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雑誌目次

雑誌文献

理学療法ジャーナル51巻2号

2017年02月発行

雑誌目次

特集 現任研修—求められる臨床技能の習得

EOI(essences of the issue)

ページ範囲:P.103 - P.104

 生涯学習の構築において,臨床技能の習得を骨格に据えることはきわめて重要である.理学療法におけるハンズオン,ハンズオフのスキルをいかに習得・向上していくのかについて多様なキャリアデザインを踏まえて考える機会とした.

理学療法士に必要な臨床技能と人財育成

著者: 黒澤和生

ページ範囲:P.105 - P.115

はじめに

 人材の「材」は,役に立つ素質・能力という意味をもつ.同じ「財」という漢字は財産を意味し,人を育てることは何物にも代えがたい財産となることから,本稿では「人財育成」という当て字を使うことにする.比較的若い会員で組織される集団において,人財育成は単に職場における人間関係や特定の部署が担うものとして行われるだけではなく,日本理学療法士協会の組織運営戦略の一環として,協会員が日常的に取り組むべき組織活動と認識することが,より重要であると考える.組織としてどのような理学療法士を育成すべきなのか,また,視点を変えて一人ひとりの専門職側からみれば,自己のキャリアをどのように進めるかという到達目標を明らかにすることは喫緊の課題である.

 理学療法を取り巻く環境は,1966年の理学療法士及び作業療法士法制定時から大きく変化した.その変化に呼応した,必要とされる理学療法士像および理学療法士の臨床能力の標準化も重要な課題の一つである.他の医療専門職における資格取得後の生涯教育(新人教育を含む)では,臨床技能の習得を可視化したキャリアラダーの提示がなされており1),本稿では理学療法士の卒後教育の充実に向けた1つの提案を行いたい.

 具体的にはまず,理学療法の対象の変化と守備範囲の拡大について言及し,理学療法士に必要とされる能力について1つの提案を行う.また,キャリアラダー(イメージ)および資格取得後の基本的臨床技能の習得を目標とする新人理学療法士研修についても触れたい.

理学療法士に必要な臨床技能としてのハンズオンスキルと現任研修

著者: 山内正雄

ページ範囲:P.117 - P.122

はじめに

 理学療法士は,「理学療法士及び作業療法士法」の第2条に「身体に障害のある者に対し,主としてその基本的動作能力の回復を図るため,治療体操その他の運動を行なわせ,及び電気刺激,マッサージ,温熱その他の物理的手段を加えることをいう」と定義されている.つまり,物理的手段や機械器具などを用いても用いなくても,治療体操などの運動療法を行うのが理学療法ということである.

 これに対して物理的手段や機械器具などを用いずに,神経筋骨格系疾患に対して徒手で行うのが徒手理学療法と理解されている.どちらにしても徒手で行う治療が中心となるため,理学療法技術を身につけることは必須であり,ハンズオンスキルを身につけ向上させていくことは,非常に重要である.

 筆者は徒手理学療法技術の習得および教育にかかわって20年以上になる.そこで,徒手理学療法におけるハンズオンスキルの研修方法について,国際整形徒手理学療法士連盟(International Federation of Orthopaedic Manipulative Physical Therapists:IFOMPT)の教育基準および教育方法を例に挙げながら,理学療法技術の習得方法について考えていきたい.

理学療法士に必要な臨床技能としてのハンズオフスキルと現任研修

著者: 高村浩司

ページ範囲:P.123 - P.128

はじめに

 理学療法士が臨床で行う姿勢・動作分析は,評価のみならず治療の一手段として臨床推論過程に位置づけられる.臨床場面における理学療法では,姿勢や動作を観察しながらの分析や統合解釈が同時に進められることが重要で,姿勢・動作の障害やADLの活動制限からその機能的障害を考察して治療過程に入るトップ・ダウン方式で行われることがほとんどである.

 理学療法士の臨床推論について内山1)は,「臨床推論とは,対象者の訴えや症状から病態を推測し,仮説に基づき適切な検査法を選択して対象者に最も適した介入を決定していく一連の心理・認知的な過程を指す.この過程は,気づきとともに経験や知識に基づく論理的思考による鑑別と選択の連続で,仮説を検証する工程を繰り返している」と述べている.理学療法において,この「対象者に最も適した介入」を進めるうえでハンズオンとハンズオフスキルを適切に組み合わせていく治療過程は必要不可欠である.

 臨床推論において重要となる分析結果に基づく解釈と意思決定は,時に暗黙知の領域に入り,経験則的な判断に偏る傾向もあり,根拠に基づく医療(evidence based medicine:EBM)の提供に課題を残しているとの見方もある.また,臨床推論能力は,熟練者と初心者との能力差が顕著に問題となることが多く,適切な実践には多くの時間を要する.臨床推論を進めるうえでハンズオンスキルとともに(時にそれ以上に)能力の差が大きく表れるのは,対象者とのコミュニケーション能力を含めたハンズオフスキルであると思われる.ハンズオフスキルは,知識や技能の成熟と無関係ではなく,ハンズオンスキルのベースとして求められる能力である.優れた治療者は理学療法を進めるうえで,どのようにハンズオンとハンズオフを組み合わせているのであろうか,またハンズオンからハンズオフに切り替えるタイミングはどのような背景をもとに成立するのであろうか.本稿では,ハンズオンスキルからハンズオフスキルへ至る過程の取得とその向上に必要と思われる条件を述べるとともに,現場における効率的な現任教育への流れについても提案してみたい.

臨床技能の習得に必要な現任研修の実情と展望

1.訪問リハビリテーションに必要な臨床技能

著者: 塚田鉄平 ,   呂隆徳 ,   大田哲生

ページ範囲:P.131 - P.133

 団塊の世代に属する約600万人の国民が75歳以上の後期高齢者となる2025年問題に適切に対応するために,各地域の人口動態,世帯構成,社会資源などに基づいた地域包括ケアシステムの構築がなされてきている.本稿では,訪問リハビリテーションに携わる理学療法士が果たす役割と訪問リハビリテーションに必要な臨床技能,当地区で行っている連携について述べる.

2.発達障害領域に必要な臨床技能の考え方

著者: 清宮清美

ページ範囲:P.134 - P.135

はじめに

 日本に理学療法士が誕生して50年が経過した.当初の理学療法士の養成教育は,臨床現場にて即戦力として理学療法が実施できる人材の育成を目標として開始された.臨床実習は具体的な環境と対象者にあたりながら,学内で習得した知識や技術,医療専門職としての態度を含む総合的な実践力を養う場として現在も機能している.そして教育されたことを臨床で実践できる理学療法士となるためには,養成教育の延長線上にある臨床技能を習得するための現任研修が必須である.ここでは,主に発達障害領域で必要な臨床技能・現任研修について考察する.

3.外来の理学療法に求められるもの

著者: 伊能幸雄

ページ範囲:P.136 - P.138

当院外来リハビリテーションの体制

 筆者の勤務する亀田クリニック(以下,当院)は,急性期病院,回復期病院に併設された外来に特化したクリニックである.診療科は31科,毎日約2,500人の患者が来院している.リハビリテーション室のスタッフは理学療法士16名,作業療法士3名,言語聴覚士4名である.理学療法士のもとに訪れる患者の疾患内訳は,スポーツ傷害を含めた運動器疾患が最も多いが,それ以外にも,脳血管疾患,呼吸器疾患,循環器疾患,小児の脳性麻痺や運動発達遅滞など多岐にわたっている.

4.増加する理学療法への対応と質の担保

著者: 奥山夕子

ページ範囲:P.138 - P.140

回復期リハビリテーション病棟の現状と課題

 現在,回復期リハビリテーション病棟は,1,725病棟77,102病床届けられており(2016年3月1日時点),人口10万人に対して50床という創設当初の目標を超え増え続けている1).国の政策としても,リハビリテーションを施す回復期の病床を増加させ,手厚い医療を必要としない軽症の急性期,療養目的の慢性期の患者は自宅や介護施設へ移行させる方針である.回復期における理学療法士の需要は増加するが,多くは卒後間もないセラピストが供給されることが予測される.必要最低限の知識は国家試験に合格することで確認されるが,臨床技能は実践の場でしか確認できない.新卒であろうが,10年以上の経験をもつセラピストであろうが1単位に対する点数は同じである.われわれは臨床技能を磨くトレーニングを積み,その技能を確認する術をもつ必要がある.セラピストの質を保証するための方策として,指導者を育成するためのマネジメント研修(回復期リハビリテーション病棟協会認定回復期セラピストマネジャーコースや日本理学療法士協会指定管理者研修など)が開催されるようになってきたのはここ数年のことである.

5.内部障害領域—小規模スタッフにおける実情を中心に

著者: 野添匡史

ページ範囲:P.141 - P.142

はじめに

 筆者は現在大学の教員として職務を行っているが,その主な現場は大学ではなく臨床実習施設(病院)である.これは2年前より臨床実習担当教員として大学に着任以来,学生に直接指導を行うために継続している状況である.また,学生に対する臨床実習を行うだけでなく,通常の診療業務にも加わり,理学療法士として臨床・研究に従事している.さらに,臨床実習施設からの要望もあり,学生指導だけではなく現任研修にも積極的にかかわっている.このような状況のもと,現在筆者が臨床実習施設において取り組んでいる現任研修について述べる.

6.地方自治体に必要な臨床技能

著者: 岡本慎哉

ページ範囲:P.143 - P.144

 地域における理学療法士の活動にはこれまでも通所リハビリテーションや通所介護,訪問リハビリテーション,市町村が実施する介護予防事業への協力などがあった.2015年度に介護予防・日常生活支援総合事業(以下,総合事業)がスタートしたが,この事業を実施する市町村においてはリハビリテーション専門職への期待が大きく,理学療法士を採用する地方自治体が増えている.

 筆者も急性期・回復期の病院や老人保健施設,通所リハビリテーション・訪問リハビリテーション事業所の現場ならびに法人管理部門に約30年従事した後,2015年から沖縄県北中城村役場(以下,当村)の高齢者福祉係で働いている.沖縄県には41の市町村があるが,2016年9月時点で総合事業の開始を契機に4市町村で5人の新たな理学療法士の採用があり,今後採用を検討している市町村も多数あると聞いている.本稿では急性期医療,在宅医療,法人管理などを経験し,現在は行政職員として実務を行う理学療法士の立場から,地域・行政で働くための臨床技能について考えたい.

7.リハビリテーション部門マネジメントに必要な臨床技能

著者: 八木麻衣子

ページ範囲:P.145 - P.146

リハビリテーション部門マネジメントにおける基本的な臨床技能

 医療機関や介護施設における組織マネジメントは,提供する医療・介護サービスの質を担保するためにも重要な臨床技能の一つと考えられる.もちろん,医療専門職としての大命題は「目の前にいる患者や利用者をリハビリテーションの専門家として診療し,最善の医療を提供して成果を上げること」であるが,その一方で,個人では成し遂げられない高度専門集団としての大きな成果を上げるために,組織として「ヒト」,「モノ」,「カネ」,「情報」などの経営資源を管理し,提供する医療・介護サービスの質を改善しつつ,組織全体として成長していくことはとても重要である.

 医療機関や介護施設のマネジメント論は,リハビリテーション部門に限らず,いまだ確立されたものはなく,また,「これさえ受けておけばマネジメントが完璧に行える」などという現任研修も存在しない.そのため,さまざまな経営理論の枠組みを応用しつつ,実際の臨床現場に落としこむことができる能力が重要となる.その際に注意すべきことは,既存の理論はあくまで自分の思考の軸足を確認するためのもので,決してそのまま用いることはできない,ということである.全体の意思決定を行うにしろ,業務改善を行うにしろ,経営理論の枠組みを用いるということは,自分たちが抱えている問題点を明らかにし,それに対して対策を考えるためのツール(道具)に過ぎないということを意識することが重要である.

連載 超音波で見る運動器と運動療法Q&A・第2回

超音波で見る運動器と運動療法Q&A

著者: 皆川洋至 ,   林典雄

ページ範囲:P.97 - P.100

Question

 転倒して上肢を挙上できない.肩周囲に腫脹を認める.超音波画像所見から想定される病態は?

とびら

私を育ててくれたもの

著者: 松田淳子

ページ範囲:P.101 - P.101

 理学療法士になって30年以上が過ぎました.長い間仕事をしてこられたのは,たくさんの人たちに支えられ,育てられ,この仕事のやりがいと面白さを感じ続けてこられたから.その原点には二人の師との出会いがあります.

 「僕は患者さんのことや学術的なことを話すときには,君たちと対等でありたい.『先生』と呼ばれたら,それだけで上下関係ができてしまい,自由な議論ができなくなる.だから僕のことは『さん』づけで呼んでください」.遠い昔,上司になったその人は,若いスタッフたちにそう言いました.今では信じられないかもしれませんが,当時,目上のセラピストのことは「先生」と呼ぶことが当たり前の時代でした.ましてや大先輩のその人を「さん」づけで呼ぶことは難しく,困惑したことを今も思い出します.しかし,実践できるようになると,大げさでなく世界観が変わるのを感じました.一人前に認めてもらえている嬉しさは発言や患者さんに対する責任の自覚を生みました.組織に議論がしやすい風土が生まれました.心理的な距離が近くなりました.勉強不足がたたり,学術的な議論にはなかなか発展させてもらえませんでしたが,それでも議論の機会をもらえるなかで学術的な興味や患者さんへの理解が深まっていきました.

学会印象記

—The 13th International Congress of the Asian Confederation for Physical Therapy(ACPT2016)—課題を実感したマレーシアでの4日間

著者: 山口翔平

ページ範囲:P.148 - P.149

 2016年10月7,8日にマレーシア・クアラルンプールにてThe 13th International Congress of the Asian Confederation for Physical Therapy(ACPT2016)が開催されました.日本では日ごとに気温が下がり,寒くなっていく一方,マレーシアではじめっと汗ばむ空気を感じ,これが東南アジアの眠らない街クアラルンプールかと,気持ちの高揚を感じました.開会式には,マレーシア保健大臣も出席しており,本大会へのマレーシアの意気込みが現われていました.メインテーマは「Movement-Bridging Health and Function」であり,社会で求められている理学療法の役割,理学療法士の基盤となるものでした.このテーマのもと,教育講演,特別講演,口述発表,ポスター発表という発表形式で2日間催されました.

 自分自身2度目の海外で,また初めての国際学会であったため,本大会では「できるだけたくさんの国の人とコミュニケーションをとること」,自信はありませんでしたが「自分の英語がどれだけ通用するか知ること」を目的として参加しました.

甃のうへ・第44回

折り合いをつける

著者: 佐藤史子

ページ範囲:P.150 - P.150

 私には忘れられない言葉があります.「理学療法士になりたい!」と言ったときに,高校の恩師からいただいた言葉です.「一生懸命だけでは続けられない仕事だと思いますよ.相手のことも自分のことも大切にしないとね」.

 理学療法士として勤めて20年が経ち,今好きな言葉は「折り合いをつける」です.私の職場では,地域で生活している生活障害を有する方に対して支援を行う事業をしています.いろいろな価値観と生活の形がありますが,入職当時の私には,そのことが実感としてわかっていなかったように思います.

1ページ講座 理学療法関連用語〜正しい意味がわかりますか?

ハイフローセラピー

著者: 瀬崎学

ページ範囲:P.151 - P.151

 ハイフローセラピーとは,専用の経鼻カニューラ,酸素ブレンダー,酸素流量計,熱線回路,加温加湿器などを使用し,従来では設定できなかった高流量・高濃度の酸素投与を可能とする酸素療法のことを指す.

 「酸素療法ガイドライン」1)によると,酸素療法における吸入方法は低流量システムと高流量システムの2つに分類され,高流量システムのほうがより安定した吸入酸素濃度が設定可能とされている.従来臨床場面では高流量システムとしてベンチュリマスクやリザーバー付酸素マスクなどが汎用されていたが,患者の1回換気量の変化により吸入酸素濃度が増減してしまうことや,マスクによる拘束がQOL低下や排痰・ADLへの支障となることも指摘されていた.

障がい者スポーツ

陸上

著者: 池部純政

ページ範囲:P.152 - P.152

 2016に開催されたリオ・パラリンピックにおいて,多くの日本人選手の活躍が日本中を沸かせたことは記憶に新しいことと思う.今回,障がい者の陸上競技における理学療法士のかかわりを紹介できればと考える.

入門講座 「はじめて」への準備(臨床編)・2

はじめてのカンファレンス

著者: 松葉好子

ページ範囲:P.153 - P.160

はじめに

 リハビリテーション医療の場に参加してチームを形成する職種は,医療・福祉・保健の多方面にわたる.多くの職種が必要となる理由は,独立した個人である患者がもっている複雑で多面的な諸問題に対して,多数の職種があらゆる面から同時に解決への努力をする必要があるためである.多様なニードに応じて,多数の専門家がそれぞれの角度から患者の障害のそれぞれの側面に対して分担して取り組むと同時に,それが結局は一個の独立した個人である患者を細切れのパーツに分けてバラバラに治療することにならないように,絶えず緊密な連絡をとり,1つの方向に向けて推進していく統一的な活動となるためにはチームワークが必要である1)

 このチームワークを最も具現化したものがカンファレンスである.カンファレンスは,チームで情報を共有して相互の意見交換や連絡・調整を行い,リハビリテーション計画を立案して役割を明確にするとともに,計画の結果を確認して進行状況を把握し,必要に応じて計画に修正を加えて,患者の「できる限りよい状態での社会復帰」に向けて推進していく場である.そして,新人理学療法士にとってはチームを実感する場であり,同時に,理学療法の質を磨く絶好の機会にもなる.

 カンファレンスの場で理学療法士は,基本的動作能力の回復についての責任を担い,身体機能評価や動作分析などから問題点を捉えて,患者が望む生活とその実現を妨げている因子を明らかにし,機能予後の目標を設定してチームに伝える.そして,チームの各専門職から情報を収集し,多職種で協議・分析することで完成した評価をもとに,チーム全体の計画と合致する具体的な理学療法計画を立案して最適な治療を進める役割をもっている.

 今回の入門講座のテーマは「はじめてのカンファレンス」である.ここで使われている「はじめて」は「初めて“for the first time”=最初の」という意味であろうが,最初のカンファレンスまでに先に挙げた理学療法士の役割を果たすための準備を完了することは到底できない.筆者の新人のころを振り返っても,最初は指導を受けながら記載シートを何とか埋め,カンファレンスでは緊張して,書いたことを読むのが精いっぱいで目的を理解していたかどうかも怪しい.したがって本稿では,むしろ,数年先にカンファレンスでこのような責任を果たせる理学療法士になるための準備を「始めて“start”=開始する」という視点で,横浜市立脳卒中・神経脊椎センター(以下,当院)の取り組みの経験をもとに解説する.

講座 理学療法エシックス・2

臨床と研究の倫理

著者: 内山靖

ページ範囲:P.163 - P.169

医療専門職としての理学療法士の倫理

 医療専門職は,対象者と社会に対する安心と信頼を保証するための態度や技能を継続的に探究し,時代の潮流や変化に適応する能力が求められる.

 倫理とは,法律とは異なり実行可能性にとらわれず,内面のありようを含む規範とその言動で表出される.臨床実践においては,目前の対象者へ最善を尽くす過程において,さまざまな倫理的ジレンマによる医療者の葛藤が生じる場合がある.このうち,リサーチエビデンスの適用と対象者・医療者の主観的な思い,個に対する臨床実践と標準的な理学療法セオリーの開発など,臨床での実践と研究の優先性を含めて臨床研究に関する倫理には多くの課題が含まれている1)

臨床実習サブノート 臨床実習のリスク 地雷を踏むな!・9

大腿骨頸部骨折

著者: 川端悠士

ページ範囲:P.171 - P.177

はじめに

 本邦における大腿骨近位部骨折の発生数は年々増加しており,今後も経年的に増加することが見込まれている1).また大腿骨近位部骨折は回復期リハビリテーション病棟の主要対象疾患となっており,学生が臨床実習において評価・治療に携わる機会も少なくない.

 大腿骨近位部骨折は大きく分けると,関節包内骨折である大腿骨頸部骨折と関節包外骨折である大腿骨転子部骨折に分類される.本稿では関節包内骨折である大腿骨頸部骨折に焦点をあて,理学療法を実施するうえで注意すべき顕在的・潜在的リスクについて解説するとともに,陥りやすい誤解について述べる.

ひろば

急性期理学療法の発展のために—ADL維持向上等体制加算の普及

著者: 平野明日香

ページ範囲:P.179 - P.179

●ADL維持向上等体制加算に込められた想い

 2014年度の診療報酬改定で急性期病棟におけるリハビリテーション専門職(以下,療法士)の専従配置に対する評価としてADL維持向上等体制加算(以下,ADL加算)が新設され,当院では2014年4月より私が専従者となり算定を開始しました.

 日本理学療法士協会の半田一登会長は,このADL加算について「病院における新たな病態の“予防”という取り組みをしっかりと根づかせることが今後の医療にとても重要(中略)今回,われわれ理学療法士にとってもとてもいいチャンスをいただいたと思っています」と述べています.こうした半田会長の期待を知り,私は療法士を急性期病棟に専従配置する効果検証をしたいと思うようになりました.

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次号予告

ページ範囲:P.128 - P.128

「作業療法ジャーナル」のお知らせ

ページ範囲:P.169 - P.169

文献抄録

ページ範囲:P.180 - P.181

第29回理学療法ジャーナル賞について

ページ範囲:P.183 - P.183

編集後記

著者: 内山靖

ページ範囲:P.184 - P.184

 第51巻2号をお届けします.

 2017年は国内外で大きな変化のある年になると予想されています.大国の新たな大統領,EU諸国の動向,主要な条約の締結と運用,人工知能・再生医療の応用促進,地域包括ケアシステムの構築など,枚挙に暇がありません.

読者の声募集

ページ範囲:P. - P.

基本情報

理学療法ジャーナル

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1359

印刷版ISSN 0915-0552

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