく発展してきた.しかしながら高度がん専門医療機関やがん拠点病院といった施設での取り組みが多く,今後は地域の病院も含めて均一な,質の高いがんリハビリテーション医療を提供することが求められている.PCTの課題と同様に,教育体制の充実やがん拠点病院を中心とした病院間の交流,研修会の拡充,市民への啓発活動,在宅ケアなども重要な課題とされている3).
本稿では,筆者が以前在籍していたPCTでのかかわりを報告するとともに,現在所属するPCTが存在しない一般病院でのがんリハビリテーションの現状を調査・報告し,理学療法士としてどのようにがん緩和ケアを実践し,今後に発展させていくか提言したい.