icon fsr

文献詳細

雑誌文献

理学療法ジャーナル51巻11号

2017年11月発行

文献概要

入門講座 「はじめて」への準備(クリニカルリーズニング編)・2

脳卒中患者の理学療法におけるクリニカルリーズニング

著者: 荻原啓文1 丸山陽一2

所属機関: 1日本保健医療大学保健医療学部理学療法学科 2鹿教湯三才山リハビリテーションセンター鹿教湯病院

ページ範囲:P.1019 - P.1025

文献購入ページに移動
はじめに

 厚生労働省発表の「平成26年(2014)患者調査の概況」1)によると,日本の脳卒中総患者数(継続的な治療を受けていると推測される患者数)は117万9000名にのぼるという.未解明な部分が多い脳科学の世界において,脳の損傷による運動や感覚,認知障害を理解することは非常に難解なことであり,個体差も含めればさらに複雑となる.たとえこれらの障害を完全に理解できたとしても,現代医療の範囲では脳の器質的な損傷を完全に治癒させることは不可能である.

 では,脳卒中患者が求めるリハビリテーションとはどういうものなのか.脳卒中患者の理学療法において根底にあるものは,可逆的な機能障害と不可逆的な機能障害を見極め,その患者が生活をしていくうえで最大限のパフォーマンスを発揮できるように支援していくことと考える.その支援のために必要な思考過程こそが,クリニカルリーズニングである.

 本稿では,EdwardsとJones2)のクリニカルリーズニングのモデルと国際生活機能分類(International Classification of Functioning,Disability and Health:ICF)の視点から,筆者が担当した脳卒中患者の例を通して,いかにクリニカルリーズニングを行い,理学療法を提供したのかを解説する.

 なお,執筆にあたり本稿で紹介する症例には主旨を説明し,同意を得ている.

参考文献

1)厚生労働省:5章 主な傷病の総患者数.平成26年(2014)患者調査の概況.厚生労働統計一覧.p15,2014 http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kanja/14/dl/05.pdf (2017年6月27日閲覧)
2)Edwards I, et al:Clinical reasoning strategies in physical therapy. Phys Ther 84:312-335, 2004
3)長谷公隆,他:運動学習理論に基づくリハビリテーションアプローチの実践.pp34-51,医歯薬出版,2008
4)内山 靖:クリニカルリーズニング—理学療法士に求められる臨床能力.PTジャーナル43:93-98,2009
5)厚生労働省:資料4-1 ICFの活用—“「生きることの全体像」についての「共通言語」”として.第12回社会保障審議会統計分科会 生活機能分類専門委員会.p7,2012.http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000002ksqi-att/2r9852000002ktei.pdf (2017年6月27日閲覧)
6)Robinson RG, et al:Post-stroke depressive disorders:a follow-up study of 103 patients. Stroke 13:635-641, 1982
7)Prikh RM, et al:Two-year longitudinal study of post-stroke mood disorders:dynamic changes in correlates of depression at one and two years. Stroke 18:579-584, 1987

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1359

印刷版ISSN:0915-0552

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?