文献詳細
文献概要
講座 ニューロモジュレーション・4
疼痛とニューロモジュレーション
著者: 大島秀規1 吉野篤緒1
所属機関: 1日本大学医学部脳神経外科学系神経外科学分野
ページ範囲:P.1117 - P.1122
文献購入ページに移動はじめに
難治性疼痛とは,その原因にかかわらず既存の除痛法では治癒させることが困難な疼痛の総称であり,その代表に神経障害性疼痛(neuropathic pain)がある.神経障害性疼痛とは,国際疼痛学会(International Association for the Study of Pain:IASP)では「Pain caused by a lesion or disease of the somatosensory nervous system」と定義されており,中枢神経および末梢神経系の体性感覚系の障害に起因するすべての痛みの総称である.実際にさまざまな原因による神経障害性疼痛が報告されている(表1)1,2).それらの多くはニューロモジュレーション療法の対象となり得る慢性の難治性疼痛である.
2000年代後半より,神経障害性疼痛に対する薬物治療ガイドラインが欧米[IASP,European Federation of Neurological Society(EFNS)]および本邦(日本ペインクリニック学会)において策定され,煩雑であった神経障害性疼痛の薬物治療をevidence-basedに行うことが容易となった.しかしながら,ガイドラインに示された薬物の使用によっても改善が困難な神経障害性疼痛は多く存在し,そのような症例に対してさまざまなニューロモジュレーション治療が試みられている.
本稿では,神経障害性疼痛に対する薬物治療の現状を解説するとともに,本講座のテーマである疼痛のニューロモジュレーション治療をその変遷を含めて解説する.
難治性疼痛とは,その原因にかかわらず既存の除痛法では治癒させることが困難な疼痛の総称であり,その代表に神経障害性疼痛(neuropathic pain)がある.神経障害性疼痛とは,国際疼痛学会(International Association for the Study of Pain:IASP)では「Pain caused by a lesion or disease of the somatosensory nervous system」と定義されており,中枢神経および末梢神経系の体性感覚系の障害に起因するすべての痛みの総称である.実際にさまざまな原因による神経障害性疼痛が報告されている(表1)1,2).それらの多くはニューロモジュレーション療法の対象となり得る慢性の難治性疼痛である.
2000年代後半より,神経障害性疼痛に対する薬物治療ガイドラインが欧米[IASP,European Federation of Neurological Society(EFNS)]および本邦(日本ペインクリニック学会)において策定され,煩雑であった神経障害性疼痛の薬物治療をevidence-basedに行うことが容易となった.しかしながら,ガイドラインに示された薬物の使用によっても改善が困難な神経障害性疼痛は多く存在し,そのような症例に対してさまざまなニューロモジュレーション治療が試みられている.
本稿では,神経障害性疼痛に対する薬物治療の現状を解説するとともに,本講座のテーマである疼痛のニューロモジュレーション治療をその変遷を含めて解説する.
参考文献
1)日本ペインクリニック学会神経障害性疼痛薬物療法ガイドライン作成ワーキンググループ(編):神経障害性疼痛薬物治療ガイドライン.真興交易(株)医書出版部,2011
2)Dworkin RH, et al:Advanced in neuropathic pain:diagnosis, mechanisms, and treatment recommendations. Arch Neurol 60:1524-1534, 2003
3)大島秀規,他:慢性難治性疼痛に対する脊髄刺激療法:神経障害性疼痛に対する治療を中心に.脳外誌23:635-640,2014
4)日本ペインクリニック学会神経障害性疼痛薬物療法ガイドライン改訂版作成ワーキンググループ(編):神経障害性疼痛薬物治療ガイドライン,改訂第2版.真興交易(株)医書出版部,2016
5)Campbell JN, et al:Priferal nerve stimulation in the treatment of intractable pain. J Neurosurg 45:692-699, 1976
6)Cameron T:Safety and efficacy of spinal cord stimulation for treatment of chronic pain:a 20-year literature review. J Neurosurg 100(3 Spine):254-267, 2004
7)Kumar K, et al:Spinal cord stimulation in treatment of chronic pain:challenfes in treatment planning and present status, a 22-year experience. Neurosurgery 58:481-496, 2006
8)The British Pain Society(ed):Spinal cord stimulation for the management of pain:recommendations for best clinical practice. The British Pain Society, 2009
9)Mazarus GJ, et al:Comparative study of electrical stimulation of posterior thalamic nuclei, periaqueductal gray, and other midline mescencephalic structures in man. pp 541-546, In:Bonica JJ, Liebeskind JC, Albe-Fessard DG, eds. Advances in Pain Research and Therapy. Vol 3. Raven Press, New York, 1979
10)Tsubokawa Y, et al:Chronic motor cortex stimulation in patients with thalamic pain. J Neurosurg 78:393-401, 1993
11)Lima MC, et al:Motor cortex stimulation for chronic pain:systematic review and meta-analysis of the literature. Neurology 70:2329-2337, 2008
12)大島秀規,他:幻肢(幻肢痛)の脳神経外科治療.ペインクリニック27:21-29,2006
13)Young RF, et al:Electrical stimulation of the brain in treatment of chronic pain. J Neurosurg 62:389-396, 1985
14)Rasche D, et al:Deep brain stimulation for the treatment of various chronic pain syndrome. Neurosurg Focus 21:E8, 2006
15)Kumar K, et al:Epidural spinal cord stimulation for treatment of chronic pain—some predictors of success. A 15-year experience. Surg Neurol 50:110-120, 1998
掲載誌情報