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文献概要
講座 理学療法エシックス・1【新連載】
理学療法の倫理
著者: 松田純1
所属機関: 1静岡大学大学院人文社会科学研究科
ページ範囲:P.67 - P.74
文献購入ページに移動はじめに
理学療法士は臨床の現場で,さまざまな「困難事例」に遭遇する.その困難の多くは,実は倫理的な葛藤に由来することが多い.葛藤の要因は,患者の精神状態や生活環境の悪化,対人関係の悪化や家族との不和など,実にさまざまであろう.こうした困難事例に対しては,倫理的な面からのアプローチが必要なことが多い.それゆえ,困難事例を「倫理的な問題」としても意識して,葛藤をもたらしているものを明らかにし,そのうえで,倫理的にも適切な対応を見出していく力量を身につける必要がある.
理学療法や医療に関しては,さまざまな関係法規がある.理学療法士がこれらを遵守することはもちろんであるが,法律さえ守っていればよい,というわけではない.法が規定する以上の配慮が倫理として求められる.そこで,まず,法と倫理の関係を理解する必要がある(1).また,倫理と道徳という語があるが,2つは同じものか異なるものなのかを説明する(2).倫理にはさまざまなものがあるが,ここで扱うのは,人としていかに生きるべきかという共通道徳ではなく,医療倫理であり,さらに,理学療法士という専門家にとっての倫理,すなわち専門職倫理である(3).医療倫理には非常に長い歴史があるが,この歴史のなかで現代医療倫理の原則として定式化されたものを確認したうえで(4),理学療法士の具体的な事例に即して,倫理的思考の必要性を確認したい(5,6).こうして倫理的な思考を進めていくと,そもそも医療の使命は何かが問われる.仮に健康の回復・維持・向上が医療の使命だとすると,では健康とは何かということがさらに問われる.最後に,この問題に触れる(7).
理学療法士は臨床の現場で,さまざまな「困難事例」に遭遇する.その困難の多くは,実は倫理的な葛藤に由来することが多い.葛藤の要因は,患者の精神状態や生活環境の悪化,対人関係の悪化や家族との不和など,実にさまざまであろう.こうした困難事例に対しては,倫理的な面からのアプローチが必要なことが多い.それゆえ,困難事例を「倫理的な問題」としても意識して,葛藤をもたらしているものを明らかにし,そのうえで,倫理的にも適切な対応を見出していく力量を身につける必要がある.
理学療法や医療に関しては,さまざまな関係法規がある.理学療法士がこれらを遵守することはもちろんであるが,法律さえ守っていればよい,というわけではない.法が規定する以上の配慮が倫理として求められる.そこで,まず,法と倫理の関係を理解する必要がある(1).また,倫理と道徳という語があるが,2つは同じものか異なるものなのかを説明する(2).倫理にはさまざまなものがあるが,ここで扱うのは,人としていかに生きるべきかという共通道徳ではなく,医療倫理であり,さらに,理学療法士という専門家にとっての倫理,すなわち専門職倫理である(3).医療倫理には非常に長い歴史があるが,この歴史のなかで現代医療倫理の原則として定式化されたものを確認したうえで(4),理学療法士の具体的な事例に即して,倫理的思考の必要性を確認したい(5,6).こうして倫理的な思考を進めていくと,そもそも医療の使命は何かが問われる.仮に健康の回復・維持・向上が医療の使命だとすると,では健康とは何かということがさらに問われる.最後に,この問題に触れる(7).
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